残業代請求

残業代が出ない!不払いが発生するケースとその対処法を弁護士が解説!

残業代が出ない!不払いが発生するケースとその対処法を弁護士が解説!
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「会社から残業代は出さないといわれている」「毎日残業しているのに、タイムカードを定時に押せと言われる」「店長に昇格したら、手当が少しだけつく代わりに残業代が出なくなった」等、残業代不払いに悩まされている方は少なくありません。

本記事では、違法な残業代不払いが発生するケースと対処法を解説します。

目次

1.そもそも残業代とは?

残業代という言葉は法律用語ではないので厳密な定義はありません。一般的に、会社が定める労働時間(所定労働時間)を超えて労働した場合にその労働時間に応じて支払われる賃金を指しています。

法律上は、労働時間が労働基準法第32条1項に定められた法定労働時間(1日あたり8時間)を超える場合に割増賃金の支払い義務が生じます(労働基準法第37条1項)。ここで、仮に所定労働時間が法定労働時間より少ない場合、法定労働時間以内の残業に対しては残業代は発生しますが、労働基準法上の「時間外労働」には該当しないため割増しの必要はありません。例えば定時が9時から17時30分までで休憩時間が1時間の場合、所定労働時間は7時間30分となります。この場合、ある日の退社時刻が17時50分であったとすれば所定労働時間を超える20分に対して残業代が発生しますが、労働時間は法定労働時間である8時間を超えていないためその日の残業代は割増賃金ではなく通常賃金ということになります。

本記事では、混同を避けるために所定労働時間を法定労働時間と同じ「8時間」と想定させて頂きます。この場合、所定労働時間を超えた労働時間に対して発生する残業代イコール割増賃金となります。

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2. 残業代が発生するケース

以下の場合に残業代が発生します。

①時間外労働(労働基準法第37条1項)

労働基準法に基づく法定労働時間を超える労働時間です。割増率は25%以上50%以下(通常25%)です。なお、時間外労働が月60時間を超える場合は50%以上となります(同条項但書)。

②深夜労働(労働基準法第37条4項)

午後10時~午前5時までの労働時間です。割増率は25%以上です。

③休日労働(労働基準法第37条1項)

法定休日(日曜日及び法定祝日)に労働させた場合の労働時間です。割増率は35%以上です。

④時間外労働+深夜労働

法定労働時間を超えて、午後10時~午前5時までに労働させた場合の労働時間です。割増率は50%です。なお、時間外労働が月60時間を超える場合は75%となります。

⑤休日労働+深夜労働

法定休日の午前0時~午前5時、午後10時~午後12時の間の労働時間です。割増率は60%以上です。

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3. 残業代の不払いが発生するケース

原則として、所定労働時間を超える時間労働させた場合には残業代が発生します。労務管理が徹底していない会社では、法律的に見れば毎日のように残業代の不払いが発生している可能性があります。さらに、一度問い合わせても当然のように「その程度の時間では残業したものとはみなされません」などと言われたりすると、それ以上聞いたら不利益な取り扱いをされるのではないかというおそれも感じて、結局未払い状態かどうかがわからないままサービス残業を続けさせられているということが、いまだに日本企業では起こっています。本章では未払い残業代が発生しやすいケースを挙げて解説します。

3-1.タイムカードを不適切に打刻させる

タイムカード不正打刻というと従業員による遅刻のごまかし等が問題になりやすいですが、会社が残業時間発生の証拠を消すためにタイムカード改ざんを指示しているケースがあります。例えば定時になると一斉にタイムカード打刻を指示されたり、所定労働時間に収まる時刻に修正するように指示される等です。また、組織的な不正としてタイムカードが自動で定時に打刻されるなどという事例もあります。

3-2. 名ばかり管理職

名ばかり管理職とは、課長・店長・マネージャー等、肩書上は管理職的な役職についているため、残業代が支払われてない従業員をいいます。これは労働基準法第41条2号が「監督もしくは管理の地位にある者」(管理監督者)に対して労働基準法の労働時間・休憩・休日に関する規定の適用を除外していることから、管理職に対しては残業代を支払わなくてよいとする誤解が広まっていることが原因しています。「管理監督者」の範囲については5-3で後述します。

