不当解雇
賃金仮払いの仮処分とは?要件や手続きの流れを弁護士が解説!

1.はじめに
会社から解雇を言い渡され、労働者側がこれを争う場合、解決するまでは会社側は給料を払ってくれません。
すでにご紹介したとおり、解雇の有効性を争っていても転職活動をすることはできますが、すぐに再就職ができるとは限りません
詳細はこちらの記事で詳しく解説しています。
そこで、解雇が無効であることを前提として、裁判所を通じて給料の支払いを求めることが考えられます。
これを、「賃金仮払仮処分手続」といいます。
そこで今回は、賃金仮払仮処分手続の流れ、要件及び必要な資料をご紹介します。
2.賃金仮払いの仮処分の申立
⑴意義
まず、仮処分手続とは、訴訟の結論を待っていては権利があると主張する者に著しい損害が生じる場合に、簡易迅速な審理により裁判所が暫定的に必要な措置を命じる民事保全手続の1つです。
不当解雇に関する係争においては、従業員であることを仮に定める仮処分(地位保全仮処分)と使用者に賃金の仮払いを命じる仮処分(賃金仮払仮処分)の申立を行うことが珍しくありません。
⑵流れ
不当解雇の労働仮処分手続きの流れは次のとおりです。
①まず、裁判所へ提出する申立書を作成します。
申立書には、以下の点を記載します。
- ⅰ解雇が無効であること、
- ⅱ賃金請求権を有すること
- ⅲ今回の解雇により生活が困窮していること
②次に審尋に出席します。審尋は非公開の場で裁判官、労働者及び使用者の三者で行われます。
なお、弁護士に依頼すれば、弁護士が代理人として審尋に出席します。
③その後裁判期日を繰り返します。
裁判期日は、1~2か月に1回の頻度で行われます。
④仮処分手続の平均審理期間は約3か月と言われています。
審尋期日の中で裁判所が和解を勧め、和解により解決する場合もあります。
⑶要件
仮処分が裁判所から認められるためには、申立をした労働者側が被保全権利(解雇が無効であること)と保全の必要性(生活が困窮していること)を疎明する必要があります。
「疎明」というのは、「証明」とは明確に区分されるもので、「一応確からしいと認められる程度の立証」で足りるとされ、証明の程度が軽減されています。
⑷必要な資料
まず、解雇の無効を疎明するためには、解雇通知書に記載されている解雇事由が存在しないことや、解雇が不相当に重すぎることなどを立証する必要があります。
不当解雇については、こちらで詳しく解説しています。
次に、生活が困窮してることを疎明するためには、預貯金残高が分かる資料や、私生活上の支出を裏付ける領収書等の資料を提出を求められる可能性があります。
これらは会社側にも確認されますので、注意が必要です。
3.まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は不当解雇における仮処分について紹介しました。
通常は、地位保全仮処分については保全の必要性がないとして認められず、賃金仮払仮処分については疎明が功を奏した場合には認められるというケースが多いです。
仮に地位保全仮処分について認められなかったとしても、賃金仮払仮処分不当解雇が認められた場合には給料が支払われます(1年分が多いようです)から、安定した生活を維持しつつ、解雇の無効を争うことが可能です。
最後になりますが、解雇を争いたいが生活費がなくなるのが不安な場合や、解雇を争いたいけど仮処分手続がよくわからないという場合には、是非弁護士に相談されることをお勧めします。
投稿者プロフィール
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- 弁護士法人PRESIDENT弁護士
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■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 弁護士法人PRESIDENTにて勤務
■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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