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ユニオン(労働組合)とは?種類や特徴や活動内容を弁護士が解説

労働組合に入っていないという方も多いのではないでしょうか。データを見ても、雇用者数に占める労働組合員数の割合を示す労働組合の推定組織率は16.5%(参照元:労働労働省「令和4年労働組合基礎調査」)と年々低下しており、労働組合に入っていない人は増えていると言えます。
しかし、日本経済は長期的な経済の低迷の状態にあり、労働問題に関するトラブルが多くなっている現状を踏まえ、今一度、労働組合の存在が注目を集めています。
そこで、この記事では、労働組合(ユニオン等)のメリット・デメリットを解説するとともに、労働組合でのトラブルの対処法を解説します。
目次
1.労働組合の種類とその特徴
労働組合には、次の6種類があります。
- 企業別組合
- 産業別組合
- 職業別組合
- ユニオン(合同労組)
- ナショナルセンター
- 国際労働組合総連合(ITUC)
それぞれの特徴について、解説します。
1-1.企業別組合(単位組合)
企業別組合(単位組合)とは、同じ企業の従業員から組織された労働組合のことです。日本の労働組合といえば、企業別組合といわれるほど日本では一般的な労働組合です。同じ企業に所属し、先輩・後輩などの同僚であるため、人間関係が密接な傾向にあります。
1-2.産業別組合(産別)
産業別組合(産別)とは、同じ業種に属する労働者が結集することによって組織された産業ごとの労働組合です。産業別組合は、企業別組合では達成できない労働条件や職場環境の改善などを目的として、産業ごとの労働問題を解決するために結成されました。産業別組合は、欧米で一般的な労働組合です。
1-3.職業別組合(職能別組合)
職業別組合(職能別組合)は、同じ職種・職業の労働者(職人)が、独自に結成した労働組合のことです。最低限の賃金などの労働条件や職場環境などを維持・改善するため、ボイコットなどの手段により、要求を実現するなどの活動をしています。
1-4.ユニオン(合同労組)
ユニオン(合同労組)とは、企業、職種、職業を問わずに労働者によって組織された労働組合です。主に中小企業の労働者を中心に結成されています。ユニオンは、ユニオンの内部で、業種や職業、地域別に組織されています。
近年、労働組合の中では活発な活動をしているため、注目されています。
1-5.ナショナルセンター
ナショナルセンターとは、産業別組合から組織された全国の労働組合が加入する中央組織です。連合(日本労働組合総連合会)や全労連(全国労働組合総連合)は、日本の代表的なナショナルセンターです。要望を実現するため、政党を支持することによって、政府に対して働きかけることもあります。
1-6国際労働組合総連合(ITUC)
国際労働組合総連合(ITUC)とは、世界のナショナルセンターが集まって結成された労働組合です。世界の労働問題を解決するため、本部をベルギーのブリュッセルに置いて、活動しています。日本の連合も、ITUCに加盟しています。
2.労働組合に加入するメリットとデメリット
労働組合に加入するメリットとデメリットについて、解説します。
2-1.労働組合に加入するメリット
労働組合に加入するメリットとして、次の3つを挙げることができます。
- 不当な取扱いに対抗できる
- 会社に対する要望が通りやすくなる
- 社内外での交流が増える
それぞれについて、解説します。
(1)不当な取扱いに対抗できる
労働組合に加入するメリットとして、まず挙げられるのは、使用者からの不当な取扱いに対抗できることです。使用者から解雇、時間外手当の未払い、パワハラなどのハラスメントなど不当な取扱いを受けたとしても、個人で対抗するのはとても難しいことです。
しかし、労働組合に加入して、労働組合を通して、要望・交渉することにより、不当な取扱いに対抗することができます。
というのは、使用者は正当な理由なく団体交渉を拒否することを、禁止されているからです。
また、会社としても社員が労働組合に加入していることを理由として、不利益な取扱いをすることができないため、会社が組合員に不当な取扱いをすることを防ぐことができるというメリットもあります。
(2)会社に対する要望が通りやすくなる
労働組合に加入する2つ目のメリットとして、会社に対する要望が通りやすくなることが挙げられます。
というのは、個人で会社に要望するよりも、労働組合を通したほうが、要望が通りやすくなるからです。
つまり、労働組合に加入することによって、会社に対する要望が通りやすくなるため、会社からの不当な取扱いに対抗できるということです。
