残業代請求
シフト勤務は残業代を請求できる?マクドナルドの判例をもとに解説!

1.この記事の要約
この記事は、日本マクドナルドが全国の店舗社員に適用されている「変形労働時間制」を無効と判断したという判決(名古屋地裁令和4年0月26日。以下「本件判決」と言います。)を参考にしています。
飲食店等の正社員の方(月給制)でシフト勤務の場合にも残業代を請求することができる可能性があります。
会社は、変形労働時間制を導入していることを理由に残業代の支払いを拒むことがありますが、実は、変形労働時間制が有効に導入されておらず、変形労働時間制が無効であることから、会社に対し、残業代を請求することができる場合があります。
2.この記事の対象の方
- 正社員(月給制)でシフト勤務の方
- 残業代が支払われていない方
3.詳細
⑴ 争点について
本件判決では、月給制でシフト勤務を採用してる場合に、変形労働時間制を理由に残業代の支払いを拒むことができるかが問題となりました。
もっとも、変形労働時間制は、例外的な労働時間制であって、有効に導入するためには細かなルールを守らなければならず、変形労働時間制が有効に適用されるのかが争点となりました。
⑵ 争点についての結論
結論として、本件判決において裁判所は、就業規則で定めていない店舗独自の勤務シフトは、変形労働時間制が適用されるための要件を満たしていないとして、残業代の請求を認めました。
⑶ 最終結論
以上のとおり、本件判決は変形労働時間制を無効としましたので、店舗社員の残業代の請求が認められました。そして、その金額は約61万円でした。
4.諦めないでください!
会社から、変形労働時間制を理由に残業代が支払われないというご相談は少なくありません。
しかし、本件判決では、就業規則に記載のない独自のシフトは、変形労働時間制として有効ではないとされました。しかしながら、各店舗ごとの事情にあわせ、すべてのシフトを就業規則に定めている会社は多くありません。
そして、その場合には、変形労働時間制が無効であるため、1日・1週ごとの法定労働時間を超える労働を行った場合でも残業代を請求することができます。
会社の主張がすべて正しいということはありません。シフト制で働いている方で、変形労働時間制を理由に残業代が支払われていない方は、是非一度弁護士へ相談してみてはいかがでしょうか。
5.一歩進んで(解説)
変形労働時間制とは、一定期間内の所定労働時間を平均して法定労働時間数以内にすることにより、1日・1週ごとの法定労働時間を超える労働を許容する例外的な労働時間制を言います。
そのため、変形労働時間制が有効に適用されれば、1日・1週ごとの法定労働時間を超える労働を行った場合でも残業代を請求することができないことがあります。
そして、変形労働時間制が有効に適用されるためには、以下の点を就業規則や労使協定にて定めておかなければなりません。
⑴ 変形労働時間制を採用する定め
⑵ 労働日、労働時間の特定 ※1
⑶ 変形期間の所定労働時間
⑷ 変形期間の始期
※1 単に「労働時間は1日8時間とする」という定め方ではなく、長さのほか、始業および終業の時刻も具体的に定め、かつ、これを従業員に周知することが必要(昭和63.1.1 基発1号、平成9.3.25基発195号、平成11.3.31 基発168号)
これらの定めがない場合には、会社の主張する変形労働時間制は無効であって、1日・1週ごとの法定労働時間を超える労働を行った場合には残業代を請求することができます。
投稿者プロフィール
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- 弁護士法人PRESIDENT弁護士
-
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 弁護士法人PRESIDENTにて勤務
■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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