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不倫相手に内容証明を送るメリットや書き方を弁護士が解説!

夫婦の一方が不倫をしているような場合には、不倫相手に対して慰謝料の請求を求めたり、不倫をやめさせたりするためにアプローチをかけたいと思うことがあるでしょう。
このような場合には、まずは内容証明郵便で連絡をするのがよいと聞いたことがある方も少なくないかもしれません。
もっとも、内容証明郵便について詳しい方は多くないのではないでしょうか。
そこで、この記事では、内容証明郵便とはそもそも何なのか、また、不倫相手に内容証明郵便を送るメリットや書き方、注意点などを解説します。
目次
1.そもそも内容証明郵便とは
そもそも内容証明郵便とは、郵便法48条に規定されている郵便の種類の一種で、送った文書の内容を郵便局が証明してくれる郵便のことをいいます。
1-1.内容証明の本来の機能
内容証明は、送った文書の内容を郵便局が証明するものです。
例えば、売買契約において、代金の支払いや商品の引き渡しが遅れている場合には、相当の期間を定めてその履行の催告をした後に、契約を解除することができます(民法541条)。
このように契約を解除する場合には、相手に対して履行の催告をする必要がある場合があるのですが、その方法については法律で定められていません。
そのため、例えば電話でもこの「履行の催告」をしても良いのですが、裁判になったときに「履行の催告がされていない」と反論されたとすると、電話で話した内容を証明することができず、解除が認められないなどという事態が発生しかねません。
そこで、たしかに相手に履行の催告をしたということを証明できる、内容証明郵便にて履行の催告をすることが一般的なのです。
内容証明の本来機能は、このように送った内容を証明することで、法律上の要件を満たしたことを主張・立証することができるようにするものといえます。
1-2.内容証明郵便は相手に本気で請求をするのに使われる
実務上では、上記のように法律上の要件を主張するため以外にも、内容証明郵便が利用されています。
後に不倫相手に送る内容証明郵便の例をお伝えしますが、内容証明の内容は、法律上の請求要件等にかけられて利用されることがおおいことから、受け取った相手としては、「これを無視すれば裁判等の法的手続きを採られてしまうかもしれない」などという心理的圧迫を加えることが可能です。
そのため、交渉の過程でこちらの本気度を示すためにも内容証明郵便が利用されているといってもよいでしょう。
1-3.内容証明郵便は配達証明をつけることが一般的
この内容証明郵便については同時に、配達証明をつけるということを知っておきましょう。
配達証明とは、相手に配達・交付したことを証明してくれる郵便のことをいい、同じく郵便法47条に規定されているものです。
この証明は、いつ配達・交付したかを証明してくれるので、内容証明に記載されている事項をいつ送ったか、いつ相手方がこれを受領したのかを証明する際には、配達証明がなければなりません。
一般的に、意思表示は、到達主義ですから、相手方に意思表示が到達していなければなりません。
そのため、どのような意思表示をしたのかという「内容証明」と同時に、いつこれを相手が受領したのかを証明するためには「配達証明」が必要となるのです。
以下では、配達証明付きの内容証明郵便を、単に「内容証明」といいます。
1-4.電子内容証明を送るためには準備が必要
内容証明には電子内容証明(e内容証明)という、インターネットを通じて送るサービスがあります。
電子内容証明を利用すれば、郵便局の窓口に行かなくても24時間送付の手続きを行うことができるため、今では広く利用されています。
ただ、電子内容証明を利用するためには、郵便局に無料の利用者登録をするなどの準備が必要なので注意が必要です。
2.不倫相手に内容証明を送るメリット
不倫相手に内容証明を送るメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
2-1.本気で請求していることを示し心理的圧迫を与える
内容証明は、請求の本気度を示して、相手方に対し、心理的圧迫を与えられるというメリットがあります。
内容証明は、その後に控える法的手続きに提出可能な証拠としての性質がありますから、内容証明が持つ相手に与える心理的圧迫感により、相手方の支払を期待することができるでしょう。
2-2.慰謝料請求権の時効の完成猶予ができる
内容証明を送ることで、時効の完成猶予をすることができます。
上述したように、慰謝料請求権は、損害及び加害者を知ったときから3年で消滅時効にかかってしまいます。
この消滅時効の完成が迫っている場合には、慰謝料の支払いを求める内容証明を送付することで、催告(民法150条1項)として時効の完成猶予の効果を生じさせることができます。
3.内容証明の書き方や記載事項
内容証明の書き方・記載事項について確認しましょう。
3-1.内容証明で送る文書はパソコンで作成する
内容証明は同じ文書を通常3通用意して提出します。
手書きでも送ることは可能なのですが、3通すべて同じ文言で記載する必要があるうえ、後述するように1枚の紙に行数・字数・余白の設定など厳しいルールもありますから、今ではパソコンのワープロソフト等で作成するのが通常です。
