不当解雇

不当解雇で慰謝料請求できるの?相場や請求方法について解説

不当解雇で慰謝料請求できるの?相場や請求方法について解説
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本記事では、会社を解雇された従業員が不当解雇を理由として慰謝料請求することができるか、慰謝料の相場や請求方法等について労働問題に強い弁護士が解説します。

目次

1. そもそも不当解雇とは?

解雇された従業員が、会社に対して慰謝料請求(民法第710条)を行うためにはその解雇が違法であるといえることが必要になります。本章では、違法な解雇つまり不当解雇とはどのような場合をいうか、適法な解雇とはどのように異なるか等について解説します。

1-1. 不当解雇の意味

不当解雇とは、労働基準法・労働契約法等に定められた解雇の要件を満たしていないのに使用者の都合により一方的に労働契約を解除する行為をいいます。不当解雇にあたる解雇として、⑴根拠規定のない解雇、⑵労働関係法規によって明文で禁止されている解雇原因に基づく解雇及び、⑶解雇権濫用にあたる場合、⑷手続違反があります。

⑴根拠規定のない解雇

詳しくは後述しますが、解雇には、大きく分けて、懲戒解雇と普通解雇の2種類があります。懲戒解雇は、従業員に対する一種の制裁罰的な側面を有し、就業規則にて懲戒事由や懲戒処分の種類が明記されなければ、会社は従業員に懲戒処分(懲戒解雇)をすることができません。また、普通解雇についても、就業規則や雇用契約書に解雇事由が明記されていることが通常です。解雇事由に該当しなければ従業員を解雇することはできません。

⑵労働関係法規によって禁止されている解雇原因に基づく解雇

労働関係法規によって禁止されている解雇原因としては以下のものが挙げられます。

①差別的な解雇

  • 労働者の国籍・信条・社会的身分を理由とする解雇(労働基準法第3条)
  • 女性労働者が婚姻・妊娠・出産したこと、産前産後の休業をしたこと等を理由とする解雇(男女雇用機会均等法第9条2項・3項)

②法律上の権利行使を理由とする解雇

  • 業務上の疾病による休業期間及びその後30日間の解雇(労働基準法第19条)
  • 労働者が育児休業・介護休業の申し出をしたこと、または実際にそれらの休業をしたことを理由とする解雇(育児・介護休業法第10条・第16条)
  • 労働者が労働組合の組合員であることや、組合に加入したり組合を結成しようとしたこと等を理由とする解雇(労働組合法第7条1号)
  • 労働者が労働委員会に対して不当労働行為の救済を申し立てたこと等を理由とする解雇(労働組合法第7条4号)
  • 労働者が労働基準監督署等に対し、使用者の労働基準法違反や労働安全法違反の事実を申告したことを理由とする解雇(労働基準法第104条2項・労働安全衛生法第97条2項)
  • 労働者が都道府県労働局長に紛争解決の援助を求めたこと、またはあっせん/調停を申請したことを理由とする解雇(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条3項・第5条2項・男女雇用機会均等法第17条2項・第18条2項)

これらの規定は強行法規(労使間の合意により変更することができない規定)であり、上記に該当した場合、不当解雇にあたります。

⑶解雇権濫用

⑵の労働関係法規によって禁止された解雇に該当しない場合でも、労働契約法第16条が定める「解雇権の濫用」に該当するといえる場合には不当解雇と認められます。

労働契約法第16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定めています。従って使用者が労働者を有効に解雇するためには解雇に客観的に合理的な理由があり、かつ社会通念上相当であると認められることが必要です。つまり、⑴⑵に該当しない場合でも「合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要であることになります。この「合理的な理由」と「社会通念上の相当性」を判断する上で、まず行われた解雇の種類がどれにあたるかが重要な意味を持ちます。

⑷予告義務違反(手続違反)

