残業代請求
デザイナーなどの専門職は残業代を請求できない?弁護士が解説!

1.この記事の概要
通常のデザイナーの場合には残業代は発生します。
では、雇用契約書や就業規則その他の会社の規定で、残業代は支払われないこととされていた場合でも残業代を請求することは可能なのでしょうか。
デザイナーは労働時間ではなく成果を期待されている専門職であることから問題となります。
結論からいえば、今回の裁判例では、そのような場合でも残業代は請求できる、という判決がでました。
会社の規定で、残業代が支払われないといわれているデザイナーの方であっても、残業代を請求することができる可能性は十分にありますので、是非この記事をご参考にしてください。
2.この記事の対象の方
・デザイナーの方
・会社から「専門職にあたるから残業代は発生しない」といわれている方
・エンジニアや研究開発、コピーライター、放送番組のプロデューサーやディレクターなどの専門的職業の方
3.デザイナーの残業代請求のポイント
※この記事は京都地判平成29年4月27日を参考にしています。
「専門業務型裁量労働制」とは何か?
※ここは少し法律の話になるので、読み飛ばしてもらっても大丈夫です!
「専門業務型裁量労働制」とは、簡単にいえば、業務の性質上、業務遂行の手段や時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務の場合にとることができる制度です。
対象となる業務は、厚生労働省が定めていて、今回のデザイナーや、研究職、ゲーム制作や広告やテレビ番組のディレクターなどで、かなり限定的です。
もっとも、上記の業務に該当すれば自動的に専門業務型裁量労働制が適用されるわけではなく、定められた手続きを踏む必要があります。
今回の争点は何か?
今回、会社は、専門業務型裁量労働制の導入し、その手続きをおこなっていました。
しかし、専門業務型裁量労働制が有効になるためには、様々な要件をクリアしなければなりません。
そこで、今回の会社の専門業務型裁量労働制が様々要件をクリアし、有効かどうかが争点になりました。
どのような結果になったのか?
結論からいうと、本件では、会社の専門業務型裁量労働制を導入するための手続きが正しくなかったとして専門業務型裁量労働制は有効ではない、と判断されました。
それにより、デザイナーには残業代が発生しているので会社は支払わなければならないとされたわけです。
4.諦めないでください!
会社から「制度上、あなたは専門職なので残業代はでません」または「残業代は○○手当に含まれています」と言われていたり、会社で専門業務型裁量労働制が導入されている場合でも、適切な手続きがとられておらず、上記の制度が有効ではない場合があります。
専門業務型裁量労働制は、かなり複雑な手続きが必要であり、また、様々な厳しい要件をクリアしなければ有効になりません。
また、裁判所は、上記制度の有効性をかなり厳しく判断する傾向があります。
「自分は専門職だから残業代はでないと言われた」「残業代がでない旨の規定がある」と残業代の請求を諦めずに、是非一度、弁護士に相談してみてください。
投稿者プロフィール
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- 弁護士法人PRESIDENT弁護士
-
法律専門家として優れていること、そして、優しく誠実に依頼者に寄り添う弁護士であることを理想とする。
大手法律事務所で、事業部の責任者を務めた後独立し、自身の思いを名前に冠した「優誠法律事務所」を設立。
その後、「テクノロジーと人の力で、権利が自然と実現される未来を創る」という弁護士法人PRESIDENTの理念に共感し、入社。
現在は、労働問題及びネットトラブルの事業責任者として、これらの問題を取り扱う。
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 弁護士法人PRESIDENTにて勤務
■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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