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未払賃金の請求は損害賠償権で相殺される?事例で弁護士が解説!

未払賃金の請求は損害賠償権で相殺される?事例で弁護士が解説!
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1.この記事の要約

この記事は、最判昭和31年11月2日(関西精機事件)を参考にしています。

会社に賃金や残業代を請求したところ、会社から、会社が当該従業員に対し有している請求権と賃金や残業代を相殺するから減額する又は払わないなどと主張されることがあります。

会社のこのような主張は許されるのでしょうか。

結論として、労働者の賃金請求に対して会社の請求権を相殺させることは労働基準法24条1項に定める賃金の全額払いの原則に違反し、無効です。

2.この記事の対象の方

  • 会社から相殺を主張されている方
  • 会社から損害賠償請求されている方

3.詳細

⑴争点について

本件判例では、労働者が会社に対して未払賃金を請求したところ、労働者の賃金請求権に対し、会社の労働者に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権と相殺すると反論しました。

そこで、労働者の賃金請求権に対して会社の損害賠償請求権を相殺できるかが争点となりました。

⑵争点についての結論

結論として、本件判決では、会社の相殺の主張は労働基準法24条1項に定める賃金全額払いの原則に違反し、無効である、と判断しました。

本件判決は、理由として、賃金全額払いの原則は、労働者の生活基盤である賃金を確実に全額支払わせることを会社に義務付けたものであり、これに反する対価の主張は認められないということを示しました。

⑶最終結論

以上のとおり、本件判決は、賃金全額払いの原則を大変重視していることがわかります。

したがって、原則として、会社からの一方的な相殺の主張は認められません。

4.諦めないでください!

労働者の賃金請求権は生活基盤の安定のために最大限保証されなければなりません。

会社からの相殺主張はこれに反するものとして原則として無効です。

会社から相殺の主張をされたとしても、諦める必要はありません。

まずは弁護士に相談してみましょう。

5.一歩進んで

上記では、会社からの相殺主張は原則として許されないと説明しました。

しかし、例外として会社からの相殺主張が認められるケースがあります。

相殺合意について

労働基準法第24条1項の賃金の全額払いの原則は、従業員の保護のために定められているものですので、従業員が自由意思に基づいて、会社との間で、賃金債権と会社が自分に対して有する債権とを相殺することにつき、合意している場合にまで、相殺を認めないというものではありません。

もっとも、この場合でも、賃金全額払いの原則の重要性に鑑みれば、当該合意が労働者に真に自由な意思に基づいてなされたと認められる合理的理由が客観的に存在する必要があるとされています。

調整的相殺について

欠勤や賃金計算方法の誤りによって賃金が過払いされた場合に、労働者の賃金請求権と相殺することが認められる可能性があります。

これを、「調整的相殺」といいます。

もっとも、「調整的相殺」の場合でも、過払いのあった時期と賃金の精算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてなされ、かつ、その方法や金額などをみて労働者の生活基盤を害さない相殺である必要があります。

投稿者プロフィール

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎弁護士法人PRESIDENT弁護士
法律専門家として優れていること、そして、優しく誠実に依頼者に寄り添う弁護士であることを理想とする。
大手法律事務所で、事業部の責任者を務めた後独立し、自身の思いを名前に冠した「優誠法律事務所」を設立。
その後、「テクノロジーと人の力で、権利が自然と実現される未来を創る」という弁護士法人PRESIDENTの理念に共感し、入社。
現在は、労働問題及びネットトラブルの事業責任者として、これらの問題を取り扱う。

■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 弁護士法人PRESIDENTにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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