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総合労働相談コーナーとは?相談事例や相談時のポイントを解説!

労働問題で会社と争いになったとき、専門家の助けを借りて会社と対峙しなければ、太刀打ちができないのではないかと不安に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そして、労働問題の相談先として探してみると、「総合労働相談コーナー」というものがあることを知る方も多いと思うのですが、この総合労働相談コーナーとはどのようなものであるのかをきちんと理解されている方は多くはないでしょう。
そこで、この記事では、総合労働相談コーナーについて解説します。
目次
1.総合労働相談コーナーとは
総合労働相談コーナーとは、都道府県労働局が設置しているもので、専門の相談員が労働者の相談に応じている機関です。
個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第3条は、都道府県労働局長は、個別の労働関係紛争の防止や解決のために、相談その他の援助を行うことを規定しています。
同条を受けて設置されているのが総合労働相談コーナーです。
(1)都道府県労働局とは
都道府県労働局とは、厚生労働省の地方支分部局として設置されている機関で(厚生労働省設置法17条)、厚生労働省の所掌事務の一部を分掌されています。
都道府県労働局というのは法律上の呼び方であり、実際には各都道府県に設置されており、東京でも東京労働局が東京都千代田区の九段第3合同庁舎で執務をしています。
(2)労働基準監督署や公共職業相談所との関係
労働に関する行政・役所というと、労働基準監督署や公共職業相談所(ハローワーク)の存在の方が身近かもしれません。
労働基準監督署は、厚生労働省設置法第22条で、都道府県労働局の所掌事務の一部を分掌させるために設置された機関で、労働に関する法令の遵守と労災に関する事務などを所掌しています。
公共職業安定所は、厚生労働省設置法第23条で、労働局の所掌事務の一部を分掌させるために設置された機関で、雇用の安定や雇用保険に関する事務などを所掌しています。
労働基準監督署・公共職業安定所はともに、都道府県労働局の事務を分掌させる機関で、労働局の監督のもとに業務を行うという関係にあります。
1-1.総合労働相談コーナーに相談できること
総合労働相談コーナーに相談できることは、基本的に労働問題に関するものであればあらゆる相談が可能です。
厚生労働省のホームページでは、
・解雇、雇止め、配置転換、賃金の引下げ、募集・採用、いじめ・嫌がらせ、パワハラなどのあらゆる分野の労働問題を対象としています。
・性的指向・性自認に関連する労働問題も対象としています。
・労働者、事業主どちらからの相談でもお受けします。
・学生、就活生からの相談もお受けします。
・外国人労働者等からの多様な言語による相談もお受けします。
・専門の相談員が面談もしくは電話で対応致します。
・予約不要、ご利用は無料です。
・相談者の方のプライバシーの保護に配慮した相談対応を行います。
・「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づき、労働相談をお受けするほか、「助言・指導」や「あっせん」をご案内しています。
・労働基準法等の法律に違反の疑いがある場合は、労働基準監督署等の行政指導等の権限を持つ担当部署に取り次ぐことになります。
・ご希望の場合は、裁判所、地方公共団体(都道府県労働委員会など)、法テラスなどの他の紛争解決機関[PDF形式]を情報提供致します。
総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省
と記載されており、事業内容によって担当行政機関を紹介してくれます。
例えば、解雇・労働条件については労働基準監督署の所掌事務になるので、労働基準監督署に話を繋いでくれることが期待できます。
一方、セクハラ・パワハラなどは労働局の所掌事務なので、労働局がそのまま担当を行います。
労働問題が対象となっていますので、家庭の問題や職場での恋愛問題など、労働問題と関連しないものについては総合労働相談コーナーの対象外です。
1-2.総合労働相談コーナーはどこにあるか
総合労働相談コーナーは、主に労働基準監督署の中に設置されていますが、いくつか交通の便が良いところに設置されています。
東京では前述した九段第3合同庁舎内の他に、各労働基準監督署内に設置されているほか、有楽町の交通会館というビルにも有楽町総合労働相談コーナーが置かれています。
総合労働相談コーナーがどこにあるかは、厚生労働省のホームページ「総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省」をご確認ください。