仮に、解雇事由が正当なものであったとしても、適法な解雇手続が採られていない場合には、不当解雇として違法となります。労働基準法では、従業員の解雇について、使用者は、予告期間を30日置くこと、または即時解雇するために30日分以上の平均賃金(予告手当)を支払わなければなりません(労働基準法第20条)。もっとも、予告期間を置かず、かつ予告手当の支払いもしないでした解雇の通知の効力について、判例上、即時解雇としては効力は生じないが、使用者が即時解雇に固執する趣旨でない限り、通知後30日間の期間を経過するか、または通知の後に予告手当の支払いをしたときは、そのいずれかのときから解雇の効力が生じるとされており、注意が必要です。

1-2.解雇の種類と合理的理由・相当性判断

解雇の種類自体を定義した法令はありませんが、大きく分けて以下の3種類があります。

①普通解雇

労働者の労働契約上の債務不履行を主な理由とする解雇です。普通解雇の理由は就業規則に列挙されているのが通常です。例としては以下のようなものがあります。

  • 傷病または健康状態の悪化による労働能力低下
  • 成績不良、適格性の欠如
  • 職務怠慢や勤怠不良
  • 不正行為、職場規律違反や業務命令違反

これらに該当するか否かは会社側が判断するため、「客観的合理的理由や社会通念上の相当性」に欠けると主張できる場合もしばしばあります。例えば労働能力低下や勤怠不良を理由に解雇されたが、その原因が上司のセクハラにより精神疾患に起因する場合等です。

②整理解雇

経営合理化のために人員整理を目的として行う普通解雇です。整理解雇の場合、労働者側には非がなく専ら会社の都合で行うため、それが認められるための「客観的合理的理由と社会通念上の相当性」の基準は普通解雇よりも厳しくなります。判例上、整理解雇が認められるための要件として以下のものがあります。

  • 人員削減の必要性
  • 会社が解雇回避のための努力を行ったか
  • その人物を解雇対象としたことの相当性
  • 労働者や労働組合に対して説明や協議を十分に行ったか

整理解雇が不当解雇となるのは、これらの要件を満たしていない場合、整理解雇は客観的合理的理由を欠き、または社会通念上相当とはいえず、不当解雇となります。

③懲戒解雇

いわば会社による一種の制裁罰としての解雇です。懲戒事由や懲戒処分の種類についても就業規則に明記されなければなりません。、会社のお金の使い込みや機密情報漏洩等の社内での不正行為、刑事事件で起訴されて氏名を公表された場合等がこれに該当します。また、タクシー運転手等の自動車運転従事者の場合は、それ以外の職種と比べて交通事故や交通ルール違反による懲戒解雇が起こりやすくなります。

懲戒権の濫用については、解雇権濫用同様、労働契約法に明記されており、「当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」と定められています(労働契約法第15条)。

懲戒解雇と他の解雇との違いとして、懲戒解雇処分を受けた従業員に対しては退職金を支払わない旨就業規則で定めている会社が多いです。また、離職の原因としても非常にネガティブな意味を持つため、再就職に影響が及ぶことは避けられません。なお、解雇された場合に会社から交付される離職票の記載に対しては不同意の意思表示ができるため、「解雇」あるいは「自主退職」と記載してもらうことは交渉次第で可能です。ただし従業員の意思で「自主退職」と記載してもらった場合、後で不当解雇を主張することが難しくなります。

他方、懲戒解雇された場合でも、たとえば「自分は社内の不正行為に関与していない」「刑事事件での逮捕は冤罪である」等と主張して、懲戒解雇の無効を主張し、従業員としての地位を争うことは可能です。

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2. 不当解雇で慰謝料をもらうための条件

不当解雇で慰謝料をもらうためにはまず解雇自体が無効であることが認められる必要があります。その上で、バックペイや退職金等、他の名目での金銭支払いや解雇後の就業状況等も考慮されます。本章では、不当解雇で慰謝料請求が認められるための条件について解説します。

