その他
労働局とは?役割や労働基準監督署の違いを弁護士が解説!

労働問題についてトラブルになったときに、相談先を探していると「労働局」というものの存在を知る方も多いのではないでしょうか。
この労働局とはどのようなものなのでしょうか。
このページでは労働局がどのようなものかを中心にお伝えします。
目次
1.労働局(都道府県労働局)とは?
労働局とは、厚生労働省の地方支分部局の一つで、各都道府県に設置されているもので、労働者の権利の擁護、労働条件の改善、労働災害の防止、労働者の能力の向上、雇用の安定などを目的とした業務をおこなっています。
「都道府県労働局」という呼び方は各都道府県に設置されている労働局の総称で、厚生労働省設置法17条で地方支文局の1つとして設置される旨が規定され、21条でその役割が規定されています。
例えば東京都の場合は東京労働局であるように、各都道府県の地名の部分に労働局が正式な名称となります(北海道労働局は例外)。
2001年から始まった中央省庁再編に先立って、2000年4月に都道府県労働基準局、都道府県女性少年室および都道府県職業安定主務課が統合されて発足したのが現在の労働局です。
1-1.労働局の役割
厚生労働省設置法21条は、都道府県労働局の役割について、「(厚生労働省設置法)第四条第一項第四十一号から第四十七号まで、第五十号、第五十三号から第七十三号まで、第九十九号、第百四号及び第百九号に掲げる事務を分掌」するとしています。
これらの規定を要約すると、前述した
- 労働者の権利の擁護
- 労働条件の改善
- 労働災害の防止
- 労働者の能力の向上
- 雇用の安定
が労働局の役割です。
1-2.労働局の設置場所
労働局は都道府県ごとに設置されています。
例えば東京都には東京労働局が置かれており、千代田区にある九段第3合同庁舎に所在しています。
また、労働局が設置している総合労働相談コーナーが各所に設置されており、有楽町の東京交通会館にある他、他の労働基準監督署内にも設置されています。
総合労働相談コーナーは、相談しやすい交通の便の良い所や、労働基準監督署の中に相談コーナーを設置していることがあります。
2.労働局(都道府県労働局)と労働基準監督署との違い
労働問題に関する行政機関としてよく耳にする「労働基準監督署」と労働局はどう違うのでしょうか。
2-1.労働基準監督署とは
労働基準監督署とは、労働局の所掌事務の一部を分掌させるための機関で、労働基準法等の労働関係法規に関する監督・労災保険・労働基準衛生法に関する業務・労働基準法違反の取締捜査を行うものです(厚生労働省設置法22条)。
実務では労基・労基署という言い方もします。
2-2.労働基準監督署の役割
労働基準監督署は、労働関係法規に関する監督機関・労災保険・労働基準衛生法に関する業務の受付・労働基準法違反の取締捜査などの役割をもっています。
労働基準法を守っていないような場合に、会社に対して調査する・報告させる・是正勧告などをすることで法令を遵守させ、労働基準法違反で犯罪になる場合は労働基準監督署が捜査機関として捜査して送検を行います。
2-3.労働基準監督署の設置場所
労働基準監督署は日本全国に多数存在します。
例えば、東京都だけでも18ヶ所もあります。
労働基準監督署がどこにあるかは、厚生労働省のホームページの全国労働基準監督署の所在案内というホームページで探すことができます。
2-4.労働局(都道府県労働局)と労働基準監督署との違い
では、労働局と労働基準監督署の違いは何でしょうか。
労働基準監督署は、厚生労働省設置法22条にあるように「都道府県労働局の所掌事務の一部を分掌させる」ために設置されています。
そのため、労働基準監督署は労働局の所掌事務を行う出先機関という地位にあり、業務をするにあたっては労働局の指揮監督を受ける関係にあります。
2-5.ハローワーク(公共職業安定所)との関係
なお、労働との関係ではハローワークというものがあります。
正式名称は公共職業安定所で、厚生労働省設置法23条で、労働基準監督署と同様に、都道府県労働局の所掌事務を行う出先機関として設置されています。
ハローワークも労働局の所掌事務を行う出先機関で、労働局の指揮監督を受ける関係にあります。
3.労働局(都道府県労働局)で相談・申請できること
