残業代請求
長時間の固定残業代は、一部を無効として、残業代を請求できる?
更新日:2022.12.01/公開日:2022.11.28

1.この記事の要約
この記事は、札幌後半平成24年10月19日労判106号37頁ザ・ウィンザーホテルズ・インターナショナル事件を参考にしています。
定額残業代を支払うことによって、これを残業代の支払にあてるという会社は少なくありません。
しかしながら、このような定めや運用が、必ずしも有効に適用されるわけではありません(※「固定残業代が払われている場合にも、残業代を請求することができる?」ご参照)。
95時間という極めて長時間に相当する定額残業代を定めていた場合、一部を無効として、超過した残業代を請求することができる可能性があります。
2.この記事の対象の方
- 給与に固定残業代が含まれている方
- 固定残業代の額が多額で、長時間の時間外労働が前提となっている方
3.詳細
⑴ 争点について
本件判決では、95時間に相当する時間外労働を定額残業代として支払っていた場合、その定めが有効であるのかが問題となりました。
⑵ 争点についての結論
結論として、本件判決では、本件の定額残業代の定めは、月45時間分の通常残業の対価として合意されたものとして認めることができる、と判断しました。
本件判決は、以下の点を理由として示しています。
- 95時間分の定額残業代を認めると、労働者に対し、95時間分の時間外労働を義務付けることになる
- 労働基準法36条の上限として周知されている月45時間分の通常残業代と考えるのが妥当
- 上記の判断のもと、61万5244円の残業代が認められた。
⑶ 最終結論
以上のとおり、本件判決は、95時間分のすべてを残業代の支払として認めませんでした。
このように、長時間に相当する定額残業代の定めは、その一部または全部が無効であるとして、争う余地があります。
4.諦めないでください!
会社は、名目上「定額残業代」を支払うことで、残業代の支払いを拒むことがあります。
しかしながら、「定額残業代」は、常に残業代の支払として認められるわけではありません。
会社が定額残業代を支払っていることを理由に残業代を支払わないと主張する場合でも、直ちにあきらめる必要はありません。まずは弁護士に相談してみましょう。
投稿者プロフィール
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- 弁護士法人PRESIDENT弁護士
-
法律専門家として優れていること、そして、優しく誠実に依頼者に寄り添う弁護士であることを理想とする。
大手法律事務所で、事業部の責任者を務めた後独立し、自身の思いを名前に冠した「優誠法律事務所」を設立。
その後、「テクノロジーと人の力で、権利が自然と実現される未来を創る」という弁護士法人PRESIDENTの理念に共感し、入社。
現在は、労働問題及びネットトラブルの事業責任者として、これらの問題を取り扱う。
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 弁護士法人PRESIDENTにて勤務
■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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