不当解雇

降格処分には種類がある?無効になるケースを弁護士が解説!

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1.はじめに

「降格処分」という言葉を聞いたことのある人は多いのではないでしょうか。

一般的には、降格処分は人事権の行使であり、会社が自由に行えるというイメージがあるかもしれません。

しかし、降格処分は法的に2つの種類があるとされており、さらにその手続きの方法・手法によっては無効を争って、処分と取り消すことが可能です。

そこで今回は、降格処分の種類とは何なのか、降格処分が無効になるケースとはどのような場合なのかを解説していきます。

2.2種類の降格処分とは?

⑴人事権の行使としての降格処分

1つ目は、人事権の行使としての降格処分です。

これは、労働者の能力や成績に鑑みて、現在の役職が不相当であると会社が判断した際に行われるものです。

こちらが既に述べたところの一般的な降格処分であり、会社が自由に行うことができるのが原則です。

しかし、人事権の行使としての降格処分であっても、以下の場合には違法となり、無効となる場合があります。

①労働者を退職させることを目的としているなど、不当な目的に基づく処分である場合

会社は労働者を自由に解雇することはできない(労働契約法16条参照)ため、労働者側から退職を願いださせるよう働きかけることがあります。

そして、人事権の行使としての降格処分はその手法の1つとして用いられる手法です。

このような降格処分は会社の権利を濫用して労働者の権利を不当に侵害するものですから、無効になると考えられます。

②有給休暇の取得など、労働者の権利を理由とする処分である場合

有給休暇は労働者に認められた権利であり、会社が時季変更権を行使しない限り申請した日時で取得できます(労働基準法39条5項参照)。

また、育休の取得についても、労働者に認められた権利であり、労働者からの申請に対して会社は原則として拒否することは許されません(育児、介護法第5条、6条参照 ※一部例外があります)。

したがって、有給休暇や育児休暇の取得を理由とする降格処分は、会社の権利を濫用して労働者の権利を著しく侵害するものですから、無効になると考えられます。

③2階級以上の降格など、重すぎる処分である場合

降格処分となった理由にもよりますが、軽微な理由であるにもかかわらず、2階級以上の降格を行うことは、労働者の職場環境や給与にも大きな影響を与えることが予想されるため、労働者に与える不利益が著しいと判断されて無効となる可能性が高いです。

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⑵懲戒処分としての降格処分

2つ目は、懲戒処分としての降格処分です。

これは、就業就業規則に懲戒処分の定めがあり、労働者の行為が懲戒事由に該当する場合に行われる降格処分です。

この場合は、労働契約法15条によって厳格なルールが定められ、これに違反した場合には無効となります。

そこで、同条がどのようなルールを定め、具体的にどのような場合が無効となりそうかを紹介します。

①労働契約法15条とは?

同条は、以下のように定めています。

「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」

②解説

同条は、「使用者が労働者を懲戒することができる場合」(すなわち就業規則に懲戒権の定めがある場合)で、懲戒処分が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」ときには、懲戒処分は無効であると定めます。

そして、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」とは、以下のような場合があると考えられます。

  • 労働者の懲戒事由該当行為に対して降格処分が重すぎる場合
  • 懲戒事由に対する会社の調査が不十分である場合
  • 労働者に対して弁明の機会が与えられていなかった場合
  • すでに懲戒処分を受けた行為を理由とする降格処分

3.まとめ

いかがでしたでしょうか。

降格処分は2つの種類があり、それぞれ状況によって無効となる場合があります。

そこで、会社から降格処分を言い渡された場合は、まずは落ち着いて、会社に対してどのような理由によるものかを確認しましょう。

そのうえで、納得いかない理由であったり、不合理な理由であった場合には、無効を争って撤回させることが可能です。

最後になりますが、会社から降格処分を言い渡されて、その理由が納得できないものである場合には、早めに弁護士に相談されることをお勧めします。

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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