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不倫はどこから?定義や慰謝料請求の条件・方法を弁護士が解説!

配偶者が不倫をしたような場合には、慰謝料の請求や離婚という問題が発生します。
ところで、ここで言う「不倫」とはどこからが不倫なのでしょうか?何をしたら法的問題が発生するのでしょうか。
このページでは不倫とはどこからが不倫なのか、その定義や、慰謝料請求の条件・方法について解説します。
目次
1.不倫はどこから?不倫の定義について
男女が親密な関係を築く段階で、どこからが不倫となるのでしょうか。
不倫の定義と併せて確認しましょう。
不倫という用語はもともと、人の道に背いた行いのことを指す一般的な用語でした。
しかし、1983年に結婚している男女の恋愛をテーマにしたテレビドラマが話題になり、そこで既婚者が恋愛関係に落ちることを「不倫」と呼んだことで一般に広まりました。
そして、現在では結婚している人が、他方の配偶者以外の異性と肉体関係を持つことを指すものとして広く知られています。
1-1.不倫と浮気・不貞行為・姦通の違い
不倫と同様の意味で用いられる用語として、浮気・不貞行為・姦通という言葉があるので、それぞれに意味を整理しておきましょう。
浮気という言葉も、配偶者がいる人が、配偶者以外の異性と肉体関係を持った場合に用いられます。
これは、上述した不倫という言葉が一般になる以前は浮気という言葉が一般的に使用されていたためです。
ただし、浮気という言葉は、婚姻関係にない恋人間でのものや、肉体関係にはない精神的なものの場合にも利用されます。
そのため、用語としては不倫よりも広く使用されているため、あまり慰謝料・離婚の請求の場面では利用されません。
不貞行為というのは、離婚原因について定める民法770条1項1号に規定されている「不貞な行為」のことを指し、法律用語です。
法律用語における不貞行為とは、配偶者以外の異性と性行為をすることを指します。
そのため、一般的な用語として利用される不倫とは同義であるといえます。
姦通という言葉は、道徳に背く性行為のこと、特に配偶者以外の人と性行為を行うことを言う、古い一般的な用語であり、かつて存在した姦通罪における実行行為である姦通のことをいう法律用語でもありました。
江戸時代から1960年代くらいに浮気という表現が用いられるのが一般的になるまでは、広く利用されている言葉でした。
姦通罪という犯罪が廃止されていることからも、現在では利用されることはほぼありませんが、不貞行為・不倫と同じ意味で利用されます。
1-2.どこからが不倫なのか実際の事例をもとに検討
では実際にどこからが不倫なのか、実際の事例をもとに検討しましょう。
不倫は、婚姻関係にある者が、他方の配偶者以外の人と性行為をするという定義に基づいて考えることになります。
1-2-1.既婚者とふざけてキスをした場合
例えば、酔っていた・遊んでいた・ゲームをしたなど、ふざけてキスをした場合はどうでしょうか。
この場合、性行為を行っているわけではないので不倫にはあたりません。
また、仮にふざけておらずに、本気で恋愛関係となってキスをしたような場合でも、この段階ではまだ不倫とはいえないことになります。
キスでも不貞行為とはならないため、その前の段階にあるといえる手をつなぐ行為、腕を組む行為も不貞行為には当たりません。
ただし、後述しますが、その頻度や内容によっては法的責任を負う可能性があります。
1-2-2.既婚者とデートした場合
既婚者とデートをした場合はどうでしょうか。
食事や遊園地に行くなどのデートをする範囲では、性行為を行っているわけではないので、不倫にあたりません。
ただし、こちらも後述しますが、その頻度や内容によっては法的責任を負う可能性があります。
1-2-3.既婚者と性交類似行為をした場合
既婚者と性交類似行為のみをした場合はどうでしょうか。
性行為はしていなくても、口淫(オーラルセックス)・手淫・肛門性交などの性交類似行為を行ったような場合には、不倫にあたると解釈されています。
1-2-4.同性間で性交類似行為をした場合
性交類似行為が不倫にあたるのであれば、同性間で行う性交類似行為も同様に解釈すべきなのでしょうか。
この点について、現状は配偶者以外の異性との関係について不倫としており、同性間の性交類似行為は不倫にあたるとは解釈されていません。