労働局では、総合労働相談コーナーを設けており、ここでは労働問題に関する困ったことについて相談をすることができます。
相談内容について、厚生労働省東京労働局のホームページよると、
解雇、労働条件、募集・採用、男女均等取扱、いじめ・嫌がらせ、セクシャルハラスメント等を含めた労働問題に関するあらゆる分野の相談を、専門の相談員が電話あるいは面接で受け付けます。
労働関係相談先一覧 |厚生労働省東京労働局HP
としています。
これらは労働基準監督署でも相談できるのですが、男女均等取扱、いじめ・嫌がらせ、セクハラ・パワハラなど労働基準監督署の管轄ではないものもあるので、より広い範囲で相談が可能です。
といっても、総合労働相談コーナーの多くは労働基準監督署の中に設置されていることもあり、どちらに相談するかをあまり意識する必要はないでしょう。
また、労働災害・通勤災害にあったときの処理が適切ではないようなケースでは、労働局に相談をします。
例えば、労働災害にあったにも関わらず、手続きが面倒である・保険料が上がってしまうなどの原因から、労働災害として申請させないような場合(いわゆる労災隠し)です
さらに、個別の紛争について助言をするほか、また、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、パートタイム・有期雇用労働法、労働施策総合推進法(セクハラやパワハラ防止措置)などの労働局のみが対応するところについては、紛争解決についての援助も労働局が行います。
また、東京労働局では、東京紛争調整委員会によるあっせんという公的紛争処理手続を利用することができます。
4.労働局(都道府県労働局)で相談・申請できないこと
逆に、労働局で相談・申請できないこととしては、
- 裁判・労働審判における書類作成の指導など
- 労働問題が関係しない当事者の問題(会社の同僚にお金を貸したが帰ってこない等)
- 個人的な問題(病気・政治や宗教・恋愛問題)
といった、管轄が違うもの、労働問題と関係のないものについては相談ができません。
5.労働局(都道府県労働局)に申請・相談するメリット・デメリットは?
労働問題について都道府県労働局に申請・相談するメリット・デメリットを考えてみましょう。
5-1.都道府県労働局に申請・相談するメリット
都道府県労働局に申請・相談するメリットとしては、
- 無料で相談が可能である
- 制限なく相談ができる
- 相談できる施設がたくさんある
- 紛争解決につながる可能性がある
というメリットがあります。
(1)無料で相談が可能である
都道府県労働局に相談するメリットの一つは無料で相談が可能であることです。
労働問題を弁護士などの専門家に相談すると、法律相談料などの費用がかかってしまいます。
都道府県労働局は国の機関であり、相談料は必要としないので、無料で相談することが可能です。
なお、後述しますが、弁護士に相談するにあたって無料で相談する方法もあります。
(2)労働問題であれば制限なく相談ができる
労働問題であれば制限なく相談が可能です。
上述したように、都道府県労働局では一般的な相談として広範な相談を受け付けており、必要に応じて労働基準監督署などの他の機関を紹介するなどしています。
労働問題であってもどこに相談して良いかわからない場合には、まず労働局に相談するのも良いでしょう。
(3)相談できる施設がたくさんある
相談できる施設がたくさんあります。
都道府県労働局の相談窓口である、総合労働相談コーナーは東京だけでも18ヶ所・全国で379ヶ所もあり、いろんな地域で相談することが可能です。
(4)紛争解決につながる可能性がある
都道府県労働局が管轄している問題については、会社に対して調査や質問をして、紛争解決のための筋道を示すことが可能です。
この調査を通じて、会社が問題となっていることを改善し、労働問題が解決する可能性があります。
また、あっせんという公的な紛争解決手段を利用することで、労働問題が解決する可能性もあります。
5-2.都道府県労働局に申請・相談するデメリット
労働局に相談をするデメリットには次のようなものがあります。
(1)必ずしも紛争解決につながるとはいえない
労働局に相談しても必ず紛争解決につながるとはいえないのが最も大きなデメリットです。