2-1. 解雇が不当であると認められること

まず、前提として解雇が無効であると認められることが必要です。解雇が無効であると認められることによって初めて、賃金の支払いを受けられなくなったことが「損害」とみなされ、解雇の違法性(民法第709条の不法行為に該当すること)が認められるからです。

2-2.  バックペイの支払いを受けても補填できない程度の精神的苦痛を受けたこと

解雇の違法性が認められた場合でも、慰謝料請求が認められるためには財産的な損害賠償を受けても補填できない程度の精神的苦痛を受けた」と認められる必要があります。また、退職金・失業手当・解雇予告手当等、財産的損害賠償以外に支払いを受けた事実がある場合はそれも考慮されます。解雇自体が無効であると判断された場合はバックペイ(解雇されて働けなくなった期間中の賃金の支払い)が認められる可能性が高いので、慰謝料が認められるためには財産的な補填を上回る精神的苦痛を受けたことを証明する必要があります。

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3. 不当解雇の慰謝料相場

判例上、解雇が無効であると判断された場合に認められる慰謝料は10万円~数十万円が相場となっています。ただし会社側のハラスメントにより精神疾患を発症した場合等にはより多額の慰謝料が認められる可能性があります。前述1-1.(3)で触れた、労働能力低下等により解雇された従業員のケースでは、労働能力低下を引き起こした原因が上司のセクハラによるものであったことを重く見て700万円の慰謝料支払いが命じられました(ケイエム観光事件:東京高裁1995(H7)年2月28日付判決)。

4. 不当解雇による慰謝料請求が認められた事例

不当解雇による慰謝料請求が認められた事例は数多くありますが、原告の請求通りの金額が認められることは少なく、損害賠償として一定期間の賃金に相当する金額の支払を認める代わりに慰謝料認容額が抑えられるケースも多くあります。本章では、不当解雇による慰謝料請求が認められた事例を、解雇の種類ごとにご紹介します。

4-1.普通解雇で慰謝料請求が認められた事例

・東京地方裁判所2015(H27)年7月14日付判決

ホストクラブの従業員であった原告がいわゆる危険ドラッグを常用していたこと、遅刻が多かったことや被告の店側の命令に従わなかったこと等を理由に解雇された事件です。

裁判所は被告側の主張があいまいでそれらを認めるに足りる証拠提出も行われなかったこと等を理由に解雇が無効であると判示しました。慰謝料については「バックペイまたは慰謝料」として原告が賃金6ヶ月分を請求したのに対して、解雇時の事情等の一切の事情を考慮して30万円の支払いを認めました。

4-2. 整理解雇で慰謝料請求が認められた事例

・東京地方裁判所2010(H22)年10月27日判決(レイズ事件)

不動産売買を業とする会社の営業本部長であった原告が整理解雇された事件(被告側は訴訟でこれが懲戒解雇であったと主張)です。

裁判所は「解雇の意思表示が効力を有さない場合であってもそのことから直ちに当該解雇が不法行為となるわけではなく、解雇の経緯や事実関係を踏まえて個別具体的に検討すべき」とした上で「本件において被告は整理解雇を解雇理由としていながらその具体的根拠は何ら明らかにしていない上、訴訟に至ってから懲戒解雇であった等と主張していること等から本件解雇は社会通念上許容されるものではなく、それ自体が不法行為を構成する」と判示しました。その上で原告が解雇後約2ヶ月半後に自ら株式会社を設立している等の事実から、原告が1年分請求したバックペイのうち本件解雇時点における給与1ヶ月分のみ認め、慰謝料についても500万円の請求に対して30万円のみの支払いを認めました。