3-3. 残業の指示を出さない

実際には毎日のように残業しているのに、上司が残業の指示を出していないことを理由に残業代を支払わないということも残業代未払いの原因としてあります。会社は就業規則で残業する場合は従業員の申請とそれを確認した上司による指示が必要である旨定めていることが多いので、故意に本人に申請させない・指示を出さないことにより残業時間を認めないというやり方です。しかし、労働時間とは「客観的にみて使用者の指揮命令下にある時間」を指します。たとえ上司が本人に残業を指示をしていなくても、上司に課された業務量が過大なため、そもそも勤務時間内こなすことが困難であり、必要に迫られて残業しているといった場合には、本人の申請や上司の指示の有無にかかわらず、残業時間は使用者の指揮命令下にあり、労働時間と認められ、それが定時以降であれば残業代は発生します。

3-4. 会社から残業代は出さないと説明があった

(1)法定労働時間を超える時間労働させて残業代を出さないのは違法

会社側が、入社した従業員に対して「うちでは残業代は出さない」旨伝えるというケースも、特に中小企業では起こりうることです。しかし、所定労働時間を超えて労働させた場合には残業代は発生します。

(2)年俸制・フレックスタイム・裁量労働制でも法定労働時間を超えた場合は違法

この点、「残業代は出さない」理由が、その従業員の給与体系または労働時間制度が通常と異なるものである場合があります。例えば①フレックスタイム制、②年俸制、③裁量労働制などです。しかし、①フレックスタイム制では会社が定めた1ヶ月間の総労働時間を超えて労働させた場合には残業代が発生します。また②年俸制は給与額を1年単位で決定するものですが、決して無制限に労働させられるわけではなく、少なくとも法定労働時間を超えて労働させた場合は月給制の場合と同様に割増賃金を支払わなければ違法となります。③裁量労働制の場合は1日当たりのみなし労働時間が8時間を超えない場合は残業代を払わなくても違法にはならないのですが、8時間を超える場合は超過時間数に相当する残業代が発生します。

3-5. 残業時間の上限を定めている

就業規則で所定時間外労働を週に10時間・月40時間以内のように一定時間に定めている会社も存在します。これ自体は、時間外労働の限度時間(月45時間・年360時間)を超えない範囲で定められ、さらにその範囲で残業した場合の残業代が支払われていれば違法ではありません。しかし、このような会社で起こりがちなのが、実際には上限時間よりも多く残業させておきながらこの定めを理由に上限時間を超える時間分の残業代を支払わないことです。中には上限時間を週5時間・月20時間のように少ない時間に定めておきながら長時間残業させているケースもあります。この場合も、所定労働時間を超える労働時間に対する残業代が発生するため、上限時間を超える時間の残業があった場合はその時間数分の残業代が支払われなければなりません。

3-6. 早朝出勤

定時の始業時刻よりも前に出勤する早朝出勤に対しても残業代未払いが発生しやすいです。早朝出勤の場合、業務上必要な場合や上司の指示を受けている場合は定時の始業時刻までの時間を労働時間とみなすべきですが、自主的な早朝出勤に対しては労働時間とみなされない可能性があります。

3-7. 持ち帰り残業

持ち帰り残業に対して労働時間とみなされず残業代が出ないケースは特に学校や学習塾などで起こりやすいです。社外で行った残業時間が労働時間とみなされるためには、それが会社の指揮命令下にあったといえることが必要です。例えば具体的な作業内容について上司から指示があった場合は、その作業を行うのにかかった時間は会社の指揮命令下にあったといえます。他方、自主的な持ち帰り残業に対しては会社の指揮命令下にあるとはみなされないので、労働時間とみなすことができません。

3-8. 労働時間の端数の切り捨て

(1)原則として労働時間は1分単位で計算しなければならない

定時が17時の会社で18時20分に退社した日に対する残業時間が1時間にされていたというように、残業時間の端数が切り捨てられるということもよくあります。

労働基準法第24条は「賃金は(中略)その全額を支払わなければならない」と定めているため、労働時間は1分単位で計算しなければなりません。例えば残業代を15分単位でカウントしている場合、15分に満たない労働時間とその対価である賃金を切り捨てていることになり労働基準法違反となります。

