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離職票がもらえない!原因とデメリット、対処法を弁護士が解説!

会社を退職すると、会社と様々な書類のやりとりをすることになります。
その中の一つが離職票なのですが、離職票とはどのようなもので、何をするのに必要なのでしょうか。
また、離職票を貰えない場合には、どのような対応をすれば良いのでしょうか。
この記事では、離職票を貰えない場合について弁護士が解説します。
目次
1.そもそも離職票とは
そもそも離職票とはどのようなものでしょうか。
離職票とは、正式名称を雇用保険被保険者離職票といい、雇用保険に加入していたことを証明するための書類です。
労働者の生活及び雇用の安定と就職の促進という観点から雇用保険が定められており、失業したときの失業給付や、職業訓練給付などの給付を受けることができます。
離職票は、この雇用保険の被保険者であったことを、離職後に証明するための書類で、雇用保険法76条3項に規定されている証明書となるものです。
1-1.退職時に他に会社から受け取る書類
退職時に他に会社から受け取る書類の主なものとしては、次の5つがあります。
- 雇用保険被保険者証
- 源泉徴収票
- 年金手帳
- 健康保険資格喪失証明書
- 退職証明書
1-1-1.雇用保険被保険者証
雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入していることを証明する書類です。
雇用保険に加入していると、雇用保険の被保険者番号が割り振られます。
この被保険者番号は個人ごとに割り振られ、雇用保険被保険者証に記載されています。
そして、転職をした際に転職した先の会社が雇用保険に関する手続きをするために、被保険者番号を確認するために雇用保険被保険者証が必要となります。
離職票と同じように雇用保険に関する書類ですが、離職票が後述するようにハローワークに提出するものである点で異なるので注意しましょう。
1-1-2.源泉徴収票
会社から支給された給与と納めた税金の額が記載された書類が源泉徴収票です。
源泉徴収票は毎年受け取るほかに、退職時にも受け取ります。
源泉徴収票は新しい会社での税金の計算に用いられるほか、起業をした場合の確定申告に利用するなどで重要です。
1-1-3.年金手帳
公的年金への加入を証明する書類として、年金手帳が挙げられます。
厚生年金の手続きをするのに、会社で年金手帳を管理していることが多いので、退職の際に返却してもらいます。
転職する際に必要になるほか、すぐに転職しない場合には居住している市区町村の国民年金に加入する必要があります。
1-1-4.健康保険資格喪失証明書
会社で加入している健康保険がある場合には、健康保険資格喪失証明書を受け取ります。
新たに健康保険に加入するのに必要となります。
1-1-5.退職証明書
退職証明書は必要に応じて取得します。
退職証明書自体は労働者が会社を退職しただけでは発行する義務があるものではありません。
しかし、労働者が請求したときには、遅滞なくこれを交付するよう、労働基準法22条1項で定められています。
退職証明書には、勤務していた期間・どのような業務に従事していたか、事業においてどのような地位にあったか、給与の額、退職の理由(解雇の場合にはどうして解雇されたかその理由)が記載されることになっています。
そのため、転職の面接などで、退職証明書によって履歴書の内容を確認するような場合に利用されます。
2.離職票はどの場合で必要なのか
離職票はどのような場合に必要になるのでしょうか。
離職票は、ハローワーク(公共職業安定所)に提出して離職したことを証明するために必要とされる書類です。
これによって、失業状態であるという確認がされ、失業保険を受け取ることができるようになります。
そのため、離職票は失業保険を受け取る場合に、ハローワークに提出するために必要です。
3.離職票をもらえるまでの期間
離職票をもらえるまでにはどのくらいの期間が必要なのでしょうか。
上述した退職証明書の場合には「遅滞なくこれを交付しなければならない」としているのですが、離職票についてはこのような期間制限はありません。
離職票については一般的には会社がハローワークで従業員の退職の手続きを行って離職票を取得して、その離職票を本人に送ることになります。
そして、退職に関する手続きは、離職の翌々日から10日以内に行わなければなりません。
10日以内に手続きを行って、本人に郵送されるまでの期間を合わせると、おおむね10日~14日程度の期間がかかるものといえるでしょう。
