残業代請求
サービス残業は残業代請求できる?弁護士が事例を元に解説!

1.本記事の要約
この記事は、大阪地判平成15年4月25日判決を参考にしています。
医師の世界では、病院の命令がなくとも診療報酬明細書や診断書の作成には膨大に時間を要することから、残業が恒常化しています。
しかし、「これらの時間外労働は、病院からの指示によって行われた業務ではない」として残業代が支払われない(いわゆる「サービス残業」)ことも少なくありません。
会社が、従業員に対し、残業をさせた場合には、原則として会社は残業代を支払わなければならず、それは、労働者が医師であっても同じです。
病院の指揮監督下の業務である以上は、労働時間であり、残業代を含む賃金を請求することができます。
2.本記事の対象者
・医師の方
・医療従事者で残業代が未払いの方
3.詳細
⑴争点について
残業代を請求するためには、病院の指揮命令下にある時間労働であることが必要です。
本件判決では、タイムカードでは打刻されていない時間帯に行った診療報酬明細書の作成業務が、病院の指揮命令下にある時間外労働であるといえるかどうかが争点となりました。
⑵争点についての結論
タイムカードで打刻されていないとしても、診療報酬明細書の作成業務は病院の指揮命令下にある時間外「労働」に該当すると判断されました。
本件判決では、病院の指揮命令下にあるかどうかにつき、以下のような事情を総合的に考慮されています。
- 明示又は黙示の業務命令があったかどうか
- 会社の業務としての性質が強いかどうか
- 場所的時間的拘束があるかどうか
⑶本件の特殊性
特に本件では、
- 医療事務におけるレセプトの作業は絶対に納期を守る必要があったこと
- 残業代を減らすように病院が動いていたこと
から、病院による黙示の残業命令があったと認められました。
⑷最終結論
本件判決では、タイムカードでは打刻されていない時間帯に行った診療報酬明細書の作成業務が時間外労働であるとして、106万2470円の残業代を認めました。
4.諦めないでください!
まだまだ多くの病院でサービス残業が恒常化し、残業代が払われていないのが実態です。 しかし、業界の「常識」が正しいとは限りません。
病院が残業代を支払わないと主張する場合にもすぐには諦めないで、是非一度弁護士にご相談ください。
投稿者プロフィール
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- 弁護士法人PRESIDENT弁護士
-
法律専門家として優れていること、そして、優しく誠実に依頼者に寄り添う弁護士であることを理想とする。
大手法律事務所で、事業部の責任者を務めた後独立し、自身の思いを名前に冠した「優誠法律事務所」を設立。
その後、「テクノロジーと人の力で、権利が自然と実現される未来を創る」という弁護士法人PRESIDENTの理念に共感し、入社。
現在は、労働問題及びネットトラブルの事業責任者として、これらの問題を取り扱う。
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 弁護士法人PRESIDENTにて勤務
■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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