給与未払い

給料未払いの相談先は?相談方法と解決方法を弁護士が解説!

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昨今のインフレの加速、物価上昇、増税等により家計は苦しくなっており、給料の範囲内でなんとかやりくりしているという方は多いのではないでしょうか。そんな中、給料の未払いが生じると生活に重大な影響が生じます。

今回の記事では、給料の未払いの定義を説明した上で、給料の未払いが生じた場合の対処法などについて詳しく解説します。実際に給料の未払いが生じていて悩んでいる方や、会社の業績が悪化して将来給料が支払われなくなるのではないかと不安を感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。

1.給料未払いの定義と法的根拠

この章では、給料未払いの定義を説明した上で、給料未払いとはどういうことなのかを労働基準法及び労働契約の観点から説明します。

1-1.給料未払いとは?

給料未払いとは、労働時間に対応した賃金が指定された日までに支払われないことをいいます。基本給はもちろん、諸手当や割増賃金が支払われない場合も給料未払いに該当します。

1-2.労働基準法における給料未払いの定義

労働基準法11条ではまず「賃金」が定義されており、「賃金」とは、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいうとされています。

そして、労働基準法24条1項では、賃金は、通貨で直接労働者にその全額を支払わなければならないとされています。また、2項では、賃金は、毎月一回以上一定の期日を定めて支払わなければならないとされています。

このことから、労働基準法における給料未払いの定義は、一定の期日までに、賃金の全部又は一部が通貨で直接労働者に支払われないことをいいます。

1-3.労働契約に基づく給料未払いの根拠

労働基準法15条では、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。」と規定されています。つまり、労働者と労働契約を締結する際、労働契約書の中で賃金に関する条件を明示しなければなりません。

具体的には、賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項を明示する必要があります。

この労働契約に基づいた給料が適時に支給されていない場合、会社に対し、給料未払いを主張することが可能です。

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2.未払い賃金の種類と発生原因

次に、この章では未払い賃金の種類として3つを説明するとともに、未払い賃金の発生原因を、給与体系及び契約違反の側面から見ていきます。

2-1.未払い賃金の種類

賃金とは、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものを指しますから、基本給以外にも労働者に支払われていないものがあれば、それは全て未払い賃金に含まれます。

未払い賃金の代表例として挙げられるのはまず基本給です。基本給の他、ボーナスや退職金の未払いももちろん未払い賃金とされます。

また、未払い賃金としてよく取り上げられるのが残業代です。残業代は、時間外労働をした場合の基礎賃金の他、割増賃金も含まれます。また、割増率が低く支払われている場合も未払い賃金です。

諸手当の未払いも未払い賃金に当たります。例えば役職手当、休業手当が該当します。また、有給休暇に対する対価の未払いも未払い賃金に当たります。

2-2.給与体系による未払い賃金の発生原因

給与体系による未払い賃金の発生原因として、主に以下の3つが挙げられます。

(1)通常の給与体系での時間外労働

法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて労働をした場合、時間外労働として残業代が支払われます。これは裁量労働制や管理監督者でない限り、全ての給与体系に当てはまるルールです。

残業代が支払われない場合、又は残業代の割増率が低い場合は未払い賃金とされます。

(2)みなし残業

みなし残業とは、実際に残業したか否かに関係なく、基本給にあらかじめ所定時間分の残業代を含めて給与として支給する制度をいいます。みなし残業では「みなし残業代10時間を含む」等と記載されていた場合、実際に残業をした時間が10時間に満たなかったとしても、10時間分の残業代が支給されます。

このみなし残業部分が支払われない場合、未払い賃金の発生として扱われます。また、みなし残業時間を超えて労働をした場合、別途時間外労働として残業代を支払う必要がありますが、みなし残業時間を超過した部分の残業代を支払わない場合も未払い賃金とされます。

(2)フレックスタイム制や変形労働時間制での清算期間における労働時間の超過

フレックスタイム制とは、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることができる制度をいいます

また、変形労働時間制とは、繁忙期の所定労働時間を長くする代わりに、閑散期の所定労働時間を短くするといったように、業務の繁閑や特殊性に応じて、労使が工夫しながら労働時間の配分等を行い、これによって全体としての労働時間の短縮を図ろうとする制度をいいます