4-3. 懲戒解雇で慰謝料請求が認められた事例

・東京地方裁判所2016(H28)年2月19日

学習塾の講師で教室長でもあった原告が、退職を申し出た後に残業代等を請求したところ懲戒解雇された事件です。

裁判所は本件解雇について「即時解雇に値する重大な懲戒事由が存在しないにもかかわらず、本件(残業代)請求に対抗・報復する意図のもと、原告からの弁明聴取を経ず、自ら定めた就業規則も無視して、退職を容認する制度を突如翻して強行されたものである」「著しく相当性を欠く態様であり、単なる賃金や退職金の不払いにとどまらず、原告の名誉や社会的信用、再就職にも多大な悪影響を与え、その経済的生活も危うくするものであったから、不法行為上の違法性も備え、また被告は無効な解雇を強行することに少なくとも重大な過失があるというべきである」と判示しました。その上でバックペイについて原告の請求通りの賃金6ヶ月分の194万4,000円の支払いを認め、慰謝料についても原告の請求額200万円に対して、バックペイと退職金等により経済的損失が補填されたことを考慮しつつ120万円の支払いを認めました。

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5. 不当解雇による慰謝料請求が認められなかった事例

本章では、解雇は無効であるがバックペイその他の事情により慰謝料を支払う必要がないと判断された事例を紹介します。

5-1. 普通解雇で慰謝料請求が認められなかった事例

・東京地方裁判所2011(H23)年11月25日付判決(三枝商事事件)

東京本社での不動産営業のほか、山梨県で農業経営も行う会社の東京本社に勤務していた原告に対して、被告が「山梨の社長宅で除草作業をするように」と配転の打診をしたところ、被告の主張によると原告は配転にいったん同意したものの「解雇通知書を書けと執拗に迫り」出社しなくなったので解雇された原告が、解雇の無効とともに「逸失利益または慰謝料」として賃金5ヶ月分を請求した事件です。

裁判所は「本件解雇に至るまでの経緯やその後の対応等を考慮すると、客観的に見て本件雇用契約を直ちに一方的に解消しうるほどの解雇事由が認められないことは明らかであって・・何ら解雇を回避する方法・手段の有無が検討されないまま行われた本件解雇はあまりに請求かつ稚拙な解雇というほかなく、労働契約法第16条にいう「客観的に合理的な理由」はもとより、社会通念上も「相当」と認められないことは明らかであって、著しい解雇権の濫用行為に当たる」「本件解雇は不法行為に該当し、被告には民法第709条の権利侵害行為につき少なくとも過失があったと認められる」と判示しました。

その上で、バックペイとして原告の請求である賃金5ヶ月分に対しては、原告が解雇予告手当支払請求書を送っていた事実を考慮してその時点以降の賃金請求権が消滅したとして3ヶ月分の支払いを認めました。これにより、慰謝料請求は財産的利益が補填されたことを理由に認められませんでした。

5-2. 整理解雇で慰謝料請求が認められなかった事例

・東京地方裁判所2007(H19)年11月29日付判決(インフォマテック事件)

従業員4名(うち1名は代表者の妻)の会社で原告が整理解雇された事件です。

裁判所は、整理解雇の要件に照らして以下のように認定しました。

  • ①人員整理の必要性はあるが、被解雇者の理解のプロセスを経る余裕は十分ある経営状況であった
  • ②会社が解雇回避努力をとった形跡がな
  • ③被解雇者が原告以外にありえなかったというだけの根拠が立証されているとはいえない
  • ④20年以上被告会社に就労して特に責めに帰すべき事情のない原告に対して整理解雇を行うについて理解と納得を得ようとした形跡が認められない

それにより、解雇は権利濫用及び不法行為に該当すると判示しました。その上で、バックペイとして原告の請求である賃金6ヶ月分をそのまま認容しました。これに対して慰謝料については、原告の請求100万円に対しては、財産的損害賠償を認めたことを理由にさらに精神的苦痛を損害賠償と認めるのは相当でないとして認めませんでした。

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6. 不当解雇の慰謝料を請求する方法

不当解雇で慰謝料を請求するためには、財産的損害に対する補填を上回るような著しい精神的苦痛を受けたことを証拠とともに主張する必要があります。本章では、解雇された従業員が解雇の無効とともに慰謝料を請求する方法について解説します。

