給与未払い
無給とされた出勤停止命令期間は本当に無給なの?弁護士が解説!

目次
1.この記事の要約
今回は、懲戒処分に先立って出勤停止命令を言い渡された場合、出勤停止命令は有効なのかを検討します。
同じ理由に基づく懲戒処分に先立って行われた出勤停止命令は、一事不再理の原則に違反するため、無効である場合があります。
会社から懲戒処分に先立って出勤停止命令を言い渡された場合であっても、これを争い、撤回させることが可能です。
2.この記事の対象の方
- 会社より身に覚えのない理由で出勤停止命令を受けた方
- 懲戒処分に先立って、出勤停止命令を言い渡された方
3.争点
⑴ 争点について
本件の争点は、同じ行為に基づいて行う予定の懲戒解雇に先立って、懲戒処分としての出勤停止命令を行うことが許されるのかという点です。
⑵ 争点についての結論
本件の争点は、同じ行為に基づいて行う予定の懲戒解雇に先立って、懲戒処分としての出勤停止命令を行うことは、原則として許されません。
一つの行為に対して二重に懲戒処分を行うことは、一事不再理の原則に反するからです。
⑶ 最終結論
以上のとおり、同じ行為に基づいて行う予定の懲戒解雇に先立ち行われる懲戒処分としての出勤停止命令は、無効である可能性が高いです。
その場合、従業員は、懲戒処分としての出勤停止命令が無効である以上、その期間の給与の支払いを求めることができます。
4.諦めないでください!
会社が懲戒解雇処分を検討する場合、その前段階として、従業員に対し、出勤停止を命令することは少なくありません。
しかし、これは労働者の一つの行為に対して出勤停止命令処分と懲戒処分という二つの処分を行っていることとなり、原則として、許されません。
出勤停止命令を受けたうえに、懲戒解雇処分を受けたという場合には、一度弁護士へ相談してみることをお勧めします。
5.一歩進んで(解説)
(1)一事不再理の原則とは?
憲法39条後段は、「同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない」として、一事不再理の原則を定めます。
この原則は労働契約にも適用されると考えられているため、労働者の一つの行為に対して二つの処分を課すことは許されません。
(2)労働関係で一事不再理の原則が適用される場面とは?
労働者が懲戒事由に該当する行為を行った時、会社は懲戒内容が決定するまで自宅待機を命じたり、出勤停止と併せて始末書の提出を求めたりすることがよくあります。
懲戒処分としての出勤停止命令は、その後の懲戒解雇処分とあわせて、一つの行為に対して二つの処分を課していると言えるため、許されません。
他方で、自宅待機命令は、一般的には、会社都合により、自宅待機を命じ、その期間の賃金を支払うというものであり、このような取り扱いを行う限りにおいては許されます。
(3)結論
このように、会社からひとつの事由を取り上げられて、複数の懲戒処分を言い渡された場合には、これを争う余地があります。
投稿者プロフィール
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- 弁護士法人PRESIDENT弁護士
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■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 弁護士法人PRESIDENTにて勤務
■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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