労働局への相談を通じて会社に働きかけをしてくれたり、あっせんの手続きを利用したりすることで労働問題の紛争が解決する可能性があります。
しかし、相手が非協力的である場合や、争いを有利にすすめるための証拠収集が充分に収集できていない場合には、紛争解決につながらない可能性があります。
(2)対応に時間がかかる場合もある
労働局に相談しても、対応に時間がかかる場合もあります。
例えば、労働基準監督署と協力して対応をするようなケースがあるとしましょう。
労働基準監督署は報道などでも知られるように、慢性的な人手不足で、対応に着手するまでに時間がかかることがあります。
6.お近くの労働局を探す方法
労働局や総合労働相談コーナーを探すためには、
都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧|厚生労働省ホームページ
から探すことが可能です。
7.労働局以外の労働問題の申請・相談先
労働局以外に労働問題について申請をしたり相談をするところには次のようなものがあります。
7-1.労働基準監督署
労働基準監督署でも労働問題を相談することができます。
労働基準法の違反などについて相談をすれば、立ち入り調査・呼び出し・報告をさせるなどの権限や、刑事事件として捜査をすることを通じて、間接的に労働問題を解決する可能性があります。
7-2.公共職業安定所(ハローワーク)
ハローワークは基本的に再就職や求人についての相談に乗っているのみで、労働者と会社の紛争の解決の相談を行う場所ではありません。
しかし、退職した後に発行される離職票を発行してもらえない場合や、離職票に記載された退職事由が異なる結果、失業手当を受けられない・失業手当が少なくなる自己都合退職にされたという争いが生じることがあります。
このような離職票に関するトラブルについては、公共職業安定所に相談してみましょう。
7-3.全国労働安全衛生センター連絡会議等
労働災害に関する全国的な組織として、全国労働安全衛生センター連絡会議があります。
労働災害の治療・労働災害認定・会社への損害賠償・職場復帰等の相談を受け付けています。
7-4.労働組合
労働組合にトラブル解決を相談することもできます。
労働組合とは、労働者が連帯するための組織であり、大きい会社であればその会社の従業員で構成されている労働組合があります。
ただ、小さい会社には労働組合がなかったり、労働組合が会社と癒着していてトラブル解決に役にたたないような場合には、地域の労働組合や、職域ごとの労働組合で相談を受け付けていたり、全国的な組織としては日本労働組合連合会(連合)・全国労働組合総連合(全労連)といった労働組合が相談に乗っています。
7-5.社会保険労務士
労働関係の専門家として知られるのが社会保険労務士です。
社会保険労務士は基本的には会社・企業の労働問題の各種手続きに関する代行業務を請け負っています。
しかし、一部の社会保険労務士は、労災保険を自分で申請する場合のサポートや、働けなくなった場合の障害年金の取得のサポートをしています。
特に精神疾患となったような場合、労災保険の後遺障害等級認定や、障害年金の認定が難しいので相談するようにしましょう。
7-6.市区町村の相談
市区町村では、住民の困りごとに幅広く相談に乗っています。
その中で弁護士に無料で相談することができるようになっています。
弁護士への無料相談は、おおむね30分程度で、事前に予約を入れて利用します。
例えば東京都港区の場合には、毎週月・金曜日の午後1時~4時に25分程度事前の予約制で法律相談が開催されています。
7-7.日本司法支援センター(法テラス)
日本司法支援センター(通称:法テラス)では、弁護士への相談を収入に応じて無料で行っています。
1人世帯で、手取り月収が18万2,000円以下(生活保護一級地の場合には20万2,000円)であることが収入の要件となるので、法テラスで確認をしましょう。
利用のためには、法テラスに事前に予約を申し込み、当日に弁護士に相談を行います。
7-8.司法書士
一部の司法書士が、残業代請求などの労働問題の相談を受けています。