3-2.内容証明のフォーマット
内容証明のフォーマットは、以下のとおりです。
縦書きの場合
- 1行20字以内、1枚26行以内
横書きの場合
- 1行20字以内、1枚26行以内
- 1行13字以内、1枚40行以内
- 1行26字以内、1枚20行以内
この文字にはカッコや句読点も含むため、通常のワープロソフトの文書処理のように、文末に句読点がはいると、1行の文字数がオーバーすることがあるので注意しましょう。
弁護士が内容証明を作成する場合には、禁則処理という設定で文末に括弧や句読点をつけた場合でも1行の文字数を崩さないようにしています。
また、いくつか特殊な文字の数え方をするものがあります。特殊な文字の数え方については、郵便局のホームページに記載があるので、必ず目を通すようにしましょう。
文字の大きさについての指定はありませんが、通常ワープロソフトで作成する場合よりも行間・文字間が広くなるので、フォントサイズを12ptのように大きめに設定するのが一般的です。
(参考)内容証明 ご利用の条件等|郵便局
3-3.不倫相手に送る内容証明の例
不倫相手に行う慰謝料請求として送る内容証明の例をご覧ください。
また、作成の各ポイントを解説します。
3-3-1.日付
日付については内容証明郵便を提出する日を記載します。
3-3-2.表題
特に指定はありませんが、一般的に内容証明では「通知書」とすることが多いです。
3-3-3.当事者の記載
通知書の場合は、送る人を「通知人」・受け取る人を「被通知人」と記載します。
送る人を「差出人」、受け取る人を「受取人」と記載することもあります。
氏名と住所は封筒に記載する記載方法と同一でなければなりません。
3-3-4.不倫を行なったこと
不倫を行なったことを記載しましょう。
不倫については、実務上、「不貞行為」と記載することが一般的です。
不倫を始めた時期がおおよそでもわかれば、併せて記載しましょう。
3-3-5.精神的苦痛を受けていること
精神的苦痛の内容を具体的に記載します。
記載例では、10年にわたり築いてきた「平穏な夫婦生活」を保護法益として設定しています。精神的苦痛が原因で精神疾患を患うようになった場合には、「通知人は不貞行為によって受けた精神的苦痛が原因で、令和◯◯年◯◯月◯◯日精神科にてうつ病と診断され、現在通院治療を余儀なくされています。」などと記載するのも良いでしょう。
受けた精神的苦痛の内容が、請求する金銭の額(損害)の根拠となるので、なるべく詳しく記載しましょう。
3-3-6.不倫が不法行為にあたること・慰謝料の額
精神的苦痛を与えたことが、民法709条の不法行為にあたることを記載します。
その上で、請求する慰謝料の額と、振り込み方法について併せて記載します。
3-3-7.期限と法的措置について
金銭の支払いについて期限を設けます。
設けられた期限にお金の振り込みをしない場合、法的措置を行うことを併せて記載します。
4.内容証明の効果を高めるためのポイント
内容証明の効果を高めるためのポイントには次のことが挙げられます。
4-1.事実のみを記載し余計なことを書かない
内容証明には事実と評価を記載しましょう。
夫婦の不倫に関することですから、感情的な文章になることも一定止むを得ないところではありますが、感情的な表現はできるだけ避けましょう。
4-2.弁護士の名前で送る
弁護士に依頼をしたときには、弁護士の名前で送ってもらうことができますので、内容証明の効果が高まることが期待できます。
弁護士から内容証明が来たとなると、相手も本気で対応しなければならないと考えることも多く、心理的圧力も非常に高まるといえるでしょう。
5.内容証明を書く際の注意点
内容証明を書く際には、しっかり確認し、修正箇所がないように注意しましょう。
作成した内容証明に誤字があったり、形式に不備がある場合には、送ることができない場合があります。
また、誤字程度であれば、窓口で内容を修正することは可能ですが、この場合、誤記した部分を二重線で消して印鑑をおし、余白欄に「◯字削除◯字加入」と記載することになります。このような修正が多いと、受け取った相手への心理的圧迫の効果が少なくなる可能性があります。
修正は最小限にとどめ、あまりにも修正箇所が多い場合には、作成しなおすことを検討しましょう。
6.内容証明の送り方
内容証明は次のように送ります。
6-1.内容証明を3通・封筒を作成する
内容証明を3通作成し、併せて封筒を作成します。
ワープロソフトで作成した内容証明を3通出力するとともに、本文に記載した通知人(差出人)・被通知人を封筒に記載します。
3通の内容証明はすべてに割印を押します。
内容証明が複数枚にわたる場合には、ホチキス留めを行なって契印を押します。
6-2.郵便局の窓口に持参する
郵便局の窓口に持参します。
内容証明は、どの郵便局でも取り扱っているわけではなく、郵便認証司のいる郵便局で取り扱っています。
郵便局のホームページで取り扱いがあるかどうかを確認しましょう。
内容証明は書留郵便の一種なので、書留郵便を送るための窓口に持参します。
窓口で内容証明の形式の要件などを満たしているか確認し、問題なければ送付のための手続きを行います。
3通作成したものについては、1通が郵便局で保管、1通を相手に送付し、もう1通は受付印を押して返して返却されます。
