ネットトラブル
誹謗中傷・名誉毀損
掲示板に「パパ活してる」と投稿した相手の発信者情報開示請求
今回は、実際に当事務所でご相談をお受けした発信者情報開示請求の事例についてご紹介します。
1.ご相談内容
ご相談者のAさん(女性)は、ある日突然インターネット上の掲示板である5ちゃんねるに「パパ活している」と投稿されてしまいました。
Aさんはパパ活をしたことはなく、問題の投稿をした人物にも心当たりがありませんでした。
そこで、Aさんとしては、このような投稿をした人物を特定して、慰謝料を請求したいと考えて、当事務所にご相談にいらっしゃいました。
2.発信者情報開示の手続き
以前の記事でもご紹介しましたが、令和3年の裁判例で、パパ活に関する投稿の発信者情報開示を認めた事例があることから、上記のAさんの事例も、裁判所が発信者情報開示請求を認める可能性がかなり高いと思われました。
投稿した人物を特定するためには、①インターネット掲示板の運営会社に対して、発信者情報開示の仮処分を行ってIPアドレスなどを開示させ、②IPアドレスから投稿者が契約しているプロバイダを特定し、そのアクセスプロバイダに対して発信者情報開示請求訴訟を起こして、発信者の氏名・住所等の個人情報を開示してもらう必要があります。
そのため、当事務所では、早速5ちゃんねるの運営会社であるロキテクノロジー社に対して発信者情報開示の仮処分を申し立てるところから対応を始めました。
3.仮処分手続きの流れ
裁判所に仮処分の申立てを行うと、まず、申立て側と裁判官との面接が行われます。
その後、通常は、相手方であるロキテクノロジー社も裁判所に呼び出して、双方が出席する双方審尋が行われます。
ただ、この双方審尋に出席しない会社も多く、その場合には双方審尋は行われずに、申立て側の主張だけで裁判官が仮処分を出すかどうかを判断します。
今回の仮処分の際の裁判官面接では、裁判官はパパ活をしているという投稿がAさんの名誉を棄損するかどうかという点については全く問題視していない様子でした。
このような裁判官の対応を考えると、基本的に「パパ活をしている」と書かれることが社会的評価を低下させるということは争いがない(開示請求が認められる)と考えてよいように思います。
また、今回の仮処分の相手方となったロキテクノロジー社は、いつも双方審尋に出席しない会社ですので、双方審尋は行われず、発信者情報開示の仮処分が出されました。
なお、仮処分発令に先行して、裁判所から仮処分の担保金として10万円を納付するよう指示されましたので、Aさんからすぐに用意してもらい、法務局に納付しました。
4.仮処分以降の手続き
発信者情報開示の仮処分が出された後、相手方のロキテクノロジー社に連絡をして、無事に投稿者のIPアドレス等の開示を受けることができました。
そのIPアドレスから、投稿者がアクセスした際に利用したプロバイダがKDDIであることがわかりました(おそらくスマートフォンでアクセスして投稿したものと思われます)。
そこで、当事務所からKDDIに対して、投稿者のアクセス情報を保存するよう依頼する書面を送りました。
投稿者のアクセス情報は3ヶ月~6ヶ月で消去されると言われており、この後の発信者情報開示請求の裁判が終わるのを待っていると消えてしまう可能性が高いため、まずプロバイダに情報を保存するように依頼するという訳です。
今回は、KDDIが投稿者のアクセス情報が残っていること、その情報を一旦保存してくれることを回答してくれましたので、裁判中に情報が消えるという心配がなくなりました。
そして、当事務所は、KDDIに対して、投稿者の氏名や住所等の個人情報の開示を求める裁判を起こして投稿した人物の特定を進めました。
5.まとめ
今回は、当事務所が実際にご依頼をいただき、対応してきた事例をご紹介しました。
今回のAさんのように発信者情報開示をするためには、プロバイダのアクセス情報が消えてしまう前に行う必要があります。
Aさんの場合は、当事務所にご相談にいらっしゃった時点で、問題の投稿がなされてから約1ヶ月半くらい経過していましたが、そこから仮処分の準備を急いで行ったことで、なんとか情報が消える前に発信者情報を開示させることができました。
同じようにインターネット上の名誉棄損や侮辱行為などでお悩みの方がいらっしゃいましたら、ぜひ当事務所のインターネットトラブル専門チームにご相談ください。