1-3.総合労働相談コーナーには無料で相談ができる
このような総合労働相談コーナーでは無料で労働問題の相談をすることができます。
2.総合労働相談コーナーに相談する前に理解すべきこと
総合労働相談コーナーに相談する前に理解しておくべきこととして次のようなことが挙げられます。
2-1.総合労働相談コーナーに相談したらどう労働問題が解決するか
総合労働相談コーナーに相談するとどのようにして労働問題が解決するのかを確認しましょう。
たとえば、総合労働相談コーナーに労働問題が相談され、会社に問題があるとしましょう。
この場合、都道府県労働局は当事者に助言・指導をすることができます(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条)。
まずは、この助言・指導によって、会社が自主的に労働問題についての問題点を改めることが期待されます。
また、明らかな法令違反がある場合には、労働局・労働基準監督署が、立ち入り検査などの指示を通じて会社に違法状態を改善させます。
労働基準法等には刑事罰の規定があるのですが、この場合労働基準監督署が警察の役割をすることができ、刑事事件化することで会社に違法状態を改善させます。
ただ、これらはあくまで会社の自主的な改善を求めるものにすぎません。
この場合には、紛争調停委員会に「あっせん」という公的な紛争解決手続を利用することも可能です。
ただし、あっせんも相手がその手続きに参加することが前提となっており、その参加を強制することはできませんから、会社が参加しなければ裁判・労働審判を利用するしかありません。
そのため、総合労働相談コーナーへの相談で労働局などの介入により間接的に解決をすることがあっても、相手が断固拒否する場合には解決ができないことになります。
2-2.裁判ではなくても証拠は重要
裁判ではなくても証拠は重要です。
上述したように、相手が対応を断固拒否する場合には、最終的には労働審判や裁判という手続きによって解決することになります。
最終的に裁判になった場合には、主張した事実は証拠によって認定されることになります。
労働者側に証拠がない状態では、会社が労働者の主張する事実をを否定した場合に、当該事実があったことを認定することができません。
そのため、総合労働相談コーナーは、まずは証拠の収集についてアドバイスを受けるとよいでしょう。
3.総合労働相談コーナーへの相談方法
総合労働相談コーナーへの相談方法には、電話・訪問の2つの種類があります。
3-1.電話での相談
総合労働相談コーナーへは、電話で相談することが可能です。
住んでいる地域の都道府県労働局のホームページを検索してみていただければ、電話相談に関する案内が見つかると思いますので、確認して連絡をしましょう。
東京の場合はフリーダイヤルが設置されており、有楽町総合労働相談コーナーにつながるようになっているほか、それぞれの総合労働相談コーナーも電話番号を解放しています。
3-2.訪問での相談
総合労働相談コーナーに訪問して相談をすることも可能です。
予約などは不要ですが、相談前にどのような準備が必要であるのかを事前に電話で問い合わせておくとよいでしょう。
4.総合労働相談コーナーに相談する際のポイントや注意点
総合労働相談コーナーに相談する際のポイントや注意点としては次のようなものが挙げられます。
4-1.なるべく早く相談する
総合労働相談コーナーに相談する場合に限りませんが、労働問題については証拠の存在が結果を大きく左右します。
そのため、なるべく早く相談をして、多くの証拠を集められるようにしましょう。
特に、退職後に残業代請求をするような場合、会社を退職した後に証拠を入手するのが困難になることがあるので、在職中に証拠を確保するのが重要です。
4-2.情報を整理して相談する
事前に情報を整理して相談しましょう。
総合労働相談コーナーで最初から整理しながら話すよりも、情報を整理して相談をするほうが、相談を受ける側にとっても解決のための道筋を検討しやすいといえます。
事前に、労働問題が発生するに至った時系列、自分の主張したいこと、会社との主張が食い違う点などを整理してみると、スムーズに相談ができます。
5.総合労働相談コーナーの相談事例
総合労働相談コーナーへの相談事例には、厚生労働省のホームページで次のようなものが公開されています。
5-1.懲戒解雇処分を撤回してもらったもの
【事例】
①業務上の度重なるミスを理由に懲戒解雇処分を受けたことに対して、その撤回を求めるとの助言指導の申出があった事例
総合労働相談(助言指導/あっせん事例)【指導課】|厚生労働省
申出人、事業主側双方の話を聞いたうえで、懲戒解雇処分は事案の内容からみて重過ぎる感があるとして事業主側に処分の再検討を内容とする口頭助言を行ったところ、事業主側は懲戒解雇処分を撤回し通常解雇扱いとすることにしたため、申出人もそれに同意したもの。