2通でも受け付けてもらえるのですが、返却分がないので注意が必要です。
7.ケース別の内容証明を送った後の対処法
内容署名を送った後の対処法について見てみましょう。
7-1.要求が承諾された
要求に応じて相手が支払ってきた場合には、慰謝料請求は終了となります。
7-2.要求を拒否された
要求を拒否された場合には交渉を行います。
慰謝料の支払い義務の有無・金額・支払い方法など、相手の主張とその理由を確認して、その当否を検討します。
要求を拒否され続ける場合には、民事裁判を提起することを検討しましょう。
7-3.内容証明を無視された
内容証明が相手に届いているにもかかわらず、これを無視するケースがあります。
この場合も、要求を拒否されたものと同様とみなし、民事裁判等の法的手続を採ることを検討しましょう。
7-4.その他
内容証明を送ったにもかかわらず、相手に届かない場合には、住所を再度確認しましょう。
なお、相手方が単に内容証明を受け取らない場合は、相手に内容証明記載の意思表示が到達したものと扱われるので、たとえば時効を止めるための催告として有効に取り扱われます。
8.内容証明の作成やトラブルを弁護士に相談するメリット
不倫相手に内容証明を送る場合や、トラブル自体について弁護士に相談するメリットには次のようなことが挙げられます。
8-1.請求内容や書面について法的アドバイスを受けられる
請求内容について法的アドバイスを受けることができます。
不倫相手に慰謝料請求をするような場合、主張する事実関係が適切か、要求する慰謝料の額が適切かなどについて、法的な視点を持って検討しなければなりません。
そして、書面として必要なことが記載されているか、余計なことを書いていないか、相手に対して心理的圧力を加えられるかなど、内容証明が適切かどうかも検討する必要があります。
弁護士に相談すれば、これらの事項について法的なアドバイスを受けられるというメリットがあります。
8-2.内容証明に弁護士の氏名・住所を入れてもらえる
内容証明に弁護士の氏名・住所を入れてもらえるというメリットがあります。
上述したように、内容証明に弁護士の氏名・住所を入れてもらうことは、内容証明を受け取った人の心理的圧迫の度合いに大きく影響し、早期の解決を期待することができます。
8-3.その後の交渉や法的手続きを任せることができる
弁護士には、その後の交渉や、法的手続きをまるごと依頼ができます。
不倫の慰謝料請求をするような場合には、不倫相手と交渉すること自体に大きな精神的な負担があるでしょう。
また、法的手続きを行う場合には、書類の作成や裁判所への出頭などの手間がかかってしまいます。
弁護士に依頼すれば、これらのことをすべて任せてしまうことができ、手続に付随する負担を大きく軽減することができるでしょう。
9.内容証明に関するよくあるQ&A
以下、内容証明に関するよくあるQ&Aを確認しましょう。
9-1.内容証明は何度でも送れるのでしょうか
内容証明を送る回数には制限はありません。
そのため、1度目に内容証明を送っても返事をしない場合、再度内容証明を送ることが可能です。
しかし、内容証明ばかりを何度送っても、相手が交渉に応じない、慰謝料の支払いをしないのであれば意味がありません。何度も内容証明だけが届く場合、相手方に対するプレッシャーも徐々に弱くなっていってしまうでしょう。
そのため、内容証明で決められた期間に返事や支払いがなければ、早期に民事裁判等の法的手続きを採ることを検討しましょう。
9-2.弁護士に内容証明を送ることだけを依頼することができるのか
弁護士が内容証明を送ることだけでご依頼を受けること自体は可能でしょう。
もっとも、内容証明を送った後の交渉や示談書の取り交わし等の手続が通常予定されていますので、内容証明の送付のみではご依頼を受けていない法律事務所も少なくないでしょう。
内容証明の送付のみの依頼に応じているかは、個別の法律事務所に問い合わせて聞いてみましょう。
9-3.行政書士に依頼する場合の注意
内容証明の作成及び送付については、行政書士も業務範囲となっているため、行政書士に依頼することも可能です。
もっとも、行政書士は書面の作成の代行はできても、不倫の慰謝料請求そのものについてのアドバイスや交渉代理はできないので注意が必要です。
10.まとめ
この記事では、不倫相手に内容証明を送るメリットや、書き方などについてお伝えしました。
不倫相手に対して慰謝料等を請求する場合には、一般的に内容証明が利用されていますが、内容証明に記載すべき事項や、適切な慰謝料の額などは、個別の案件によって異なります。まずは初回60分無料の弁護士法人PRESIDENTの無料相談を利用してみてください。
投稿者プロフィール
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- 弁護士法人PRESIDENT弁護士
-
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 弁護士法人PRESIDENTにて勤務
■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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