(2)1ヶ月単位で残業時間を計算する場合は30分未満の切り捨てが認められる

ただし、1ヶ月単位(1ヶ月間)の残業時間を計算するシステムをとっている会社では、そのシステムは給与計算作業の簡便化が目的なので必ずしも従業員の不利になるものとはいえないとして、30分未満の切り捨て及び30分以上の切り上げを行うことが厚生労働省労働基準局の見解により認められています。

この場合、上の例で退社18時20分に対する残業時間を1時間とすることは認められます。なお、仮に退社が18時31分から18時59分までの間の時刻であった場合は残業時間は2時間と計算すべきことになります。

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4. 残業代を払わない場合の罰則

会社が残業代を支払わない場合、労働基準法第37条違反として6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科せられます(労働基準法第119条)。残業代未払いの事実が発覚するのは、主に従業員が労働基準監督署に申告した場合に行われる申告監督や、労働基準監督署が監督計画に基づいて行う定期監督を実施した時です。残業代未払いがあっても、その状況により、労働基準監督署の是正勧告に従って期限内に支払いを行うことにより刑事処分が科されない場合があります。しかし、多数の従業員に対する多額の残業代未払いの事実が発覚したような場合は労働基準法第102条に基づき労働基準監督署によって送検されるとともに、使用者が逮捕されることもあります。

5. 残業代が発生しない雇用形態

残業代は、正社員に限らずパートやアルバイトの従業員に対してもその所定労働時間を超えた場合には支払義務があります。一方、主に正社員の一部の雇用形態において、一定の条件で残業代が発生しない場合があります。本章ではそれらの雇用形態で残業代が発生しない場合と発生する場合について解説します。

5-1. みなし労働時間制(裁量労働制)

(1)裁量労働制で残業代が発生しない場合

裁量労働制とは、業務遂行の手段や時間配分を労働者の裁量に委ねる制度です。「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」に分かれています裁量労働制のもとでは労使協定で定めた時間数だけ労働したものとみなされます。例えば「1日8時間労働したものとみなす」と定めた場合は実際の労働時間にかかわらず8時間労働したものとみなされます。

従って、みなし労働時間数が1日8時間以内である場合は、実際に働いた時間が8時間を超えていても残業代は発生しません。

(2)裁量労働制で残業代が発生する場合

他方、裁量労働制にあっても法定時間外・休日・深夜早朝労働や休日に対する労働基準法の適用が除外されるわけではないことに注意が必要です。従って、例えばみなし労働時間が9時間である場合は、法定労働時間を超える1時間分について割増賃金の対象となります。また、所定の休日が日曜・法定祝日である会社では、それらの日に労働した場合も(みなし労働時間数にかかわらず)割増賃金が支払われなければなりません。

5-2.  固定残業代制(みなし残業)

(1)給料に含まれる残業代に相当する残業時間の範囲内では残業代が発生しない

固定残業制(みなし残業制度)とは、毎月基本給に加えて定額の残業代を支給する制度です。固定残業制では、時間外・休日・深夜労働の割増賃金を基本給の中に組み入れて支払う方法と、一定額を手当として支払う方法のいずれかがとられています。毎月一定時間の残業が生じることが想定される職場や、繁忙期と閑散期の業務量の差が大きい職場で導入されることが多いです。固定残業制のもとでは、給料に含まれる残業代に相当する残業時間(みなし残業時間)を超えない時間残業を行った場合は残業代が支払われなくても違法ではありません。

(2)みなし残業時間を超える時間数に対しては残業代が発生する

しかし、固定残業制のもとでも、みなし残業時間を超える時間の残業を行った場合は残業代が発生し、支払わなければ違法となります。そして固定残業制をとる会社や事業所では就業規則に賃金の計算方法に関する定めとして以下の記載を行い、従業員に周知しなければなりません(労働基準法第89条2号)。就業規則の作成義務がない会社や事業所(常勤従業員10人未満)の場合は、個別の従業員との間で合意する必要があります。