6-1. 解雇理由証明書の交付を受ける

解雇を予告された場合、解雇通知書についてはその時点で会社から交付されます。解雇が不当であると考えたらまず解雇理由証明書を請求しましょう。解雇理由証明書は、従業員が請求した場合は会社側が発行することが労働基準法第22条1項により義務づけられています。これは特に、訴訟を提起した際に会社側が「自主的に退職した」などと懲戒解雇を否定する可能性があるためです。

6-2. 不当解雇の慰謝料を請求する旨を内容証明郵便で通知する

(1)会社に送る請求書の記載

解雇の無効を主張するにあたっては、最初に会社に対して解雇の無効とともにバックペイと慰謝料を請求する旨の書類を送ってください。バックペイについては、復職を求める場合は「解雇後の賃金」、求めない場合は「逸失利益」として請求書に記載します。なお、復職を求める場合も慰謝料請求することは可能ですが、従業員の地位が回復することによって精神的苦痛が補填されるという考え方もできるため、「慰謝料」の名目を使うかどうかは慎重に考えた方がよいでしょう。復職を求めるか否かにかかわらず「財産的損害賠償金または慰謝料」という名目で請求することも可能です。

(2)内容証明郵便により通知する

会社に対する請求書類は、請求を行ったことを公的に証明できる「内容証明郵便」を利用して送付することをお勧めします。この理由については後述の8.をご参照ください。

6-3. 和解交渉(示談交渉)を行う

内容証明郵便による請求に対して会社から交渉に応じる旨の回答を受けたら、会社と話し合い(和解交渉)を行いましょう。双方が合意した場合は書面で交渉成立日付・支払名目・支払金額・支払日付(期限)等を記載した書面を作成してもらうようにしてください。

6-4.労働審判の申立てを行う・訴訟を提起する 

(1)労働審判は早期に終了するが一方が異議申立てを行うと無効になる

会社との任意交渉が成立しなかった場合、労働審判または訴訟提起によって慰謝料請求を行うことになります。労働審判は非公開で行われることや、審判委員が過去の事例に照らして現実的な解決策を提案してくれること、原則として審理3回以内で終了するので訴訟に比べ早期解決が期待できることがメリットとして挙げられます。他方、双方の歩み寄りが必要となるため慰謝料請求を始め妥協を強いられることが多く、従業員側の主張がすべて認められる可能性は高いとはいえません。また、審判の決定事項に対して一方が異議申立てを行うと無効となるほか、労働審判委員会の判断で審判手続を終了させる場合もあります。従ってこれらの場合には労働審判と訴訟の両方を行うことによる労力と時間がかかってしまうことなどがデメリットといえます。

(2)訴訟手続中も和解交渉を行うことができる

訴訟提起する場合、バックペイや慰謝料請求額等の合計が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所に対して行います。訴訟を提起した場合も、裁判官が和解交渉を促すことが多いです(民事訴訟法第89条)。訴訟手続は時間も費用もかかる印象がありますが、被告側が和解交渉に同意した場合には労働審判や訴訟判決に比べると慰謝料請求が認められやすくなるといえます。

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7. 慰謝料をより高額にするためには

より高額の慰謝料が認められるためには、解雇されることになった原因について(上司のパワハラ、セクハラ等)会社側に責任があることやそれによって精神疾患を発症したこと等を証明する必要があります。本章では、慰謝料をより高額にするためにとることができる方法について解説します。

7-1. 重大な精神的苦痛を受けたこと証明する証拠を集める

精神的苦痛を受けたことを証明するための証拠としては以下のようなものが挙げられます。

  • ①精神科・心療内科等の精神疾患専門の医療機関で作成した診断書や治療薬の処方箋
  • ②相談機関を利用した場合の相談記録等

また、より高額の慰謝料を認めてもらうためには、会社側が従業員に対して違法行為を行ったこと、その行為と精神疾患発症の間に因果関係があることについての客観的な証拠が求められます。例として従業員の上司が従業員に対してパワハラやセクハラを行っていた事実の証拠となるようなSNS・メール等の通信履歴、会話の録音音声等があります。

