残業代請求
大企業の役職者は残業代を請求できないって本当?弁護士が解説!

1.本記事は以下の方を対象にしています
・課長以上の役職で、残業代が支払われていない方
・管理監督者だからと言われ、残業代が支払われていない方
・高収入だからと言われ、残業代が支払われていない方 ※本判決の方の年収は1200万円
2.3つのTopics(要約)
①課長以上の役職で、1200万円以上の収入を得て、自己の労働時間について裁量がある場合であっても、残業代が認められた。
②判決で認められた残業代の金額は約360万円であった。
③残業代を支払う必要がない労働基準法の「管理監督者」は、雇用契約や就業規則にそのような規定があったとしても該当しない場合が多い。
3.どのような事案?
本記事が参考にした裁判例:横浜地判平31.3.26
⑴判決の概要
会社は労働者に対して残業代として360万円を支払わなければならない。
として、当該労働者の主張を認めました。
⑵判決の理由
労働者が労働基準法の「管理監督者」に該当すれば残業代を支払う必要は無くなるため、当該労働者が「管理監督者」に該当するかどうかが争われたが、本件では、当該労働者は実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職務と責任、権限を付与されているとは認められないため、会社には残業代支払い義務がある、とのことでした。
⑶事案の概要
大手企業との間で雇用契約を締結していた当該労働者は、以下のような職務内容でした。
- 年収約1200万円
- 役職は課長職
- 部署は、利益の実現のための企画立案及び実行に必要な権限を有していた。
- 当該労働者は、部署の中で部長職、次席職に次ぐ3番目の役職であった。
- 当該労働者は、CEOを含む経営陣が出席する商品決定会議に出席していた。
4.諦めないでください!
雇用契約や就業規則で「残業代が発生しない」旨を定められていたとしても、役職や給与額、職務権限などによっては残業代を請求できることが多いです。
「自分は残業代が発生しない役職や契約だから・・」と、諦めないで、是非1度弁護士に相談してください。
5.〜一歩進んで〜
労働基準法の管理監督者に該当すれば残業代の支払い義務はなくなります。
では、どのような場合に管理監督者に該当するのでしょうか。
雇用契約や就業規則などに、単に管理監督者についての規定があるだけでは足りず、以下の3つの要件が必要だと言われています。
- ⑴当該労働者が実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職務と責任、権限を付与されているか。
- ⑵自己の裁量で労働時間を管理することが許容されているか。
- ⑶地位や職責にふさわしい待遇かどうか。
本件では、当該労働者は⑵と⑶の要件は満たしているとされました。
しかし、⑴の要件について該当しないとして、当該労働者は管理監督者には該当しないと判断されました。
その理由は、当該労働者はCEOらが出席する商品決定会議に出席していたものの、提案については部長の了承が必要であったり、同会議で発言することが基本的に予定されていなかったことから、あくまで当該労働者は部長の補佐にすぎず、経営意思の形成に対する影響力は間接的であった、とのことでした。
このように、現在は雇用契約などにおいて管理監督者とされて残業代が支払われていない人であっても、本件のように管理監督者に該当せず残業代を請求できる可能性は十分ありますので、是非一度ご検討されることをおすすめいたします。
投稿者プロフィール
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- 弁護士法人PRESIDENT弁護士
-
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 弁護士法人PRESIDENTにて勤務
■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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