  • ①固定残業代が何時間分の労働時間に相当するか
  • ②固定残業代として支給する金額
  • ③実際の労働時間が①を超過した場合に法定の残業代を支払うこと

5-3. 管理監督者・機密事務取扱者

労働基準法第41条2号は、「事業の種類にかかわらず監督もしくは管理の地位にある者または機密の事務を取り扱う者」(管理監督者・機密事務取扱者)に対して、労働基準法上の労働時間・休憩・休日に関する規定を適用しない」と定めています。つまり、従業員であっても管理監督者・機密事務取扱者に該当する場合には残業代は出ないことになります。

(1)管理監督者

厚生労働省の解釈※によれば「管理監督者」は労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい、該当するか否かは役職名にかかわらず実態に即して判断されるべきとされています。従って管理監督者に該当する役職は代表取締役・取締役他、少なくとも部長以上の役職に限られます。課長・店長・マネージャー等の場合は管理監督者にあたるとはいえない場合がほとんどです。

※2008(平成20)年9月9日 基発第0909001号 

基発:厚生労働省労働基準局長名で各都道府県労働基準局長宛てに出された通達

(2)機密事務取扱者

判例によれば、機密事務取扱者に該当するのは「秘書その他、職務が経営者または監督もしくは管理の地位にある者の活動と一体不可分であって、厳格な労働時間管理を必要としない者」とされています。従って企業秘密を取り扱うことがあるというだけで機密事務取扱者に該当するわけではありません。なお上記の判例では「秘書」を挙げていますが、機密事務取扱者とみなされる「秘書」は経営者と行動を共にして経営者と同様の業務を行っている場合に限られます。単に「秘書」という肩書で社長室で社長の指示に従っている従業員は該当しないと考えられています。

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6. 会社に未払い残業代を請求する方法や手続

支払いを受けていない残業代があることは、会社側が労働基準法違反を行っていることになるとともに、未履行の賃金支払債務があることになります。本章では、未払い残業代を会社に請求する方法について解説します。

6-1. 会社と話し合いによる交渉を行う

未払い残業代を請求するにあたっては、まず会社に対して任意交渉を申し入れる必要があります。また、会社が交渉に応じるか否かを問わず、請求権が時効消滅することを防ぐために内容証明郵便による請求書を会社に送るようにしてください。なお、証拠が会社側にある場合、会社が開示してくれる場合や残業代支払いをすぐに認めてくれる場合は問題ありませんが、交渉がまとまらず証拠開示もしてくれない場合には訴訟提起に備えて証拠保全手続を行う必要があります。消滅時効及び証拠保全手続については7-1及び7-2で説明します。

6-2. 労働基準監督署に申告する

残業代未払いは労働基準法第37条に違反するので、労働基準監督署の方面(監督)課に申告することができます。労働基準監督署に申告する場合、未払い残業代の証拠を揃えておくことが必要です。必ず臨検(立ち入り検査)や行政指導を行ってくれるとは限らないのですが、職場で他にも残業代未払いの従業員が存在する場合は複数で証拠とともに申告することにより

臨検を行い、残業代を支払うよう指導してくれる可能性が高くなります。

6-3. 法的手段をとる

(1)労働審判

任意交渉が成立しなかった場合、法的手段として労働審判の申立てを行うという方法があります。初回の期日を経て話し合いによる解決の見込みがあると判断されれば調停手続、それが難しいと判断されれば審判により解決策が提示されます。労働審判は一般的に以下のようなメリットがあるといわれます。

  • ①原則として3回の期日で審理が終了するため、訴訟に比べると早く問題解決に向かうことができる
  • ②従業員側と会社側双方から選ばれた労働審判員が関与することにより同様の事例をふまえた解決策を提案してもらえる
  • ③原則として審理が非公開で行われることによりプライバシーが守られる

他方、審判結果に対して一方が異議を申し立てた場合や、労働審判委員会の判断により労働審判を終了した場合は訴訟に移行することになります。この場合、さらに時間のかかる訴訟手続を行わなければならないため、審判に費やした時間や労力が無駄になってしまうともいえます。