しかし、男女関係やパートナー関係についての価値観が変わってきているので、将来的には不倫として扱われる可能性はあるといえます。
また、不倫にあたらなくても、その頻度や内容によっては法的責任を負うことがあるので注意が必要です。
1-2-5.風俗の利用
風俗の利用は、性的関係を伴わない風俗(キャバクラ・ガールズバー)であれば、性行為を伴わないので不倫にあたらないとされています。
性行為・性交類似行為を伴う風俗を利用することは、形式的には配偶者以外との性行為・性交類似行為にあたるのですが、判例でも1回、2回程度の利用では離婚原因とならないと解釈されており、風俗通いの頻度が多い・期間が長い場合に不倫と認定されることになります。
2.離婚可能な不倫の条件
不倫をされた場合に離婚をするにはどのような条件が必要なのでしょうか。
2-1.協議離婚・調停離婚では合意できれば離婚が可能
離婚は、まずは当事者で協議を行い、合意ができれば協議離婚によって離婚します。
当事者間で合意ができない場合には、まず離婚調停を提起します。
離婚調停で合意ができれば、調停離婚となります。
調停で合意ができなければ、離婚裁判によって離婚することになります。
離婚協議・離婚調停では当事者が合意できれば離婚ができるので、上述した不倫にあたらない行為が行われたに過ぎない場合でも離婚が可能です。
2-2.裁判離婚では離婚原因に該当する必要がある
しかし、離婚裁判を起こすためには、民法770条1項所定の離婚原因があることが必要で、1号の不貞行為と認定されるためには、配偶者以外の異性との性交渉である不倫をしていることが認定される必要があります。
ただし、不倫と認定される行為ではなくても、その行為が原因で夫婦関係が破綻してしまっている場合には、5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」として離婚原因が認められることがあります。
例えば、性行為をしていなかった、性行為をしていることが立証できなかった場合でも、数年にわたって家族を顧みずデートを公然と繰り返しているような場合には、夫婦関係の破綻を認定できる可能性があります。
また、デートだけでは夫婦関係の破綻の認定をしきれない場合でも、DVやモラハラなどほかにも夫婦関係の破綻を認定できる事情がある場合には、同様に5号で離婚原因ありと認定できる場合があります。
3.不倫された場合の慰謝料請求
不倫された場合の慰謝料請求について確認しましょう。
3-1.不倫で慰謝料が請求できるケース
慰謝料請求は、民法709条所定の不法行為に基づく損害賠償請求権を根拠として行われます。
不倫によって精神的苦痛を被った他方の配偶者は、故意・過失によって不倫をした配偶者と不倫相手に対して、損害賠償請求をすることができます。
また、性行為・性交類似行為がない・認定できない場合でも、精神的苦痛を生じさせることを行っている場合には、同様に損害賠償請求をすることができることがあります。
先程紹介した、公然とデートを繰り返し、家庭を顧みないような場合には、当然に精神的苦痛を生じさせるので、損害賠償請求が可能となります。
ただし、性行為がある不倫に比べると、慰謝料の額はどうしても低くなるので注意が必要です。
3-2.不倫で慰謝料が請求できないケース
一方で不倫であっても、次のような事情がある場合には、不倫の相手方には慰謝料の請求ができないケースもあります。
- 不倫であると知らず知らないことに過失がない
- 性行為・性交類似行為を強いられたものである
- 風俗で従事しているにすぎない
まず、上述したように、慰謝料は民法の不法行為の規定に基づいて請求するものになります。
そのため、故意・過失がなければ不法行為責任を問われません。
そのため、不倫を行った配偶者が、不倫相手に対して独身であると偽っており、相手もそのことに対して過失がない場合には、不倫相手は不倫であると思いとどまる機会を逸していたといえるので、不法行為責任を問えません。
この場合は逆に、不倫相手となった人から、貞操権侵害であるとして不倫を行った配偶者が損害賠償請求を受けうる事案といえます。
また、配偶者が強制性交の被害にあった場合には、故意・過失があるとはいえません。
また、配偶者が強制性交をしたような場合に、不倫相手に故意・過失があるとはいえません。
このような場合には、慰謝料請求はできません。
さらに、風俗通いの頻度が多い・期間が長いような場合で不倫と認定できる場合でも、相手となる風俗で従事している人は、仕事として性交・性交類似行為に応じているにすぎず、故意・過失があるとはいえませんので、不倫として慰謝料請求をすることはできません。
