慰謝料請求された
不倫してしまった際のリスクやトラブル対処法を弁護士が解説!

結婚している相手と肉体関係を持つことを一般的な用語として不倫と呼んでいます。
不倫をしてしまった場合には、当事者で感情のもつれから様々なトラブルに発展する可能性があり、法的な問題では離婚・慰謝料請求という問題が発生します。
本記事では、不倫をした場合のリスク・トラブルの対処法について弁護士が解説します。
目次
1.不倫とは何か
そもそも不倫とは何なのでしょうか。
よく同様に用いられる用語である、浮気・不貞行為・姦通という言葉との違いと併せて確認しましょう。
1-1.不倫とは
不倫とは、現在の一般的な用いられ方としては「結婚している人が配偶者以外の人と肉体関係をもつこと」とされます。
元々不倫という言葉自体は、人の道に背いた行いのことを指す言葉であり、テレビドラマなどの影響で、徐々に配偶者以外の者との肉体関係のことを指すようになりました。
1-2.浮気との違い
浮気とは、特定の交際相手や配偶者がいるにもかかわらず、別の異性と深い関係になること一般を指します。
結婚している人以外にも交際相手がいるにすぎない人も対象となり、行為についても肉体関係に限定されずに利用されます。
1-3.不貞行為との違い
不貞行為とは、民法770条1項1号に規定されている離婚原因のことをいい、不倫と同様に配偶者がいる者が配偶者以外の異性と肉体関係を持つことをいいます。
不倫と不貞行為は意味は同じですが、不貞行為は法律用語です。
1-4.姦通との違い
古い用語なのですが、道徳に反する不貞行為・性行為のことを指す一般的用語として姦通という用語が用いられていました。
そして、かつて刑法では、結婚している女性が配偶者以外の人と性行為を行うことについて、姦通罪という刑罰が設けられていましたが、現在では姦通罪は廃止されており、姦通という用語も利用されることはほぼありません。
2.不倫してしまったらどうなるのか
ここから先、結婚している人が不倫=不貞行為をしてしまった場合にどうなるのかを確認しましょう。
2-1.法的な問題点
まず、不倫によって、次の4つの法律問題が発生します。
- 離婚原因となる
- 慰謝料請求が可能となる
- 求償権の問題が発生する
- 貞操権侵害の可能性がある
順番に確認しましょう。
2-1-1.離婚原因となる
離婚協議・離婚調停で離婚の合意ができなかった場合、それでも離婚をするには離婚裁判を起こす必要があります。
離婚裁判を起こす際には民法770条1項各号所定の離婚原因が必要です。
不貞行為は民法770条1項1号の離婚事由に該当しますので、離婚調停が不成立となり、離婚裁判となった場合、特段の事情のない限り判決にて離婚が成立することとなります。
2-1-2.慰謝料請求が可能となる
不倫をした場合、不倫をされた配偶者は、不倫をした配偶者・不倫相手に対して、精神的苦痛を理由として慰謝料請求が可能となります(民法709条、同710条)。
不倫をされた側が慰謝料請求をする場合でも、次の場合には慰謝料請求ができません。
- 不倫当時、婚姻関係がすでに破綻しているような場合
- 不倫相手が既婚者であると知らず・知らないことに過失がない場合
- 不倫と不倫相手を知ったときから3年・不倫したときから20年が経過した場合
婚姻関係がすでに破綻している場合には、不倫をしても精神的苦痛が生じるわけではないので、慰謝料請求はできません。
また、不倫相手が既婚者であると知らずに不倫をしてしまった場合には、損害賠償請求の要件である故意・過失がないので、慰謝料請求ができません。
そして、慰謝料請求権は、不倫と不倫相手を知ったときから3年・不倫したときから20年が経過した場合、消滅時効が完成し、慰謝料請求することができません。
2-1-3.求償権の問題が発生する
不倫をされた配偶者が慰謝料の請求をする場合、不倫をした配偶者と不倫相手の両方に対して行うことができます。
これは、不倫をした配偶者と不倫相手が共同して不法行為を行った(共同不法行為)と評価されるためです。
共同不法行為である場合、各不法行為者は連帯して慰謝料の全額を賠償する責任を負うこととされています(民法719条)。
そして、不倫をした配偶者と不倫相手の責任割合によって、支払ったほうが他方に対して請求する権利を有します。
この請求権のことを求償権と呼んでいます。