(2)民事訴訟

任意交渉の段階で会社側が未払い残業代の存在を否定したり、証拠開示に応じなかったり、不当解雇を争うことやパワハラなどが原因で自主退職するのと併せて未払い残業代を請求するというように会社との歩み寄りが難しい場合には、労働審判を経ずに訴訟を提起するのが得策といえます。未払い残業代の請求金額が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所に訴訟提起します。

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7. 未払い残業代を請求する際の注意点

未払い残業代を支払ってもらうためには、証拠を揃えた上で法律的に請求可能な期間に請求する必要があります。本章では、これらの注意点について解説します。

7-1. 残業代請求の時効成立前に請求をかける

労働基準法115条により、賃金の請求権はこれを行使することができる時から5年間(中略)で時効によって消滅すると定められています。ただしこの消滅時効期間は労働基準法第143条3項によって「当分の間(中略)3年間とする」という経過措置がとられています。従って2023年度の時点では残業代が発生した時点から3年以内に請求する必要があります。つまり、月給制で給料の支払を受けている場合は残業代未払い分が毎月消滅時効にかかっていくことになります。内容証明郵便等により会社に請求することで消滅時効の完成を6ヶ月間猶予することができます。このように、債権者が債務者に対し、債務の履行を請求する意思を通知することを催告といい、催告から6ヶ月経過するまでの間は、時効は完成しません(民法第150条1項)。未払い残業代が3年近く前から累積している可能性がある場合はできる限り早く内容証明郵便等を送り、会社に対し催告する必要があります。ただし、催告も万能ではなく、催告から6ヶ月経過する前にさらに催告をしたとしても時効完成を猶予することはできないため(民法第150条2項)、催告をしても会社が支払いを拒否した場合、催告から6ヶ月以内に訴訟提起等をし、消滅時効の完成を阻止する必要があります。

7-2. 残業代が未払いである証拠を集めておく

(1)必要な証拠

・雇用契約書や給与明細

未払残業代の計算の基礎となる計基本給・諸手当の金額、残業代支給についての取り決め等が記載されています。

・就業規則

未払い残業代計算に必要な「就業時間・時間外労働・休日」についての記載があります。

・その従業員の実際の始業時刻と終業時刻を立証する資料

タイムカード・業務用メールアカウント送受信履歴

・残業していたことを立証する資料

残業指示書・承諾書・残業中のメール送受信履歴

(2)訴訟提起する場合の証拠保全手続について

会社側が保持している証拠について会社が開示してくれない場合、訴訟提起することを前提に証拠保全申立てを行い裁判所に証拠開示命令を出してもらうという手段をとることができます。申立てにあたっては印紙代と切手代(執行官から会社宛の証拠保全手続開始の送達用)がかかります。

7-3. 未払い残業代を計算する

また、給与明細と手持ちの証拠書類とを比較して、未払い残業代を算出しておく必要があります。基本となる計算式は「1時間あたりの基礎賃金×割増率×残業時間」です。なお、3-8(2)で述べた1ヶ月単位で残業時間を計算する場合については30分未満切り捨て・30分以上切り上げを行います。

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8. 残業代が払われない方向けの相談窓口

未払い残業代に関する相談先としては弁護士の他、労働基準監督署などの厚生労働省管轄の公的機関があります。本章では未払い残業代の相談窓口を紹介します。

8-1. 弁護士

未払い残業代の見積もりが数十万円~100万円以上に及ぶ場合や、その他の請求を併せて行いたい場合などは労働問題に強い弁護士に相談することをお勧めします。

8-2. 労働基準監督署

労働基準監督署は労働基準法違反行為を行っている会社や事業所に対して違法状態を是正させることを目的としています。残業代未払いは労働基準法違反にあたるので、申告すれば相談に応じてもらえます。また、残業代請求方法についてのアドバイスも受けられます。他方、労働基準監督署は公的機関であるため、警察と同様に個人のトラブル自体を解決してくれるわけではありません。また、同じ職場で残業代未払いが多発しているような場合は臨検(事業所立ち入り)や是正勧告を行ってくれる可能性が高いですが、単一の例にとどまる場合には動いてくれる可能性が高いとはいえません。