フレックスタイム制や変形労働時間制の場合、時間外労働の取り扱いが通常の勤務形態と異なってきます。例えば、1日8時間以上労働したとしてもそれをもって直ちに時間外労働となるわけではありません

フレックスタイム制や変形労働時間制では、通常1か月の法定労働時間の枠内を超過した場合に時間外労働として扱われます。例えば、1か月の日数が30日の場合、法定労働時間の総枠は171.4時間ですから、これを超えた時間分が残業代となります。その残業代の支払いがない場合、未払い賃金として扱われます。

2-3.契約違反による未払い賃金の発生原因

労働基準法によれば、労働契約において、賃金に関する条件を明示しなければならないとされています。この明示した条件に違反した場合、契約違反による未払い賃金の発生原因となります。

契約違反による未払い賃金の発生原因として、主に以下の2つが挙げられます。

(1)支払時期の遅延

賃金は、毎月一回以上一定の期日を定めて支払わなければならないとされています。一定の期日を過ぎても賃金の支払いがない場合、契約違反です。この場合、遅延損害金も発生します。

(2)支払条件違反

ある一定の成果を上げたときは特別ボーナスを支給する旨が規定されていたり、昇給の幅が記載されているにもかかわらず、その規定に沿った支払いがなされない場合は支払条件に違反しています。よって契約違反による未払い賃金の発生原因を構成します。

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3.給料未払いの相談方法

給料未払いが発生した場合、どこへ相談すべきでしょうか。以下では主な相談先として3つを挙げた上で、それぞれのメリット・デメリットを解説します。

3-1.労働基準監督署への相談方法

労働基準監督署は、各企業が、労働基準法をはじめとする労働法令を遵守しているかを監督する機関です。

給料未払いの場合、労働基準法に違反することになるため、労働基準監督署へ相談することが可能です。

労働基準監督署に相談することのメリットは主に2つです。

(1)無料相談が可能

まず、無料で相談できることです。弁護士に相談する場合、相談料がかかることがほとんどですが、労働基準監督署に相談すれば相談料はかかりません。弁護士費用が支払えない方にとっては大きなメリットといえるでしょう。

(2)指導勧告をしてもらえる

メリットの2つ目は、企業に指導勧告をしてもらえることです。労働基準監督署が労働法上問題があると判断した場合、該当企業に指導勧告をします。企業は労働基準監督署から指導勧告を受けると速やかに態度を改めるケースが多いため、このメリットも大きいといえるでしょう。

一方、労働基準監督署に相談することのデメリットは主に2つです。

(1)労働法に違反するか不明な場合は応じてもらえない

給料未払いの根拠がない場合、労働基準法に違反するかどうかが判断できないため、応じてもらえない可能性があります

(2)紛争の仲介はできない

労働基準監督署が会社との間に入って交渉したりすることはできません。また、法的措置を取ることもできません。本人に代わって交渉や法的措置を行ってもらいたい場合、弁護士に依頼する必要があります。

3-2.労働組合や弁護士の利用方法

(1)労働組合の利用

労働組合とは、厚生労働省の定義によれば、「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持・改善や経済的地位の向上を目的として組織する団体」、すなわち、労働者が団結して、賃金や労働時間などの労働条件の改善を図るためにつくる団体のことをいいます。

労働組合は団体交渉権を持っていますので、労働組合を通じて未払い残業代の交渉をしてもらうことが可能です。個人で会社と交渉を行うよりも、労働問題に詳しい労働組合を通じて団体で交渉することにより、会社が応じてくれる可能性が高まります。

(2)弁護士の利用

労働組合は団体交渉権を行使して会社に対し交渉を行ってくれますが、労働審判や裁判などの法的措置まで取ってくれるわけではありません。また、残業代請求の他にもさまざまな労働問題のトラブルが存在している場合、労働組合では対応が難しい場合があります。

一方、弁護士は法的な問題全てを代理する権限を持つ紛争解決のエキスパートです。労働問題に関して弁護士にできないことは基本的にありませんので、交渉から法的措置までを全て一任することができます。