4.離職票がもらえない原因
この離職票ですが、次のような原因で退職してももらえないことがあります。
4-1.会社の担当者が手続きを失念している
会社の担当者が雇用保険の手続きを失念していることが原因で離職票がもらえないことがあります。
担当者が人事経験が浅い・ほとんどない・多忙であるなどが原因で、会社の本業ではない人事に関する手続きが疎かになることがあります。
その結果、ハローワークでの雇用保険の手続きを失念し、そもそも離職表をハローワークから受け取っていない場合が考えられます。
4-2.離職票を本人に送るのを失念している
離職票を本人に送るのを失念していることがあります。
同様に、担当者が人事経験が浅い・ほとんどない・多忙であるなどが原因で、会社の本業ではない人事に関する手続きが疎かになり、離職票を本人に送ることを失念することがあります。
4-3.本人が退職後に転居して送付先が不明である
本人が退職後に転居して、送付先が不明になってしまっている場合が挙げられます。
当然ですが送付をしても転居をしてしまって郵送物を受け取ることができない場合には、郵送物が帰ってきてしまうので、送付ができません。
ただ、送付をしても宛先不明で戻ってきてしまえば、電話やメールなどで連絡し、新しい住所を確認すれば、転居後の住所に郵送することが可能です。
4-4.本人にわざと送付をしていない
離職票を受け取れない原因として問題となるものの一つとして、本人に対してわざと離職表を送付していないケースです。
会社と労働者が労働問題で争いになったときに、会社が嫌がらせをするために、各種手続きに必要な書類を渡さないことがあります。
このような行為は、上述した雇用保険法73条3項に違反する行為で、証明書の送付を拒んだ場合、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金という刑事罰が規定されています。
4-5.雇用保険に加入していない
最も問題となるのは、本来雇用保険に加入すべきであるにも関わらず、雇用保険に加入していなかったことが原因で、離職票をもらえないケースです。
離職票は、雇用保険に加入していた人が、離職したことを証明するための書類です。
そのため、そもそも雇用保険に加入していなかった場合には、離職票を発行してもらえません。
5.離職票がもらえない場合のデメリット
離職票がもらえない場合、次のようなデメリットがあります。
5-1.失業手当をスムーズにもらえない
失業手当をすぐにもらえない可能性があります。
ここまでお伝えした通り、離職票はハローワークに失業していることを認定してもらって、失業手当を受け取るために必要な書類です。
後述するように、他に方法があるのですが、手続きに手間取ると失業手当をスムーズにもらえない可能性があります。
5-2.転職先の面接で求められても提出できない
稀にですが、転職のための面接を受ける際に、離職票の提出や提示を求められることがあります。
これは、履歴書の内容として前職として申告したことが本当かどうかを確認するためです。
しかし、離職票はそもそもハローワークに提出することを前提としているので、退職後にハローワークに提出してしまうと、コピーの提出・提示しかできません。
また、どうしても前職の内容を確認したいのであれば、前述した退職証明書を示すことで代替できます。
そのため、離職票を求められた場合には、代わりに退職証明書でも良いか確認してみましょう。
6.会社から離職票をもらえない場合の対処法
会社から離職票をもらえない場合にはどのような対処法があるのでしょうか。
6-1.会社に連絡をする
単に人事の担当者が失念しているような場合や、事務の手違いで送れていない場合には、会社に連絡をすることで対応をしてもらいましょう。
会社が嫌がらせで送っていない場合には、上述したように離職票を送付しないことは刑事罰となる旨を伝えて送付をしてもらいましょう。
6-2.ハローワークに相談をする
どうしても離職票を送らない場合には、ハローワークに相談してみましょう。
ハローワークは雇用保険法に関する事務を取り扱っているので、会社が離職票の発行を行わない場合、会社に対して離職票の発行を催促してくれます。
6-3.離職票の再発行を依頼する
離職票の再発行をハローワークに依頼しましょう。
離職票は会社が送ってこないようなケースのほか、紛失・汚損してしまうようなケースもあります。
このような場合にハローワークで再発行をすることができます。
6-4.雇用保険への加入手続きを依頼する
