不当解雇

公務員に対する懲戒処分が有効なケースとは?弁護士が解説!

公務員に対する懲戒処分が有効なケースとは?弁護士が解説!
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1.はじめに

公務員といえば、地位が安定しているというイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。

しかし、公務員は国家公務員法によってさまざまなルールが定められており、その中には一般企業の「試用期間」や「懲戒解雇」に相当する処分もあります。

そこで、今回は公務員に定められたルールを示しつつ、そのルールがどのような場合に公務員の権利を制限しうるのかを紹介します。

※以下は国家公務員法をもとに解説していますが、地方公務員法にも同様の規定が定められていることが多いです。

2.公務員の「試用期間」とは

⑴根拠条文は?

国家公務員法59条1項は、「一般職に属するすべての官職に対する職員の採用又は昇任は、すべて条件附のものとし、その職員が、その官職において六月を下らない期間を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに、正式のものとなるものとする。」と規定しています。

すなわち、公務員として採用されても、すべての公務員は「6か月以内の試用期間」として採用されることとなります。

⑵どのような制度なのか?

一般企業の試用期間といえば、「採用した人物の人柄や能力、適性を評価し、本採用するかを決定するために設けられる期間」と定義されることが多いです。

公務員の場合も同様に、公務員としての職務遂行能力をみるために期間と解され、「その間その職務を良好な成績で遂行した」と判断されて初めて、公務員として正式に着任することとなります。

3.公務員の「処分」とは

⑴根拠条文は?

公務員に対する処分には「分限処分」と「懲戒処分」の二種類があります。

分限処分とは、職員が勤務成績不良や病気などの理由で職務を十分に行えない場合や公務の能率的な運営を維持するために、職員の同意なく行われる処分のことです(国家公務員法第78条)。

分限処分は、「降級」「休職」「降任」「免職」の4つの種類があります。

一方、懲戒処分とは、公務員の義務違反や服務規律違反に対して科せられる処分のことです(国家公務員法第82条1項)。

懲戒処分は程度が軽い順に、「戒告」「減給」「停職」「免職」の4つの種類があります。

⑵分限処分と懲戒処分の違いとは?

懲戒処分は、当該公務員の責任追及を内容とし、制裁的な意味を含みます。

一方で分限処分は、当該公務員に対する制裁的な意味は含まず、「免職」された場合には退職金が支給されることが多いです。

したがって、両者は当該公務員に不利益を課すという点では同じですが、理由の点で大きな違いがあります。

⑶分限処分と懲戒処分の争い方は?

一般企業において懲戒処分を争う場合には、労働審判や訴訟を提起するなどして処分の無効を主張していくことが考えられます。

一方で、公務員が懲戒処分や分限処分を争うためには、処分説明書を受領した日の翌日から起算して3ヶ月以内又は処分があった日の翌日から起算して一年に、人事院に対して審査請求を申立てる必要があります(国家公務員法第90条1項および第90条の2)。

かかる期間を経過してしまうと、処分の無効を争うことはできなくなるので、注意が必要です。

仮に審査請求をしたにもかかわらず処分が取り消されなかったとしても、処分の取り消しを求める訴訟を提起して、処分の効力を争うことが可能です。

3.まとめ

いかがでしたでしょうか。

公務員であってもその地位は絶対保証されているというわけではなく、様々な要因により生活の基盤を失ってしまう可能性があります。

しかし、仮に公務員の地位を失いそうになったとしても、本稿で紹介したようにその処分を争う方法はあります。

もっとも、公務員の地位の特殊性から審査請求を行わなければならないなど、通常とは異なる手続きを経る必要があるのも事実です。

せっかく公務員になれたにもかかわらず、試用期間中に「職務を良好な成績で遂行」できなかったとして正式に採用してもらえなかった場合や、分限処分・懲戒処分によって不利益を課されそうになった場合には、是非弁護士に相談されることをお勧めします。

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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