4.法的に認められる不倫の証拠
不倫を行ったとして、相手に対して離婚を請求する、損害賠償請求をする場合、最終的には裁判で争うことになります。
不倫の事実を認定するためには、証拠が必要なのですが、どのような証拠であれば認定されるのでしょうか。
4-1.写真・動画
性行為・性交類似行為を行っている現場や、これを強く推認させる現場を映した写真・動画は、不倫の強い証拠となります。
存在することは稀ですが、性行為等を行っている写真・動画があれば直接的な証拠になりますが、ラブホテルに入るところの写真・動画についても、性行為を行っていることが推認可能です。
これらの写真・動画については、顔がしっかりと認識できるものであること、その日時がわかるように撮影することが重要です。
4-2.不倫を認める旨の書面や動画・録音
次に有力な証拠となりうるものとして、不倫を認める旨の書面や、動画・録音データが挙げられます。
書面は、念書などのタイトルで作成されることが多く、その内容として、
- 不倫をしたこと
- 不倫の時期
- 不倫の回数や頻度
- 不倫相手の氏名・住所
- 不倫のきっかけ
- 相手が不倫であると知っているかどうか
などを記載してもらいます。
書面に記載する以外に、動画や録音データも証拠にできるので、とっさの場合にはスマートフォンを使って録画・録音するようにしましょう。
4-3.メール・SNSのやりとり
不倫をしている配偶者と不倫相手のやりとりとして、メール・SNSのメッセージ交換が証拠になることがあります。
これらの情報を取得できる場合には、できれば相手のスマートフォンやパソコン上で表示をしてもらって、相手のスマートフォン・パソコンで表示されたことがわかるように、これらと一緒に自分のスマートフォンで撮影するのが望ましいといえます。
これらのやりとりの痕跡は、見られることを想定して、曖昧な記載に留めることが多いです(例:昨日は楽しかった)。
そのため、他の証拠で補強する必要があることが多いことを頭にいれておきましょう。
4-4.レシート・クレジットカードの明細
レシートやクレジットカードの明細などが証拠になることがあります。
ホテル・ラブホテルを利用したレシートやクレジットカードの明細や、ポイントカードなどがあれば、不貞行為の大きな証拠になるでしょう。
また、普段利用しないような高いレストランの明細や、風俗店の利用明細なども証拠になることがあります。
風俗を利用した場合には、名刺やメッセージカードなどを渡されることもあります。
4-5.探偵・調査会社・興信所の調査報告書
もっとも有力な証拠となるのが、探偵・調査会社・興信所の調査報告書です。
探偵・調査会社・興信所では、浮気・不倫調査として、尾行・張り込みによって不倫をしている現場の写真や動画を撮影するなどした上で、これらを添付して不倫の内容を調査報告書として依頼者に提出します。
不倫をしている現場を確認できたような場合には、調査報告書は有力な証拠となります。
5.慰謝料請求の相場と決め方
慰謝料請求の相場はどのくらいなのでしょうか。また慰謝料はどうやって決めるのでしょうか。
5-1.慰謝料の相場
不倫をした場合の慰謝料の相場は、一般的には50万円~300万円程度です。
大きく幅があるのは、不倫といっても、内容や精神的苦痛の程度は千差万別なので、様々な事情に応じて増減するためです。
慰謝料が増額する事情としては、
- 不倫の期間が長い
- 不倫の頻度が多い
- 不倫が原因で離婚に至った
- 不倫相手が妊娠した
- 夫婦に子どもがいる
- 不倫が原因で精神疾患などに陥った
- 不倫について反省をしていない
慰謝料が減額する事情としては、
- 不倫の期間が短い
- 不倫の頻度が多いわけではない
- 不倫をしたけども離婚するに至ってはいない
- 不倫について反省をしている
などが挙げられます。
5-2.不倫の慰謝料の決め方
不倫の慰謝料はどのように決めるのでしょうか。
当事者で慰謝料請求権の有無・額が合意できるのであれば、不倫の慰謝料は当事者で決めることができます。
当事者で合意できない場合には、訴訟を起こし、裁判官の判決という形で慰謝料を決めることになります。
裁判で和解をする場合や、裁判のかわりに民事調停を利用することも可能で、これらで合意ができれば、その金額で決めることになります。