7-2. 任意交渉不成立の場合は労働審判よりも訴訟上の和解によるほうがより高額の慰謝料が認められる可能性が高い

会社との和解交渉がまとまらなかった場合、労働審判を申し立てるか最初から訴訟提起するかについては判断が難しいところです。一概には言えないのですが、労働審判では早期解決のために従業員側も譲歩を求められることが多い一方、訴訟では会社側が長期化を避けるために早い段階で訴訟上の和解交渉を申し入れてくることが多いです。特に有力な証拠が揃っているような場合は、従業員側の請求額通りかそれに近い額の慰謝料の支払いを認めてくれる可能性もあります。

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8. 慰謝料を請求する際の注意点

不当解雇で慰謝料請求が認められるためには、慰謝料請求権を行使できる期間に十分な証拠とともに請求することが必要です。本章では、慰謝料を請求する場合に注意すべき事項について解説します。

8-1. 解雇されてから3年以内に請求すること

まず、慰謝料請求権は民法の不法行為に基づく請求権であるため、民法第724条1号により「被害者が損害及び加害者を知ったときから」3年で消滅時効にかかります。つまり、不当解雇の慰謝料請求権の場合は解雇通知を受けてから3年が経過すると消滅します。この点、会社に催告(請求)すれば、時効の完成を6ヶ月間猶予することができるので、消滅時効が迫っている場合には、内容証明郵便により、会社に催告しましょう。なお、注意点として、催告を繰り返したとしても、さらに6ヶ月間時効の完成を猶予することはできません(民法第150条2項)。そのため、催告後、会社が支払いを拒む場合には、裁判外での「支払督促」(民法第147条1項2号)または裁判上の請求(同条1項1号)等を行うことにより時効の完成を阻止する必要があります。慰謝料請求にあたっては、最初に任意交渉を行う場合でも、請求をしたことを証明できる内容証明郵便による請求を行うほうが望ましいです。

8-2. 十分な証拠収集を行うこと

不当解雇で慰謝料を請求するにあたっては、①解雇自体の無効を主張するために必要な証拠と②不当解雇により精神的苦痛を受けたことを証明できる証拠とを揃える必要があります。

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9. 不当解雇を争うことや慰謝料請求について弁護士に依頼するメリット

会社を解雇された従業員が、一人で会社に対して解雇の無効主張や慰謝料請求を行うことは非常に困難です。不当解雇に対しては総合労働相談センターなどの相談機関を利用することも可能ですが、相談機関は従業員個人の代理人となることはできないので会社との交渉や法的手続等は全て本人が行う必要があります。

この点、労働問題に強い弁護士に依頼することにより、解雇無効の主張と慰謝料請求に向けて必要な会社との交渉や労働審判・訴訟等の法的手続を全て任せることができます。従業員が不当解雇を争うと会社側も顧問弁護士を立ててくることが多いですが、弁護士に依頼することにより対等に交渉を行うことができます。また、少しでも多く慰謝料が受け取れるような証拠収集の方法についてアドバイスを受けたり、証拠収集にあたって公的機関に対する申請が必要な場合は申請手続を代行してもらうことも可能です。

法律事務所のなかには、初回相談や初回相談の一部の時間を無料としている事務所もあるので、無料相談を利用して費用見積もりや支払方法、弁護士側の労力を抑えるために依頼者側ができること等を相談することもできます。

10. まとめ

会社に不当に解雇された場合、慰謝料請求が必ず認められるわけではありません。しかし解雇された直接の原因が起こった背景には違法な長時間残業やパワハラ・セクハラ等、会社側の従業員に対する違法行為が存在することも少なくありません。

私たち法律事務所リーガルスマートは、解雇・退職勧奨のトラブルをはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

内田 貴丈
内田 貴丈法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2019年12月 弁護士登録
2020年1月 都内法律事務所にて勤務
2021年8月 法律事務所リーガルスマートにて勤務
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