(3)社内外での交流が増える
労働組合に加入する3つ目のメリットとして、社内外での交流が増えることが挙げられます。
例えば、大企業の企業別組合に加入すれば、同じ会社でも会ったことのない人と組合の活動を一緒にすることになります。
さらに、活動後に打上げなどもあるため、これまで交流のなかった人との交流が増えます。
また、ユニオン(合同労組)に加入した場合、社外の人との交流が増えるため、他社の人とのつながりができます。
2-2.労働組合に加入するデメリットや注意点
労働組合に加入するデメリットや注意点としては、次の3つが挙げられます。
- 組合費を支払う必要がある
- 労働組合の活動に充てる時間が増える
- 加入すると脱退しにくい
それぞれについて、解説します。
(1)組合費を支払う必要がある
労働組合に加入するデメリットや注意点として、まず挙げられるのは、組合費を支払う必要があることです。
というのは、労働組合は会社から経費援助を受けてはならず、会員からの組合費によって運営されているからです。
そのため、加入する組合によりますが、平均して毎月3,000~5,000円程度の組合費を支払わなければなりません。
(2)労働組合の活動に充てる時間が増える
労働組合に加入する2つ目のデメリットや注意点として、労働組合の活動に充てる時間が増えることが挙げられます。労働組合の活動は、それなりにやることがあります。
例えば、イベントの企画を立案したり、そのための資料の準備をしたりするなど、労働組合の活動も仕事と変わりありません。
そのため、通常の仕事をやりつつ、労働組合の活動に充てる時間を確保しなければなりません。
しかも、毎月組合費を支払いますが、労働組合の活動に対する給料は支払われません。
そのため、組合活動を一生懸命にやっても報酬が得られるわけではなく、通常の仕事との両立が大変になります。
(3)加入すると脱退しにくい
労働組合に加入する3つ目のデメリットや注意点として、加入すると脱退しにくいということが挙げられます。労働組合に加入して、活動していくと、労働組合の同僚と人間関係ができてきます。
そうなると、脱退したくても脱退しにくいという状態になるからです。
3.労働組合の活動内容と権利
労働組合の活動内容と活動するための労働者の権利について、解説します。
3-1.労働組合の活動内容
労働組合は、労働条件の維持・改善などを図ることを目的に活動しています。労働組合に加入して活動するための労働者の権利は、日本国憲法第28条に定められています。
第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
引用元:日本国憲法 | e-Gov法令検索
日本国憲法第28条には、
- 団結権
- 団体交渉権
- 団体行動権(争議権)
これらの権利を「労働三権」といい、労働者の権利として保障されています。
労働三権により、労働者は労働組合を結成し(団結権)、使用者と団体交渉し(団体交渉権)、要求実現のため、団体行動する(団体行動権)ことができるのです。この労働三権により結成される労働組合の権限について、具体的にするための法律が「労働組合法」です。
労働組合は、憲法上保障されている「労働三権」や「労働組合法」などをもとに、労働条件の維持・改善などを図るために活動しています。各労働組合によって、それぞれの活動内容は違いますが、最も重要なのは「春闘」と呼ばれる団体交渉です。
春闘では、各企業の労働組合が賃上げや労働時間などの労働条件について、勤務先の企業に要求し、回答を得るという形で行われます。
3-2.労働組合が活動する上での制限やルール
労働組合が活動する上での制限やルールは、概ね「労働組合の活動内容」のところで解説したとおりです。
労働組合に関連する法律は、労働組合法のほか、労働基準法と労働関係調整法があります。
この3つの法律のことを、「労働三法」と言います。
- 労働基準法:労働条件の最低基準を定めた法律
- 労働組合法:労働組合の定義や権利などを定めた法律
- 労働関係調整法:労使関係の調整を図ることにより、労働争議を予防、解決するための法律
4.労働組合が行う労使交渉と労働紛争解決の手段
労働組合が行う労使交渉とは、労働三権のうち団体交渉のことです。
交渉が決裂した場合には労働争議という状態になり、労働組合は、労働委員会にあっせん、調整、仲裁、あっせんを申し立てることができます。
また、労使交渉では、主に賃金や労働環境など、労働者全体の利益となるための交渉が行われます。労働者個人と会社とのトラブルなどの個別の紛争は労使交渉の対象とはならず、別の労働紛争解決の手段を取る必要があります。