もし、雇用保険に加入していないことが原因で、離職票の発行をしてもらえない場合には、雇用保険への加入手続きを依頼しましょう。雇用保険への加入については会社が行うべき義務があります。
本来雇用保険に加入すべきケースにおいて、雇用保険に加入していなかった場合には、労働者が退職した後であっても雇用保険に加入してもらって、遡って雇用保険料の支払いをすることが可能となっています。
遡って雇用保険料の支払いをできる期間は2年が基本ですが、平成22年10月1日から雇用保険料が給与天引きで引かれている場合、2年を超えて遡って雇用保険料を納付することが可能となっています。
失業保険の給付内容は、雇用保険に加入していた期間によって大きく異なりますので、会社には可能な限り遡って加入をしてもらうようにします。
雇用保険加入は会社の義務であり、雇用保険への未加入については会社への刑事罰が設定されているので、そのこともあわせて主張するようにしましょう。
6-5.会社への損害賠償請求
雇用保険への未加入が原因で離職票をもらえず、本来もらえるべき失業保険を受け取れなかった場合には、会社への損害賠償請求を検討しましょう。
会社に直接請求し、会社が賠償に応じない場合には、裁判などの法的手続きによって請求を行います。
7.離職票の離職理由についてのトラブルについて
離職票については、離職理由についてのトラブルについて確認しておきましょう。
7-1.離職理由によって失業手当の内容が異なる
失業手当をもらう場合、離職理由によって失業手当の内容が異なります。
離職理由については大きく会社都合退職と自己都合退職に分かれます。
そして、会社都合退職か自己都合退職かによって、給付されるための要件や給付日数に違いが生じ、会社都合退職のほうが失業手当の給付には有利となります。
まず、雇用保険の加入期間について、自己都合退職の場合は2年の間に通算12ヶ月以上の加入期間が必要なのですが、会社都合退職の場合は1年の間に通算6ヶ月以上の加入期間があれば良いとされます。
また、支給開始日についても、会社都合退職の場合には申請から待機が7日で支給開始されますが、自己都合退職の場合には7日と2ヶ月の待機期間があり、給付の開始が遅くなります。
さらに、失業手当の給付日数についても、自己都合退職と会社都合退職では異なります。
例えば、40歳で雇用保険加入期間が15年である場合、自己都合退職の場合には給付日数は120日ですが、会社都合退職の場合給付日数は240日となります。
以上のように、離職理由によって、失業手当をもらうための要件・もらう時期・もらえる日数が異なります。
7-2.離職票には離職理由が記載される
離職票は上述した通り、失業手当の要件確認のためにハローワークに提出されます。
そのため、離職票にはこの離職理由が記載されます。
具体的には、すでに離職理由に関する分類が印字されており、該当するものに丸をつける形で記載されます。
7-3.会社が離職理由を偽ることがある
離職理由についてのトラブルは、会社がこの離職理由を偽ることで発生します。
よくあるのが、会社が整理解雇を理由に解雇したので、本来は会社都合退職とすべきところを、離職理由で自己都合退職とされる欄に丸をつけて労働者に送付することがあります。
これにより、雇用保険の加入期間の要件を満たさず失業保険の給付がされない、給付がされる場合でも待機期間がある、給付日数が少なくなるというトラブルに発展します。
会社が離職理由を偽る原因としては、国から給付金をもらっているような場合に、解雇で従業員が離職すると、給付金の金額に影響することがあるなどが挙げられます。
7-4.会社が離職理由を偽った場合にはハローワークで説明する
会社が離職理由を偽った場合には、ハローワークに手続きに行ったときに、参考になる資料とともに説明しましょう。
ハローワークでは離職票に記載された離職票のみで形式的に審査するわけではなく、会社や労働者の意見や提出された資料をもとに離職理由を判断します。
そのため、上述のようなケースで、整理解雇であると判断された場合には、たとえ離職票の記載が自己都合退職とされている場合でも、会社都合として失業手当を受け取ることができます。
7-5.自己都合退職でも会社都合として扱われるケースもある
併せて知っておいて欲しいのが、仮に自分で退職届を出して自己都合退職をした場合でも、会社都合とできる場合もあることです。
次のような例が挙げられます。
- 給与の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかったことによって退職した