【解説】
業務上で度重なるミスをしたような場合、会社から懲戒処分を受けることがあります。
懲戒処分にも様々な種類があるのですが、懲戒解雇は懲戒処分の中でも最も重いもので、一方的に雇用契約を解消されるうえ、解雇予告や退職金等の取り扱いにおいて労働者側に重大な不利益を与えます。
この点、客観的に合理的な理由を欠き、または社会通念上の相当性を欠く懲戒処分は、無効です(労働契約法15条:解雇権濫用法理)。
懲戒解雇は懲戒の原因となった事由に相当する処分として行われるべきで、特に懲戒解雇は雇用関係を一方的に終了させる最終手段ですから、たとえ労働者に度重なるミスがある場合であったとしても、本件のように懲戒解雇処分が重すぎると判断されることがあります。
5-2.配置転換に応じられず解決金の支払いをしたもの
【事例】
配置転換の事例に対して、送迎の必要のある保育園児がいるため配置転換には応じられないとして、その撤回を求めるとの助言指導の申出があった事例
配置転換の事例に対して、送迎の必要のある保育園児がいるため申出人、事業主側双方の話を聞いたうえで、申出人の家庭事情にも配慮が必要であり、当事者間の話し合いの促進により双方が納得できる解決方法を検討するよう口頭助言を行ったところ、当事者の話し合いにより事業主側が解決金を支払うことで申請人も合意退職に応ずることで和解したもの。
総合労働相談(助言指導/あっせん事例)【指導課】|厚生労働省
【解説】
就業規則や雇用蹴役において配置転換の根拠となる規定が存在する場合には、会社が配置転換に関する広い裁量権を有していると解されることが多く、原則として同配置転換を拒むことは出来ません。もっとも、この場合でも、いかなる場合でも会社は有効に配置転換を強要することができるわけではなく、配置転換の必要性の有無や程度、従業員が被る不利益等を総合的に考慮してその有効性が判断されます。
本件では、会社には配置転換をする必要性があった一方、労働者が送迎の必要のある保育園児がいることから、話し合いが平行線となっていたものですが、最終的には会社が解決金を支払う形で合意退職としたようです。
5-3.有給を取得してアルバイトに降格させられた事例
【事例】
事例① 有給休暇取得でアルバイトに降格?
総合労働相談(助言指導/あっせん事例)【指導課】|厚生労働省
Aさんは、前職を定年退職後、5年前に労働者数約20名ほどの工場に再就職した65歳の男性。
昨年12月に家族旅行のため、5日間の有給休暇を取ったところ、その直後に突然社長から月給28万円の正社員から時給1400円のアルバイトに切り替えると通告された。
Aさんは有給休暇取得が原因でこのような措置を受けたものと考え、納得がいかないとして会社を退職した。 その後、労働相談の窓口で相談を受け、相談員の勧めであっせんを申請した。
あっせん委員が会社側に事情を聞いたところ、有給休暇を取得したことが原因ではなく、会社の業績悪化のためのリストラ対策であることを主張。
Aさんが定年年齢を超えていること、日頃の勤務態度が悪かったこと、他にも2名の労働者に対して指名解雇やアルバイトへの身分変更の措置を取っていること等を挙げ、今回の措置がやむを得ない措置であったことを主張した。
あっせん委員は、Aさんへの日頃の教育指導不足、アルバイトへの切替時にAさんへ十分な説明・説得がなかったこと等を指摘、その結果会社側はAさんに給与2か月分を支払うことを約束、Aさんもそれで円満退職することに同意した。
会社側の一方的通告で本人の誤解を生んだ事例である。
やむを得ず労働者側への労働条件の変更の措置を行う場合には、十分な説明が必要である。
【解説】
本件では、実際には定年年齢を超えていることや、日頃の勤務態度が悪いこと、ほかにも同様の措置をした従業員がいることから、リストラの対象となったのが原因ですが、有給取得が原因であったように労働者に思われた結果トラブルに発展してしまいました。
本来ならば、労働条件を不利益に変更する場合には、原則として労働者の合意が必要で(労働契約法第9条)、例外的に認められる場合でも、事前に十分な説明が必要であったといえるでしょう。
6.労働問題について相談するその他の相談窓口
労働問題について相談するその他の窓口には次のようなものがあります。
6-1.労働基準監督署
上述したように、労働基準法違反などについては労働基準監督署に相談することができます。
もっとも、総合労働相談コーナーが労働基準監督署の中にありますので、総合労働相談コーナーに相談すれば労働基準監督署に繋いでくれるでしょう。
6-2.公共職業安定所
公共職業安定所は基本的には就職・失業手当などの相談が出来るのみで、労働問題は基本的には相談するところではありません。
ただし、失業手当を受けるための離職票について、退職事由が解雇なのに自己都合退職とされたようなトラブルがある場合には、その後の処理について相談に乗ってくれるでしょう。