司法書士は通常、法務局に提出する書面の代行(不動産登記・商業登記)を行っていますが、認定司法書士については140万円以下の金銭を請求する代理権があるため、残業代請求の相談を受け付けていることがあります。
ただし、司法書士は140万円以下の金銭の請求のみなので、不当解雇・労働条件のような金銭の請求以外の問題の取り扱いができません。
7-9行政書士
行政書士は、権利関係・事実関係に関する書面の作成代行が可能で、内容証明の作成を業務としている、これを通じて残業代請求・不当解雇問題などに取り組んでいることがあります。
ただし、行政書士は内容証明の作成のみが可能で、労働者を代理して交渉するなどができません。
7-10.弁護士会の無料相談
弁護士は都道府県にある弁護士会に所属しており、その弁護士会が法律相談を無料で開催しています。
例えば、東京弁護士会の錦糸町法律相談センターでは、月曜から土曜日に法律相談が可能で、その中でも水・木の17:00~20:00土曜日の10:00~12:00は無料で相談が可能です。
7-10.弁護士事務所
労働問題を相談する相手として各弁護士が所属する法律事務所が挙げられます。
8労働問題を弁護士に相談するメリット
労働問題を弁護士に相談するメリットには次のようなものが挙げられます。
8-1.法的な問題や手続きのアドバイスが受けられる
労働問題の解決には、法的な問題や手続きのアドバイスが受けられます。
労働問題は非常に内容が細かく、法律を理解するのが難しい分野です。
また、実際に裁判・労働審判・あっせんなどの手続きを行うには、これらの手続きに関する理解も欠かせません。
弁護士に相談すれば、これらのアドバイスを受けることができます。
8-2.相談できる範囲・取り扱い内容に制限がない
相談できる範囲・取り扱い内容に制限がないのも弁護士に相談するメリットです。
例えば、労働基準監督署に相談をすると、所掌事務の問題については対応可能ですが、例えばセクハラ・パワハラは所掌事務ではないため、一般的な相談には乗れても対応ができません。
また、労働局に相談をしても、会社に対して指導などを行えても、民事訴訟・労働審判などの代理まではできません。
8-3.弁護士に依頼すれば対応を任せてしまえる
労働問題は会社と厳しい交渉を強いられます。
そのため、双方が交渉で感情的になることが多く、解決が難しくしてしまうことがあります。
弁護士に依頼すれば、対応を任せてしまえるので、相手と直接交渉しなくても解決が可能です。
8-4.弁護士に無料で相談できる
弁護士に相談する場合に気になるのが法律相談料です。
法律相談をするためには、弁護士に相談料を払う必要があります。
しかし、市区町村の相談・弁護士会の相談・法テラスなどを利用すれば、無料で相談が可能です。
また、個人の労働問題については、弁護士によっては無料で相談に応じていることがあるので、これらの弁護士を上手に利用すれば無料で相談をすることができます。
弁護士法人PRESIDENTでも労働問題は初回60分無料で相談できますので、是非ご利用ください。
9まとめ
このページでは、労働局とはどのようなものかを中心にお伝えしました。
厚生労働省の出先機関である労働局は、労働総合相談センターを開設しているなど、労働に関する相談ができます。
ただ、裁判等を見据えて解決すべきものについては、裁判を行っている弁護士に相談するほうがスムーズに労働問題が解決します。
まずは、労働局に相談する場合でも、併せて弁護士の無料相談を利用するなどして、労働問題の解決をはかりましょう。
投稿者プロフィール
-150x150.png)
- 弁護士法人PRESIDENT弁護士
-
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 弁護士法人PRESIDENTにて勤務
■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
最新の投稿
労働問題2023.10.03月残業40時間は長い?平均との比較や計算方法を弁護士が解説!
その他2023.10.03労働基準法違反のケースや従業員がとるべき行動を弁護士が解説!
その他2023.10.03定年での再雇用の拒否は違法?トラブル対処法を弁護士が解説!
不当解雇2023.10.02労働審判の解雇の解決金相場は?交渉の手順など弁護士が解説!