例えば、慰謝料が100万円と認定される場合で、不倫をした配偶者が不倫相手を強引に誘ったもので、責任割合が「不倫をした配偶者8:不倫相手2」とされるとしましょう。
この場合に、不倫をされた配偶者が不倫相手に対して慰謝料として認定される100万円全額を請求した場合、上述したように連帯して全額に対して支払い義務があるので、不倫相手は100万円を支払う義務があります。
しかし、100万円の支払いに応じた不倫相手は、不倫をした配偶者との関係では、本来20万円しか負担する必要がありません。そのため、不倫相手は、不倫をした配偶者に対し、求償権として80万円を請求できることになるのです。
離婚をしないで不倫相手に慰謝料の請求をする場合には、求償権のことを考慮に入れて金額の交渉を行う必要があります。
2-1-4.貞操権侵害を主張されることがある
結婚をしているにもかかわらず、これを黙秘する・独身であると偽わり相手と性行為を行った場合、相手から貞操権侵害を主張される可能性があります。
貞操権とは、性行為をする相手を選択する権利のことをいいます。
そして、結婚をしていることを黙秘したり、独身であると偽ったことによって、既婚者とは性行為をしないという選択をすることを妨げたことになり、貞操権侵害となります。
貞操権を侵害された場合には、相手に対して慰謝料請求をすることができます。
2-2.自分が既婚者の場合に生じる法的問題
ではここからは、不倫をした当事者ごとに上記の問題がどのように発生するかを確認しましょう。
自分が既婚者で不倫を行った場合の法的問題は次の通りです。
- 離婚調停が不成立となり離婚裁判となった場合、判決にて離婚が成立しうる
- 不倫をされた配偶者から慰謝料請求をされる可能性がある
- 不倫相手が慰謝料を支払った場合には求償権を行使される可能性がある
- 不倫相手に独身と偽っていたような場合には貞操権侵害に基づく慰謝料請求をされる可能性がある
2-3.自分が不倫相手の場合に生じる法的問題
自分が不倫相手である場合には、次のような問題が生じます。
- 相手の配偶者から慰謝料請求をされる
- 慰謝料について全額支払った場合には不倫をした配偶者に求償権を行使が可能
- 独身であると偽っていた相手に対して貞操権侵害に基づく慰謝料請求が可能
2-4.不倫したときのリスク
以上の法的リスクの他にも不倫によって次のようなリスクがあります。
2-4-1.不倫をされた配偶者が問題のある行動を起こす
不倫をされた配偶者は、精神的に不安定となることもあるでしょう。
その結果、不倫をした方の配偶者や不倫相手に対して、法律上認められている慰謝料請求などを超える問題のある行動を起こすことが考えられます。
たとえば、不倫が職場で行われたような場合に、会社で不倫の事実を打ち明けて、会社で問題になることがあります。また、不倫相手に慰謝料請求をするも、誠実に対応してもらえず感情的になり、相手の自宅に押しかけるなどの行為をすることもあります。
これらの行為がなされた場合には、プライバシー侵害あるいは名誉毀損に基づく損害賠償請求にて対処することも考えられますが、あくまで事後的な措置になるため、上記リスクは否めません。
2-4-2.不倫をされた配偶者のケアや家庭での負担が増える
不倫をされた配偶者のケアが必要となることもあります。
例えば、不倫の事実を知ったことでショックを受けた配偶者が、精神疾患に罹患してしまった場合、配偶者の精神的ケアが必要となります。そうなると、仕事や家事、育児ができなくなることがあり、その分を不倫をした配偶者がきちんと補う必要もあるでしょう。
2-4-3.子どもへの悪影響
夫婦に子どもがいる場合には、子どもへの悪影響が発生する可能性があります。
夫婦間の関係が急激に悪化すれば、そのことが子どもに影響する可能性もあります。
毎日のように離婚を巡る言い争いを目の当たりにすることによって、精神的に不安定となり、不登校・引きこもりといった状態につながるおそれもあります。
2-4-4.社会的信用を失う
不倫をした配偶者・不倫相手となった人は、不倫が公になると社会的信用を失うことになります。
親族や友人知人からの信用を失う可能性もあり、職場でも事実上の影響は避けられません。
3.不倫をしてしまった結果トラブルになった場合の対処方法