また、労働基準法に違反するかわからない、あるいは労働基準法に違反することを証明できるだけの証拠がないような場合も弁護士に相談すれば適切なアドバイスをしてくれます。

3-3.労働紛争調停や裁判の申立て方法

給料未払いについて会社と交渉をしても任意に応じてもらえない場合、法的措置を取ることになります。

給料未払いなど、会社と個々の労働者との間の紛争を個別労働紛争といいます。個別労働紛争を解決する手段として、主に①民事調停、②労働審判、③(少額)訴訟の3つが挙げられます。

以下では、それぞれの手続きについての申立て方法を説明します。

(1)民事調停

民事調停とは、裁判官又は調停官1名と、2名以上の調停委員から構成される調停委員会による仲介を通じて、話合いによる解決を目指す手続きです。

訴訟と異なり、話合いでの解決を目指す手続きですので、必ずしも証拠を収集する必要はありません。また、調停委員が話合いをリードしてくれますので、弁護士に依頼しなくても本人で対応可能です。

もっとも、話合いでの解決であるため、会社が話合いに応じない場合は不調に終わってしまう場合があります

民事調停は、管轄簡易裁判所に申立書を提出することで開始されます。申立書は簡易裁判所に備え付けてあり、本人でも作成することができますので、弁護士に依頼せず自分で解決したい場合におすすめします。

(2)労働審判

労働審判とは、労働者と会社との間で発生した労働に関するトラブルを迅速に解決するための手続です。未払い残業代や解雇などの労働トラブル全般を解決することを目的としています。

労働審判は訴訟と異なり、原則として3回以内の期日で終了するとされています。労働審判は通常3か月程度で終了することが多く、裁判と比較して迅速な解決を目指すことができます。

労働審判を行うためにはまず、トラブルを管轄する地方裁判所に対し労働審判申立書を提出します。申立書を提出すると、期日の指定及び呼び出しがあり、手続きが開始されます。

(3)(少額)訴訟

未払い残業代の請求方法の一つとして、訴訟を提起することができます。訴訟は調停と異なり強制力を持つため、会社が出頭しないということはありませんし、不調に終わるということもありません。

もっとも、訴訟の結果が出るまで最低でも半年から1年程度の時間がかかることや、証拠調べなどが厳格に行われることから、話合いで早期・柔軟に解決したい場合は他の方法によったほうが良い場合があります。

未払い残業代の請求額が60万円以下の場合、少額訴訟といって1回の審理で終了する訴訟ができますから、請求額が少額の場合は少額訴訟を検討してみるのもよいのではないでしょうか。

申立て方法は、未払い残業代の請求額が140万円を超える場合は地方裁判所に訴えを提起します。一方、140万円以下の場合は簡易裁判所に訴えを提起します。

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4.給料未払いの解決方法

以下では、給料未払いが生じた場合の紛争解決方法を3つ挙げてそれぞれを具体的に説明します。

4-1.労働基準監督署による解決方法

一つ目の解決方法は、労働基準監督署による方法です。先ほども説明したとおり、労働基準監督署は企業が労働法令を遵守しているかを監督する機関です。企業が労働法令に違反していると判断した場合、企業に対し指導勧告を行います。これにより企業が態度を改め、未払い残業代の支払いに応じたり、労働環境の改善に取り組んだりするケースは少なからずあります。

労働基準監督署への相談は無料ですので、まずは労働基準監督署による解決を検討してみましょう。

4-2.労働紛争調停や労働裁判による解決方法

二つ目の解決方法は、労働紛争調停や労働裁判による方法です。労働基準監督署が指導勧告をした結果、会社が応じてくれればよいのですが、指導勧告は行政指導にとどまり、強制力はありません。よって会社が応じてくれるとは限りません。

また、労働基準監督署は労働法令に違反しているかわからない場合は相談に応じてくれない場合があります。

そういった場合は強制力のある裁判などの法的措置による解決を目指すことになるでしょう。先ほども説明したとおり、個別労働紛争を解決する手段としては主に①民事調停、②労働審判、③(少額)訴訟の3つが挙げられます。