離婚をする場合に、慰謝料が決められない場合には、離婚調停・離婚裁判で慰謝料を決めることになります。
6.慰謝料請求までの流れ
不倫をされた側が慰謝料請求をするまでの流れは次の通りです。
6-1.証拠を収集する
まず不倫に関する証拠を収集します。
証拠の収集が十分ではないまま交渉を開始すると、証拠を隠滅されるおそれがあり、これによって慰謝料の交渉が著しく不利になる可能性が高いです。
そのため、相手との交渉を始める前にしっかり証拠を収集しましょう。
6-2.相手と交渉をはじめる
証拠を十分に収集すれば、相手と交渉をはじめましょう。
交渉の方法について法律で定められた方法はありませんので、電話・メール・SNSでのメッセージでのやりとりのどれを利用してもかまいません。
しかし、本気で請求することを示すために、実務上は内容証明郵便を用いて送ることが多いです。
交渉の結果支払いに合意できた場合には、示談書・和解書などの書面を作成するようにしましょう。
6-3.裁判等の提起
相手と慰謝料の支払いで合意できない場合には、裁判等の法的手続きを行います。
通常は裁判を起こすことになるのですが、民事調停・支払督促・少額訴訟などケースに応じた法的手続きを行います。
6-4.強制執行
裁判等を行って慰謝料の支払い義務があること、その金額が確定したにもかかわらず、支払ってもらえない場合には、相手の財産に対して強制執行を行います。
預金や給与、自動車や貴金属やブランド品などを差し押さえ、そこから支払いを受けます。
7.慰謝料請求を弁護士に相談するメリット
慰謝料請求については弁護士に相談し、依頼することに、次のようなメリットがあります。
7-1.法的なサポートを得られる
法的なサポートを得られます。
不倫の慰謝料請求や離婚の請求をするためには、不倫にあたるのかどうか、証拠から不倫を認定してもらえるか、認定してもらえる慰謝料の額はどのくらいかなどの法的知識が不可欠です。
また、相手が支払いに応じない場合には、民事訴訟・強制執行などの手続きに関する知識も欠かせません。
弁護士は法律問題・手続きに関するプロなので、相談・依頼すれば法的なサポートを受けることができます。
7-2.精神的に楽になる
相談することによって精神的に楽になります。
不倫に関することは、不倫をしたほう・されたほうに関わらず、周りに話しづらいといえます。
わからない事だらけなのに誰にも話せず、精神的に大きなストレスを抱えることは珍しくありません。
弁護士に相談することで、悩みを話して、解決の道筋を確認することで、精神的に楽になることが期待できます。
また、弁護士に依頼してしまえば、精神的に厳しい交渉を強いられる慰謝料請求をまかせてしまうことができ、非常に精神的に楽に請求が可能になります。
7-3.スムーズな解決
スムーズな解決が期待できます。
不倫にあたるかどうか、慰謝料の支払いが必要であるとして、いくらが相場なのか、当事者双方にわからないまま交渉を勧めると、落とし所が見えずに交渉が長期化することがあります。
弁護士に相談することで、不倫にあたると主張するポイントや、そのための証拠、慰謝料の相場や交渉のポイントについてアドバイスしてもらうことで、交渉がしやすくなり、スムーズな解決が期待できます。
また、弁護士に依頼すれば、これらの交渉を代理してくれますし、相手が支払わない場合にも、訴訟などの手続きを素早く行ってくれるので、スムーズに不倫問題が解決するといえます。
8.まとめ
このページでは、どこからが不倫なのか、不倫などの定義や慰謝料請求の方法についてお伝えしました。
不倫は現在では配偶者のある人が、別の異性と性交渉を行うことを指し、慰謝料請求・離婚の請求をされることになるものです。
法的問題や慰謝料の相場などは、個々のケースによるので、まずは弁護士に相談してみるようにしましょう。
弁護士法人PRESIDENTでは、初回60分無料の法律相談を実施しているので、是非ご利用ください。
投稿者プロフィール
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- 一歩法律事務所弁護士
-
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立
大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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