6-3.労働組合
労働者が個人で会社と交渉をするのは通常非常に難しいことです。
そのため、労働者が団結して交渉するために、労働組合を結成していることがあります。
労働組合は会社ごとに結成していることもあるのですが、大きな会社では労働組合は会社の利益を優先するような労働組合もあるようですので注意が必要です。
また、小さな会社では労働組合が無いことも多いですが、このような場合には、社外労働組合(いわゆるユニオン)に加入することも考えられます。
6-4.社会保険労務士
社会保険労務士は、会社の労働関係や年金関係の手続きの代行を行うなどの業務を主に行っています。
社会保険労務士の中でも、特定社労士と呼ばれる人は、裁判外紛争解決手続(ADR)において代理人になれるので、法律上は労働者のトラブル案件について取り扱うことができます。
しかし、労働者側に立って業務を行っている社会保険労務士は多くない印象です。
6-5.司法書士
司法書士は、不動産登記・商業登記など法務局や裁判所に提出する書類の代行をメインに行っています。
司法書士の中でも、特定司法書士は、140万円以下の金銭請求の代理権があることから、残業代請求などの労働問題についての業務を行っています。
しかし、140万円を超える請求・金銭請求ではないもの・控訴をされた場合などで代理権は無いので注意が必要です。
6-6.行政書士
行政書士は、行政庁に提出する書面の代行や、契約書など権利関係に関する書面の作成代行権限があります。
そのため、内容証明の作成代行を行っている行政書士がおり、会社に対して交渉をするために内容証明を送る代行を行ってもらうことができます。
しかし、あくまで内容証明作成のみの権限で、交渉の代理は行えませんから、注意が必要です。
6-7.弁護士
法律問題について、特段の制限なく業務を行えるのは弁護士のみです。
労働問題の解決には、過去の判例や、裁判・労働審判といった手続きに関する知識が不可欠です。
総合労働相談コーナーでは会社に指導をすることで間接的に解決を目指しますが、弁護士に依頼すれば最初から裁判を見据えて行動できますので、直接的に解決をすることが可能です。
7.労働問題を弁護士に相談するメリット
様々な相談先がある中で、費用をかけて弁護士に相談するメリットには次のようなものがあります。
7-1.法的なサポート
弁護士に依頼すれば、法的なサポートを受けることができます。
他にも法律に関する士業はいるものの権限が制限されていますし、特に裁判についての知識は弁護士がもっとも豊富です。
7-2.労働問題を巡るトラブルを直接解決する
労働問題を巡るトラブルを直接解決することができます。
総合労働相談コーナーや労働基準監督署は、指導を通じて間接的にトラブル解決に導くのですが、弁護士は直接相手に交渉・訴訟を行うことで、トラブルを直接解決することが可能です。
7-3.交渉・裁判を代理してもらえるので負担が少なくなる
弁護士に依頼すれば、会社との交渉や裁判・労働審判を代理してもらえます。
そのため、当事者として相手と直接交渉をする負担を少なくすることができます。
労働事件は相手と感情的に交渉をすることが多く、それが原因で解決まで長くかかることがあります。
弁護士に代理してもらって交渉を任せてしまえれば、精神的な負担は少なくなるでしょう。
7-4.弁護士に無料で相談することもできる
弁護士に相談する場合には通常は相談料がかかるでしょう。
しかし、市区町村の弁護士の無料相談や、法テラス・弁護士会などで無料相談を行っています。
また、労働者側で労働問題に携わっている弁護士の中には、無料で法律相談を行っているところがあります。
これらを利用して上手に弁護士に相談してみてください。
弁護士法人PRESIDENTでも初回60分は無料で相談を行っていますので、お気軽にご利用ください。
8.まとめ
この記事では、総合労働相談コーナーについて中心にお伝えしました。
国が置いている労働問題に関する相談が出来る機関でも、行政の行政指導などにより間接的に解決する労働問題を解決することが可能な場合があります。
もっとも、より確実に、よりスピーディーに、より精神的な負担なく、労働問題を解決したい場合には、まずは弁護士に相談することをお勧めします。
投稿者プロフィール
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- 弁護士法人PRESIDENT弁護士
-
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 弁護士法人PRESIDENTにて勤務
■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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