残業代請求
タイムカード打刻後のサービス残業は残業代請求できるの?

1.この記事の要約
会社から明示又は黙示に、現実の労働時間の前後でタイムカードを打刻させられる、いわゆるサービス残業は、今日でも多くの会社で見受けられます。
このような場合、会社に残業代を請求しようとしても、会社は、タイムカードに労働時間が打刻されていない以上、実際に業務をしていたのかが明らかではない等の理由で残業代の支払を拒むことが考えられます。
しかし、タイムカードに打刻していなくても、残業代の支払が認められた裁判例(大阪地判平成15年4月25日判決(徳洲会事件))があります。
2.この記事の対象の方
- 残業代が支払われていない方
- サービス残業だから残業代の請求を諦めてしまった方
3.詳細
⑴争点について
上記裁判では、サービス残業の作業開始時刻と作業終了時刻を客観的に立証できるのかが争いとなりました。
この裁判では、会社において労働時間を把握するためのタイムカードに、「退出欄」と「残業欄」があり、残業欄への打刻が事実上制限されていたため、従業員は、残業をしていたとしても退勤時に「退出欄」に打刻していたという事情がありました。
会社は、これをとらえて、「残業欄」に打刻がないことが、労働時間ではなかったことの裏付けであるなどと主張していました。
⑵争点についての結論
結論として、上記裁判の判決では、労働時間を以下のように立証しました。
- タイムカードに退出時間が打刻されていたとしても、これは残業を申告しにくかった会社の体質に起因するものであり、すべて避けられない時間外労働のためであったことを、陳述書、同僚のために作成した事務処理マニュアル、元同僚の証言、本人尋問によって立証しました。
- 「勤務記録表」の「自主申告」が過少申告の性質を有するということを、元同僚の証言と本人尋問、そして会社側の証人への反対尋問で、立証しました。
⑶最終結論
本件判決では、タイムカードでは打刻されていない時間帯に行った診療報酬明細書の作成業務が時間外労働であるとして、106万2470円の残業代を認めました。
4.諦めないでください!
会社から、「残業したことを証明できないなら残業代は支払えない」や「タイムカードには残業した記録がないから残業代は支払えない」などと主張されたとしても、会社に対し、残業代を請求することができる可能性があります。
諦める必要はありません。残業代について少しでもお悩みでしたら、是非1度弁護士に相談してください。
投稿者プロフィール
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- 弁護士法人PRESIDENT弁護士
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■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 弁護士法人PRESIDENTにて勤務
■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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