不当解雇

不当解雇を争う時に、やってはいいこととやってはいけないこと

不当解雇を争う時に、やってはいいこととやってはいけないこと
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1.はじめに

会社から解雇を言い渡されたとき、これを争うことが可能ですが、すぐに結論が出ないことが多いです。

しかしながら、会社は、有効に解雇をしたという前提ですから、退職を前提とした手続きが進んでしまいます。

そのようなかで、労働者はどこまで退職を前提とした手続きを行うべきか、悩ましい状況が生じます。

そこで今回は、会社と解雇の有効性を争っている間、労働者が行ったら後々不利になる可能性があることや行っても問題ないことをご紹介します。

2.行ったら後々不利になる可能性があること

⑴解雇を認める趣旨の発言や退職を容認する書面にサインをすること

会社から解雇を言い渡された場合、「分かりました」や「承知しました」という発言は、解雇を容認していたと解釈される可能性があります。

さらに、会社から高圧的な発言があるなどして強引に退職届等にサインを求められてこれに応じてしまうと、後に不利な証拠として提出される可能性があります。

⑵解雇予告手当の請求や受領

解雇予告手当は、会社が解雇予告期間を設けずに解雇の意思表示を行った際に、労働者に対して支払う必要がある金銭のことを指します(労働基準法20条参照)。

したがって、解雇の適法性を争っているにもかかわらず解雇予告手当を請求することは、解雇を容認していたと解釈される可能性があるので、控えた方が良いです。

また、会社から一方的に解雇予告手当が支払われた場合には、内容証明郵便等で返還の意思表示を行った方が無難です。

なお、実務的には、会社が労働者の就労を拒否することが明確な場合には、未払い賃金の前払いとして受領することを通知して生活費に消費することは問題ないとされています。

いずれにせよ、解雇の有効性を争っているにもかかわらず会社から一方的に解雇予告手当が支払われた場合には、解雇予告手当としては受領する意思がない旨を通知しましょう。

⑶退職金の請求や受領

退職金は、会社から退職者へ就業規則に基づいて支払われる金銭です。

したがって、解雇の有効性を争っているにもかかわらず退職金を請求することは、解雇予告手当と同様、解雇を容認していたと解釈される可能性があるため、控えた方が良いです。

また、退職金が会社から一方的に支払われた場合には、解雇予告手当と同様の対応が必要となります。

⑷従前の健康保険証の利用

労働者が解雇の有効性を争っていても、会社が健康保険の資格喪失手続きを行うことがあります。

これを行った後は労働者が所持している健康保険証は失効します。

そのため、解雇を争っていたとしても、すでにお持ちの健康保険証は利用しないことをお勧めします。

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3.行っても問題ないこと

⑴転職活動

解雇を争っている間でも、転職活動を行うことは可能です。

転職活動は退職を前提としてる行為のようにも思えますが、解雇を争っている期間は給料が支払われないため生活を維持する必要性があり、転職活動はやむをえないものと解釈されることが多いようです。

もっとも、解雇無効が認められて未払給与があると判断された場合、転職先から支払われた給与は未払賃金から一部控除される可能性がるので、注意が必要です。

⑵離職票の請求

解雇を争っている期間は、会社は給料を支払わないケースがほとんどなので、生活が不安定になることが予想されます。

そのような場合には失業手当の仮給付を受給することが可能です(もっとも、受給するためにはいくつか条件を満たす必要があります)。

その申請には離職票が必要となりますが、これは会社から発行されるため、会社に請求する必要があります。

裁判例は、離職票の請求が退職の意思表示であると解することは、失業手当の仮給付の制度趣旨を没却するものであるため、許されないと判断しています。

したがって、解雇の有効性を争っている場合であっても、失業手当の仮給付申請のために離職票の発行を会社に対して請求することは、問題ありません。

⑶会社物品の返却

会社から社員証やパソコン等を支給されている場合、解雇を通知すると同時に返却を求めてくる会社が多いでしょう。

会社からの支給物の所有権は会社にあるため、返還を求められた場合には返却する必要があります。

したがって、会社から支給物の返却を求められたときは、これに応じたとしても、退職を受け入れたと解釈される可能性は低いものと考えます。

⑷健康保険証任意継続制度の手続き

すでに述べたとおり、解雇を主張する会社は健康保険の資格喪失手続きを行い、これがなされたのちはお持ちの健康保険証は利用できなくなります。

しかし、怪我や病気になったときに健康保険証がないとなると、治療費が大きな負担となりますから、保険証を入手する必要があります。

そのような場合には、健康保険証の任意継続の加入手続きを行いましょう。

これは会社の健康保険資格喪失手続きを前提とする行為ですが、上述のように必要性が高いため、解雇無効の主張と矛盾しません。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか。

解雇を争うときには、会社から揚げ足を取られないように慎重に行動する必要があります。

しかし、生活維持や健康保険などの観点から、問題ないと解釈されている行為があります。

会社と解雇の有効性を争う場合には、どのような行為ができて、どのような行為を控えた方がいいのか、しっかりと確認する必要があります。

最後になりますが、解雇の有効性を争っていく場合には、弁護士と二人三脚で争っていくメリットは非常に多いので、是非弁護士に相談されることをお勧めします。

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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