このうち、迅速な紛争解決が期待できる労働審判が、多く利用されるようになってきています。

4-3.和解による解決方法

三つ目の解決方法は、会社との和解による方法です。和解には裁判外での和解と裁判上の和解がありますが、ここでの和解は裁判外の和解を意味します。

会社としては、労働審判や裁判を起こされると手間と費用がかかるため、なるべく早期に問題を解決したいと考えます。交渉により早期に解決できるのであれば会社側にもメリットがあることから、和解に応じてくることもあります。

ただし、和解による解決方法は、本人のみでは難しいのが実情です。本人が自ら和解交渉を行った場合、会社に相手にされなかったり、会社にうまく言いくるめられてしまうなどしてうまくいかない場合が多いからです。

よって、和解による解決を目指す場合、労働問題に強い弁護士に依頼することをおすすめします。

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5.給料未払いの予防策

これまで給料未払いが生じた場合の解決方法を中心に解説してきましたが、そもそも給料が未払いにならないようにするためにはどのような点に気を付ければよいでしょうか。

以下では、給料未払いにならないための予防策として3つを説明します。

5-1.労働契約書の作成と確認方法

給料未払いへの予防策の一つ目は、労働契約書をしっかり作成することです。労働基準法15条では、労働契約を締結するに際し、賃金などの労働条件を明示しなければならないとされています。具体的には、賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項を明示する必要があることはすでに説明しました。

労働契約書を作成する際に、これらの項目については特にしっかりと確認することが重要です。これらの項目があいまいだと、未払い残業代の発生根拠があいまいになる可能性があり、会社側に給料未払いを許す口実を与えることにもなりかねません。

よって、労働契約書の上記の賃金条件についてはしっかり確認しておきましょう。契約締結前に弁護士に依頼して契約内容のレビューをしてもらうことも有効です。

5-2.給与明細書の発行と確認方法

給料未払いへの予防策の二つ目は、給与明細書を発行してもらい、その内容を確認することです。

給与明細書は未払い未払い賃金を請求するための証拠として非常に重要な書類の一つです。給与明細書には給与項目や算定方法、実際の支給額が詳細に記載されています。

特に残業代が適切に支給されているかを確認するようにしましょう。具体的には、適切な割増率によって計算がされているか、時間外労働時間が適切にカウントされているかを確認します。

法定休日に休日出勤をしたのに法定外休日に休日出勤をしたと扱われて割増率が低く設定されていたり、みなし残業時間を超過した分が時間外労働時間としてカウントされていなかったりすることがあります。

給与明細書は給料未払いの手掛かりとなる重要な書類ですので、必ず発行してもらい、定期的にチェックするようにしましょう。

5-3.労働時間管理の徹底

給料未払いへの予防策の三つ目は、労働時間管理の徹底です。法定労働時間は1日8時間、週40時間であり、通常の勤務形態であれば法定労働時間を超えた場合は時間外労働として残業代が発生します。

また、法定労働時間を超えない場合であっても会社が定める所定労働時間を超えた場合、その超えた分の基礎賃金が支払われる必要があります。

ご自身が何時間働いたのか、1日だけでなく週単位、月単位で管理するようにしましょう。裁量労働制や管理監督者でない限り、法定労働時間を超えれば残業代が発生します。

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6.まとめ

今回は給料未払いに関するさまざまな問題を取り上げてきました。

給料未払いについての相談方法については、①労働基準監督署、②労働組合や弁護士、③労働紛争調停や裁判の3つを挙げました。これら3つの方法についてはそれぞれ一長一短がありますので、ご自身の状況によって取るべき方法は異なってくるでしょう。

また給料未払いを未然に防ぐための予防策として、①労働契約書の作成と確認、②給与明細書の発行と確認、③労働時間管理の徹底の3つを挙げました。紛争を未然に予防するためには、普段から契約書の内容や給与明細書の内容に注意を払い、あいまいであったり不適当な部分がないかをチェックすることが重要です。

しかしながら、労働に関する専門知識がない場合、注意を払うといっても難しいのが実情です。給料の支払いに関しておかしいなと感じたら、弁護士に相談してみるとよいでしょう。弁護士に相談すれば、契約書等をレビューしてくれますし、給料未払いが発生している場合は会社への交渉や法的措置の検討など、幅広く対応してくれます。

未払い残業代請求の時効が経過してしまったり、証拠収集が困難になる前に、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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