ここでは、労働組合が行う労使交渉と個別の紛争に関する労働紛争解決手段について解説します。
4-1.労働組合が行う労使交渉について
労働組合が行う労使交渉とは、日本国憲法第28条で保障されている団体交渉権を根拠とする団体交渉のことです。
団体交渉とは、労働者が労働組合を通じて、使用者との間で労働条件や労働環境などについて、話し合うことにより交渉することを言います。
労働者が労働組合を通して、使用者に対して労働条件などの団体交渉の申入れをした場合、使用者は正当な理由なく拒否することはできません。
4-2.労使交渉によって解決できない労働紛争の解決方法
労働組合が行う労使交渉は、話合いにより解決を図りますが、労使交渉の対象となるのは労働者全体の権利や利益に関する事項であり、労働者個人と会社とのトラブルは労使交渉の対象になりません。
この労使交渉の対象にできないトラブルのことを、「個別労働紛争」と言います。
一方、労働組合と使用者との間の労使交渉、いわゆる団体交渉は、「集団的労働紛争」と言います。
個別労働紛争を解決するため、個別労働関係紛争解決制度があります。
個別労働関係紛争解決制度では、都道府県労働局、紛争調整委員会などの行政機関への申立てができます。また、その他に通常の訴訟、労働審判として裁判所による解決を図ることもできます。
個別労働関係紛争解決制度を整理すると、次のとおりです。
行政 | 都道府県労働局 | 助言・指導 |
行政 | 紛争調整委員会 | あっせん |
裁判所 | 民事訴訟 労働審判 民事調停 |
紛争調整委員会によるあっせんとは、弁護士や大学教授などの学識経験者から成る紛争調整委員会から指名された委員が、個別労働紛争の解決を図るため、両者の間を取り持つことです。
5.労働組合の解散と脱退について
労働組合の種類や特徴のほか、労働組合に加入するメリット・デメリットなどについて解説しました。
一方で、労働組合も解散しますし、組合員が脱退することもあります。
そこで、ここでは労働組合の解散と脱退について解説します。
5-1.労働組合の解散と脱退について
労働組合の解散と脱退に分けて、解説します。
(1)労働組合の解散
労働組合の解散については、労働組合法第10条に次のような規定があります。
(解散)
出典:労働組合法 | e-Gov法令検索
第十条 労働組合は、左の事由によつて解散する。
一 規約で定めた解散事由の発生
二 組合員又は構成団体の四分の三以上の多数による総会の決議
第10条第1項の「規約」とは、「労働組合規約」のことで、労働組合の決まり・ルールや権利義務について定めたものです。
(2)労働組合から脱退するには
労働組合から脱退する場合、加入時と同じく個人の意思により脱退できます。労働組合は強制加入の団体ではありません。入会も脱退も個人の自由でできます。
5-2.労働組合を脱退する際の手続きや注意点
労働組合を脱退する際の手続きについても、法律上特に決まりはありません。
そのため、労働組合側に「脱退の意思」を伝えれば、脱退できます。
理由を求められることもありますが、「一身上の都合」など形式的に伝えれば問題ありません。
労働組合を脱退する場合の注意点としては、会社から不当な取扱いを受けたとしても、会社に要望することが難しくなるということです。
つまり、労働組合員だった場合のメリットがなくなってしまうということです。
6.労働組合に関するトラブルへの対応
労働組合に関するトラブルには、さまざまな種類のトラブルがあります。
ここでは、労働組合に関するトラブルの種類と原因を解説するとともに、労働組合のトラブルが発生した場合の対処法を解説します。
6-1.労働組合に関するトラブルの種類と原因
労働組合に関するトラブルの1つに、使用者の不当労働行為があります。
不当労働行為とは、使用者による労働者や労働組合に対する不当行為のことです。
労働組合法第7条で使用者に対して不当労働行為を禁止することが定められています。
禁止される不当労働行為とは、次の4つの行為です。
- 労働組合の組合員であることを理由とする不利益な取扱い
- 労働組合との団体交渉を正当な理由なく拒否すること
- 労働組合の運営への支配・介入や経費を援助すること
- 労働委員会への申立てたことを理由として労働者へ不利益な取扱をすること
また、労働者と使用者のトラブルには、主に次のような労務トラブルがあります。
- 賃金
- 解雇
- 長時間残業などの労働時間
- 有給休暇などの休暇
- パワハラやセクハラなどのハラスメント
- 労働災害(過労死、精神疾患など)