8-3. 総合労働相談コーナー

労働基準監督署や労働局で開設している総合労働相談センターでは、未払い残業代などの労働問題について無料で相談することができます。その従業員の勤務状況で未払い残業代が発生しているか否か、残業代の計算方法や請求方法等についても教えてもらうことができます。違法な残業不払い事例に対しては労働基準監督署に連絡してくれる場合もあります。ただし、労働基準監督署同様、相談した従業員の未払い残業代について会社と交渉したり法的手続を代理することはできません。

8-4. 労働条件相談ほっとライン

厚生労働省から委託を受けて民間企業が運営している無料の電話相談サービスです。労働基準監督署が閉庁している土日の9時~21時と平日の17時~22時に相談を受け付けています。残業代不払いについても専門知識を持つ相談員が対応し、対処方法を教えてもらうことができます。

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9. 残業代のトラブルを弁護士に依頼するメリット

残業代不払い自体は明らかに違法ですが、従業員個人が会社相手に残業代を支払ってもらうことは容易ではありません。確実に支払ってもらうためには、労働問題に強い弁護士に依頼することをお勧めします。本章では未払い残業代の請求を弁護士に依頼するメリットについて解説します。

9-1. 未払い残業代の発生の有無や金額を調べてもらえる

弁護士に相談すると、まず客観的に未払いの残業代が発生しているか、発生しているとすればいくら請求することができるかを正確に教えてもらうことができます。

9-2. 未払い残業代請求のための証拠の集め方を教えてもらえる

未払い残業代の請求にあたっては、雇用契約書や労働条件通知書など自身が保管していれば利用できるもの以外に、業務アカウントによるメールの送受信履歴など、消去してしまっていて会社側だけが保持しているデータもあります。容易に入手できない証拠についても収集が必要なのか、必要であればどのように入手すればよいかなど従業員個人にとって「壁」となりやすい問題についても弁護士に教えてもらったり、手続を代理してもらったりすることができます。

9-3. 会社との交渉を任せることができる

未払い残業代の請求にあたっては会社側と交渉しなければなりません。しかし、従業員個人で交渉しようとすると取り合ってくれない可能性があります。また逆に会社側が顧問弁護士を立ててくることもあります。弁護士に依頼していれば会社側の対応に関係なく、未払い残業代請求に向けての交渉を対等に行うことができます。

9-4. 交渉不成立の場合の労働審判や民事訴訟等の法的手続を任せることができる

未払い残業代の請求にあたり、証拠収集・交渉とともに壁となるのが法的手段をとる場合です。労働審判は手続が比較的単純で短期間で終結させることができますが、やはり申立てから審理まで全て一人でやることは容易ではありません。さらに訴訟提起するとなると、期日に全て出席して証拠調べ手続や口頭弁論での陳述も求められます。そのため少額訴訟や簡易裁判所への訴訟提起であっても一人でやることには大きな負担が伴います。弁護士に依頼していれば労働審判・民事訴訟ともすべて任せることができます。

残業代請求手続代理・代行には費用がかかりますが、弁護士に依頼することで確実に未払い残業代の支払いを受けることができます。また、多くの法律事務所では初回相談や初回相談の一定時間(30分~60分程度)を無料としているので、無料相談を利用して問題点を的確に整理することで費用を抑えることが可能です。

10. まとめ

従業員個人で会社と交渉し、未払残業代を請求することは可能ですが、精神的にも肉体的にも大きな負担となります。弁護士に依頼すれば、そのような負担から開放され、かつ未払残業代の支払いを受けられる可能性があります。

残業代未払いに関するお悩みや御質問がありましたら、ぜひ法律事務所の無料法律相談をご利用ください。

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担当者

内田 貴丈
内田 貴丈法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2019年12月 弁護士登録
2020年1月 都内法律事務所にて勤務
2021年8月 法律事務所リーガルスマートにて勤務
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