不倫をしてしまった結果トラブルになった場合の対処方法を確認しましょう。
3-1.慰謝料請求をされた場合の対応方法
慰謝料請求をされた場合の対応方法についてはどのように対応すべきでしょうか。
3-1-1.慰謝料請求に応じなければならないかどうかを確認する
まず、本当に慰謝料請求に応じなければならないかどうかを確認しましょう。
上述した通り、不倫をしたからといって、常に慰謝料請求をしなければならないというわけではありません。
- 婚姻関係がすでに破綻している
- (不倫相手)既婚者であると知らず知らないことに過失がない
- 慰謝料請求権はすでに時効にかかっている
慰謝料請求をしてきている場合でも、これらの事情がないか確認を行いましょう。
3-1-2.慰謝料の相場は適切かを確認する
次に、請求していきている慰謝料が、相場に比べて適切かを確認しましょう。
不倫の慰謝料の相場は、不倫の態様によって50万円~300万円程度となっています。
このような相場を無視して1,000万円以上の請求をしてきているような場合には、減額の交渉を行うことになります。
また、1度性行為を行い、その後は全く関わっていないような場合で相場の上限である300万円程度の慰謝料を請求することも過大な請求であるといえます。
不倫の具体的な事情を精査し、慰謝料として請求してきている額が適切なのかを検討しましょう。
3-1-3.慰謝料の支払いについて交渉をする
慰謝料に関する確認・精査が終われば、相手と交渉を行います。
請求を拒否できる場合なのであれば、拒否できる理由と証拠を示して請求を拒否します。
また、請求している額が相場よりも多い場合には、適切な相場を示して減額の請求を行います。
慰謝料については一括で支払うのが難しいようなケースもあるでしょう。
このような場合には、支払うのが難しいことを説明して、減額・分割払いを打診してみましょう。
慰謝料の支払いについて合意ができた場合には、示談書・和解書などの書面を作成するようにしましょう。
書面の作成は支払う側としても、慰謝料に関するトラブルを蒸し返さないために、合意した以外の債権債務がないことを確認する清算条項をつけることができるメリットがあります。
3-1-4.法的手続きに対応する
慰謝料の支払いを拒んでいたり、条件で折り合わない場合には、相手から裁判などの法的手続きを起こされることがあります。
裁判を起こされた場合には、きちんと対応しなければ、相手の主張がそのまま通ってしまいます。
また、裁判の他にも、民事調停・支払督促・少額訴訟など、様々な法的手続きを利用することが考えられますので、適切に対応するようにしましょう。
3-2.離婚の請求をされた場合の対処方法
離婚の請求をされた場合の対処方法は次の通りです。
3-2-1.離婚をしたいかどうかをよく考える
まず自分が離婚をしたいかどうかをよく考えてみましょう。
不倫をしてしまった直後は、お互いに激しく感情的なやりとりを行うことも珍しくありません。
まず、離婚をしたいかどうかをよく考えてみることが重要です。
3-2-2.離婚をしたくない場合には一度冷静になるために別居を
離婚をしたくない場合には話し合いで離婚を回避します。
しかし、不倫が発覚した直後はどうしてもお互い感情的になりがちです。
まずは一度冷静になるために別居をすることも考えられますが、別居期間中も婚姻費用(生活費等)の分担が必要となることに注意が必要です。
3-2-3.離婚協議
離婚する場合にはまずは離婚協議を行います。
離婚だけをすることも可能ですが、子どもがいる場合には子どもの親権者は必ず決める必要があります。
慰謝料・養育費・財産分与・面会交流などは後から決めても問題はないですが、できる限り離婚時に決めておくことが望ましいです。
取り決めについては離婚協議書という形で書面にします。
公正証書にすることを求められることがありますが、これは金銭の支払いをする義務がある人が支払わなかった場合に、すぐに強制執行をすることができるようになるので注意しましょう。
3-2-4.離婚調停・離婚裁判
離婚協議がまとまらない場合には離婚調停が行われます。
調停とは、裁判官・調停委員が当事者の話を聞いて、適切な解決案も模索しながら紛争を解決する合意を目指すものです。
離婚調停で合意ができなければ、離婚裁判となります。