6-2.労働組合に関するトラブルが発生した場合の対処法
使用者が不当労働行為をした場合、労働者は労働委員会に救済申立てをすることができます。労働者による救済申立てに対して、労働委員会は審査して、使用者へ救済命令を出します。
一方、賃金や解雇、労働時間などの労務トラブルが発生した場合、集団的労働紛争と個別労働紛争では、対処法が違っています。
既に解説したとおり、集団的労働紛争とは労働組合による団体交渉のことで、個別労働紛争とは個々の労働者と事業主との間の労働紛争のことです。集団的労働紛争は、労働組合と使用者の団体交渉によりトラブルの解決を図ります。
一方、個別労働紛争は、個別労働関係紛争解決制度によりトラブルの解決を図ります。
都道府県労働局の助言・指導や紛争調整委員会によるあっせんにより個別労働紛争のトラブルの解決を図るほか、裁判所による労働審判などにより解決を図ります。
7.労働組合に関する相談や手続きのための弁護士の役割
労働組合に関する相談や手続きを弁護士に依頼すると、弁護士はどのようなことをしてくれるのでしょうか。
ここでは、労働組合に関する相談や手続きを弁護士に依頼する場合の、弁護士の役割を解説します。
7-1.労働組合に関する相談や手続きにおいて、弁護士が果たす役割について
労働組合からの団体交渉の申入れを受けた場合、弁護士が会社側の交渉の窓口になってくれます。
例えば、ユニオンからの団体交渉の申入れは、ある日突然来ることが多く、多くの会社がユニオンの対応に慣れておらず、その結果、自社だけで対応してしまうと、失敗する可能性が高いですが、弁護士に依頼すれば、弁護士が冷静に対処してくれます。
ユニオンの団体交渉は、過激なことで知られており、大人数で押しかけたり、会場で暴言や罵倒、怒号が飛び交ったりもします。
そのため、会社の担当者はどのように対応すればいいか、わからなくなってしまい、間違った回答をしてしまうおそれがあります。弁護士はこうしたトラブルに慣れていますので、ユニオンから暴言、罵倒を受けても冷静に対処してくれるでしょう。
また、ユニオンからの団体交渉への対応を弁護士に依頼すると、次のようなメリットがあります。
- 不当労働行為を回避できる
- 要所要所で的確なアドバイスを受けることができる
- 弁護士が代理人になることによって、有利に進められる
(1)不当労働行為を回避できる
ユニオンからの団体交渉の申入れに対して、会社側としてよくやりがちな過ちが、申入れの主旨がよくわからないとの理由で団体交渉の申入れを拒否してしまうことです。この行為は、不当労働行為に当たります。ユニオンは、自社の企業別労働組合ではないため、自社と関係ないと思ってしまうことが原因です。
そのため、ユニオンから団体交渉の申入れが来たら、申入れの内容をよく読み、誰がユニオンを通して申入れをしてきたのかを確認しなければなりません。元従業員からだとすると、正式な団体交渉の申入れである可能性が高いです。申入れがあった時点で、弁護士に相談すれば、的確なアドバイスをしてくれるため、不当労働行為を回避することができます。
(2)要所要所で的確なアドバイスを受けることができる
ユニオンとの団体交渉が始まると、具体的な内容の交渉になります。ユニオンはさまざまな提案や要求をしてきますが、これらの提案や要求を受け入れるか、拒否するかは弁護士が判断してくれます。
そのため、会社は明確に回答することが可能になります。
(3)弁護士が代理人になることによって、有利に進められる
弁護士が代理人になれば、会社は直接ユニオンと交渉する必要がなくなります。
基本的には弁護士のアドバイスに従い、書類の準備などをするだけで済みます。
8.まとめ
この記事では、労働組合(ユニオン等)のメリット・デメリットを解説するとともに、労働組合トラブルの対処法を解説しました。
労働組合の推定組織率は低下しているものの、春闘をはじめとして労働組合は活動しています。そのため、会社側としては労働組合対策は必要不可欠です。
労働組合への適切に対処するためには専門家である弁護士に相談するようにしましょう。
投稿者プロフィール
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- 一歩法律事務所弁護士
-
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立
大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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