残業代請求

年俸制でも残業代請求できる?弁護士が事例を元に解説!

年俸制でも残業代請求できる?弁護士が事例を元に解説!
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1.この記事の要約

この記事は、大阪地判平成14年5月17日(創栄コンサルタント事件)を参考にしています。

いわゆる外資系の会社などで多くみられる年俸制ですが、年俸制の給与に残業代が含まれるという理由で、残業代を支払わないという会社は少なくありません。

しかしながら、このような会社の主張や運用が、必ずしも正しいというわけではありません。

年俸制という給与形態を採用していることを理由として、会社は、残業代の支払義務を免れませんので、年俸制の労働者でも残業代を請求することができる可能性があります。

2.この記事の対象の方

  • 年俸制で残業代が支払われていない方
  • 基本給と残業代部分が区別されずに給与が支払われている方

3.詳細

⑴争点について

本件判決では、年俸制を採用していることが残業代を支払わない理由となるのか否か、また、年俸制の給与の中に残業代が含まれている場合にはどうか、が争いとなりました。

⑵争点についての結論

結論として、本件判決では、以下のように結論付けました。

  • 年俸制(年俸制年額300万円を12等分して毎月25万円を支給)を採用することによって、直ちに時間外割増賃金等を当然支払わなくてもよいことにはならない。
  • 会社と労働者との間で、年俸制の給与に残業代が含まれるという合意をしていたとしても、割増賃金部分が法定の額を下回っているか否かが具体的に後から計算によって確認できないような方法による賃金の支払い方法は、無効。

⑶最終結論

本件判決は、会社は労働者に対して残業代として約75万円を支払わなければならない(別途付加金あり)との判断をしました。

4.諦めないでください!

会社から、「年俸制だから残業代を支払わない」や「会社から説明をしたうえで納得して入社したのではないか」などと主張されたとしても、会社に対し、残業代を請求することができる可能性があります。  諦める必要はありません。

残業代について少しでもお悩みでしたら、是非1度弁護士に相談してください。

5.一歩進んで

本件判決では、以下の事情がありました。特にⅱやⅲの事情が会社の残業代支払い義務を否定する材料とならなかったことはポイントです。

  • ⅰ 年俸制(年俸制年額300万円を12等分して毎月25万円を支給)
  • ⅱ 会社は、入社時に、会社から年俸額には時間外労働割増賃金が含まれると説明
  • ⅲ 労働者は、賃金支給時においても特段の異議を申し出ていない

(判示原文)

「そもそも使用者と労働者との間に、基本給に時間外割増賃金等を含むとの合意があり、使用者が本来の基本給部分と時間外割増賃金等とを特に区別することなくこれらを一体として支払っていても、労働基準法37条の趣旨は、割増賃金の支払いを確実に使用者に支払わせることによって超過労働を制限することにあるから、基本給に含まれる割増賃金部分が結果において法定の額を下回らない場合においては、これを同法に違反するとまで言うことはできないが、割増賃金部分が法定の額を下回っているか否かが具体的に後から計算によって確認できないような方法による賃金の支払い方法は、同法同条に違反するものとして、無効と解する」

「被告における賃金の定め方からは、時間外割増賃金分を本来の基本給部分と区別して確定することはできず、そもそもどの程度が時間外割増賃金部分や諸手当部分であり、どの部分が基本給部分であるのか明確に定まっていないから、被告におけるこのような賃金の定め方は、労基法37条1項に反するものとして、無効となる」

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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