- 離職直前6か月間のうちに、連続3か月で45時間、1か月で100時間、2ヶ月連続で平均して月80時間を超える時間外労働をしたために退職した
- セクハラやパワハラが原因で退職した
- 退職勧奨を受けた
これらの場合に退職届を提出して自己都合退職をした場合であっても、会社都合退職と同様に取り扱ってもらえることになります。
どのような事由があれば会社都合退職と同様に扱われるかについては、下記の「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要|ハローワークインターネットサービス」を参考にしてみてください。
なおこの場合も、離職票の離職理由は自己都合退職とされているので、ハローワークで申請をするときに資料を持って説明をします。
8.離職票に関するトラブルを弁護士に相談・依頼するメリット
離職票に関するトラブルを弁護士に相談・依頼するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
8-1.法的サポートを得ることができる
離職票をはじめとした労働問題に関して、弁護士に相談・依頼すれば、法的なサポートを得ることができます。
離職票の問題に限らず、労働問題については法律が非常に細かく難解です。
弁護士に相談することで、法的な根拠に基づく対処ができるようになります。
8-2.相手との交渉を任せられる
弁護士に依頼すれば、代理人として相手との交渉を任せることができます。
特に離職票をわざと送らないようなケースでは、会社と交渉すること自体が精神的な苦痛であることが通常で、こういった交渉を任せてしまえるのは大きなメリットといえるでしょう。
8-3.他の労働問題についても併せて解決できる
他の労働問題についても、弁護士に相談すれば併せて解決が可能です。
離職票をわざと送らないような対応をする会社との間には、残業代の支払いが適切でない、違法な長時間残業を行わせた、不当解雇であったなど、離職票の問題以外にも様々な法律問題が存在することがあります。
弁護士に相談・依頼することで、他の解決可能な労働問題があるかどうかを併せて検討することが可能です。
9.離職票に関するよくあるQ&A
離職票に関するよくあるQ&Aについて確認しましょう。
9-1.離職票の問題は労働基準監督署に相談してもよいのか
離職票の問題は労働基準監督署に相談しても良いのでしょうか。
労働問題の相談先として労働基準監督署が有名です。
しかし、労働基準監督署は労働問題の中でも労働基準法や労働安全衛生法といった法律に関する監督を行っており、雇用保険に関する事項についてはハローワーク(公共職業安定所)が管轄をしています。
相談には乗ってくれますが、労働基準監督署には解決するための権限がない上に、再発行などはハローワークで行うので、ハローワークで相談をするほうが良いでしょう。
9-2.弁護士に無料で相談する方法
離職票の問題など労働問題を弁護士に無料で相談することは可能でしょうか。
弁護士に法律相談をする際には相談料の支払いが必要であることが多く、30分5,000円程度の費用がかかります。
市区町村で弁護士に無料で相談できる制度がある他、弁護士会・法テラスで無料相談をすることができます。
また、一部の弁護士は相談のための敷居を低くするために、無料で相談を受け付けていることがあります。
弁護士法人PRESIDENTでは初回60分無料の法律相談を受け付けていますので、お気軽にご相談ください。
10.まとめ
このページでは、離職票がもらえない、というトラブルについて原因やデメリット、対処法についてお伝えしました。
失業手当を受給するのに必要な離職票がもらえない場合には、基本的にはまずハローワークに相談してみることになります。
離職票をもらえないこと以前に、長時間労働や残業代の支給が適切でない場合など、各種の交渉が必要である場合には、まず弁護士に相談してみましょう。
私たち弁護士法人PRESIDENTは、労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
投稿者プロフィール
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- 一歩法律事務所弁護士
-
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立
大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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