残業代請求
事前承認なしの残業代は請求できるの?弁護士が事例を元に解説!

1.この記事の要約
この記事は、大阪地裁平成18年10月6日(昭和観光事件)を参考にしています。
会社には、残業を行う際に、決裁権者による事前承認を要するというルール(以下、「残業の事前承認制」といいます。)を定めている会社は少なくありません。
残業の事前承認制がある場合において、事前承認を得ずに残業を行ったとき、労働者は残業代の支払いを求めることができるのでしょうか。
実は、このような場合であっても、残業代を請求することができる可能性があります。
2.この記事の対象の方
- 残業の事前承認制がある会社の従業員の方
- 事前承認を得ずに行う残業がある方
3.詳細
⑴ 争点について
本件判決では、「事前に所属長の承認を得て就労した場合の就業のみを時間外勤務として認める」という会社のルールがあっても、承認のない残業代を請求することができるかという点が争われました。
⑵ 争点についての結論
結論として、本件判決では、事前の承認が行われていないときであっても残業代を請求することができる、と判断しました。
本件判決は、以下の点を理由として示しています。
- 残業の事前承認制は、「実際に労働実態もないのに時間外手当が請求されることを防止する」趣旨であり、不当な時間外手当の支払がなされないようにするための工夫を定めたものにすぎない。
- 業務命令に基づいて実際に時間外労働がされたことが認められる場合であっても、事前の承認が行われていないということだけでは、残業代を支払わなくていいという理由にはならない。
⑶ 最終結論
以上のとおり、本件判決は、残業の事前承認制を採用している会社であっても、業務命令下において実際に時間外労働が行われたときには、残業代を請求できると判断し、原告らに平均約175万円の残業代が認められました。
4.諦めないでください!
会社は、残業の事前承認制を採用している場合、事前承認のない残業には残業代を支払わないと主張してくることがあります。
しかしながら、事前承認制は、実際に行ったことが認められる残業代の支払いまで免除する趣旨のものではありません。
会社が残業の事前承認がないことを理由に残業代を支払わないと主張する場合でも、直ちにあきらめる必要はありません。まずは弁護士に相談してみましょう。
5.一歩進んで
時間外労働を行ったときには、残業代を請求することができます。
この点、労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するかは、労働者の行為が使用者の指揮命令下におかれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるもの」(最一小判平成12年3月9日(三菱重工業長崎造船所事件)とされています。
このように、労働時間は、労働契約及び就業規則等の定めのいかんにより一義的に決定されるものではなく、その実質によって判断されます。
投稿者プロフィール
-150x150.png)
- 弁護士法人PRESIDENT弁護士
-
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 弁護士法人PRESIDENTにて勤務
■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
最新の投稿
その他11月 27, 2023派遣社員向けに「同一労働同一賃金」について弁護士が解説!
その他11月 14, 2023有給休暇が取れない!よくあるトラブルと対処法を弁護士が解説!
労働問題11月 14, 2023会社が倒産!未払いの給料や残業代はどうなるのか弁護士が解説!
労働問題11月 10, 2023年俸制とは?メリットデメリットやよくある勘違いを弁護士が解説