離婚裁判をする場合には離婚原因が必要ですが(民法770条1項各号)、不倫は離婚原因となるので、調停不成立後は離婚裁判を起こすことが可能です。
調停・裁判では、離婚・親権のみならず、慰謝料・養育費・財産分与などについても同時に決められます。
4.不倫してしまった際のトラブルの対応をに弁護士に相談、依頼するメリット
不倫してしまった際のトラブルの対応は弁護士に相談・依頼することが望ましいです。
その理由には次のようなことが挙げられます。
4-1.トラブル解決のための法的なサポートを受けることができる
ここまでお伝えした通り、不倫をしたことによって様々なトラブルが発生し、法的に解決することが必要となります。
どのような立場の人にどのような請求をされる可能性があるのか、請求されている内容・金額は適切なのか、どのように対応をすればいいのかは、法的な知識が不可欠です。
弁護士に相談・依頼すれば、法的なサポートを受けることできます。
4-2.冷静に話し合うことが可能となる
不倫問題に基づくトラブルは、それぞれの当事者が感情的になりやすいのが特徴です。
例えば、慰謝料の実際の相場は、精神的苦痛を受けた当事者からは低く感じることも多く、実際には相場をこえる金額の請求が行われることも珍しくありません。
弁護士に相談すればこれらを冷静に判断してくれるでしょうし、弁護士に依頼すれば相手との交渉を任せることができるので、相手も冷静に交渉を行ってくれることが期待できます。
4-3.精神的に支えてくれる
不倫をしてしまったとはいえ、実際に多額の金額を請求されると動揺することも珍しくないですし、何より不倫によって各種の請求をされていることを話せる相手も少ないのが通常です。
そのため、精神的に追い詰められてしまうこともあります。
弁護士に相談・依頼をすることで、精神的にも支えてもらえます。
5.不倫に関するよくあるQ&A
不倫に関してよくあるQ&Aには次のようなものがあります。
5-1.不倫をした側から離婚を請求することはできるのか
不倫をした側から離婚を請求することはできるのでしょうか。
このような離婚となる原因を作った当事者の側のことを有責配偶者と呼んでいます。
不倫で離婚する場合、民法770条1項1号で不貞な行為があった場合に離婚原因となることが規定されています。
このことから、不倫を行った方からも離婚の請求をすることが出来るように見えます。
しかし、有責配偶者からの離婚請求は原則は行えず、
- 別居の期間が長期間に及んでいる
- 未成熟の子供がいない場合である
- 配偶者が離婚によって過酷な状況におかれない
といった厳格な要件を全て満たす場合に限り、例外的に離婚の請求はできると解釈されています。
5-2.弁護士に無料で相談することは可能か
弁護士に相談する場合、通常30分5,000円程度の相談料を支払う必要があります。
ただ、法律相談については次のような無料で行う制度があります。
- 市区町村で開催される無料法律相談
- 地域の弁護士会で開催される無料法律相談
- 一定の収入要件によって法テラスで行う無料法律相談
また、一部の弁護士は、気軽に相談をしてもらえるように、無料で相談を受け付けていることがあるので、積極的に利用してみましょう。
弁護士法人PRESIDENTは初回60分無料で法律相談を承っているので、是非ご利用ください。
6.まとめ
このページでは、不倫してしまった際のリスクやトラブルへの対応方法についてお伝えしました。
不倫してしまった場合には、法的なトラブルとしては慰謝料請求・離婚の請求をされる、といった可能性があります。
トラブルに冷静に対応するためには、弁護士に相談して適切な対応をすることが不可欠です。
まずは弁護士に相談をするようにしましょう。
私たち弁護士法人PRESIDENTは、離婚・男女問題、不倫慰謝料減額の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
投稿者プロフィール

- 弁護士
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■経歴
2019年12月 弁護士登録
2020年1月 都内法律事務所にて勤務
2021年8月 弁護士法人PRESIDENTにて勤務
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