誹謗中傷・名誉毀損

どんな「誹謗中傷」が裁判の対象となるの?

どんな「誹謗中傷」が裁判の対象となるの?
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近年、「誹謗中傷」という言葉がSNSを中心に様々な場面で飛び交っています。

実際、2021年の東京地方裁判所への発信者情報の開示請求申し立て件数は2017年から2倍以上となっています(時事ドットコムニュース2022年07月07日)

もっとも、どのような「誹謗中傷」が、裁判で開示請求や損害賠償が認められる「法的請求が可能な誹謗中傷」なのか、裁判で損害賠償などが認められない誹謗中傷はどのようなものなのかについては、意外と知られていないように思います。

そこで、この記事では、「どのような誹謗中傷が法的請求可能な誹謗中傷にあたるのか」について、できる限りわかりやすく書いていきたいと思います。

法的な正確性よりも、「大枠をざっくり理解できる」ためにわかりやすさを重視していますのでご了承ください。

1.裁判で法的請求が認められる要件

この記事では、「法的請求」=「削除請求、開示請求または損害賠償請求」という意味で使っていきます。

結論からいうと、裁判で法的請求が認められるためには、自己の権利が侵害されたことが必要になります。

他にも要件はあるのですが、本記事では、どのような権利が該当するのかを簡単に見ていきたいと思います。

各権利の詳細や権利侵害以外の要件などについては、別記事に譲り、本記事ではあくまでもどのような権利の種類があるのかを書きます。

2.権利の種類

⑴名誉権

名誉権とは、その人が外部的に有している社会的評価です。

⑵の名誉感情の侵害と区別されるのは、「社会的評価を低下させたかどうか」です。

名誉権を侵害する表現行為を、名誉毀損といいます。

ちなみに、名誉感情を侵害する表現行為は侮辱行為と呼ばれます。

名誉毀損は、社会的評価を低下させるような事実が含まれている表現が該当します。

例えば、「X社は産地偽装をしている」「Aは前科がある」「Aは不倫している」などです。

なお、摘示した事実が真実であるかどうかは、裁判で法的請求が認められるかとは原則として関係ありません。

※厳密には名誉毀損表現が真実であった場合には、①公共の利害に関する事実であり②公益を図る目的でなされた場合には違法な表現では無いとして、法的請求が認められないのですが、少し脱線してしまうので詳細の言及は避けます。)

⑵名誉感情

名誉感情は、人が有している感情です。

⑴との違いは、名誉感情の侵害は社会的評価を低下させなくても成立する、ということです。

具体例は、「死ね」「バカ」「アホ」などの表現です。

名誉毀損と異なり、名誉感情はあくまで「感情の侵害」なので人によって耐性などが異なりますし、実際にその人が名誉感情を傷つけられたのかを判断することは外からではほぼ不可能です。

そのため、侵害が認められるためには、表現行為から判断するしかありません。

そこで、名誉感情の侵害が認められるためには、「表現行為の違法性が強度で、社会通念上許容される限度を超えた」場合であることが必要であるとされています。

▼実際の裁判例をもとに、どんな言葉が名誉感情の侵害になるのかを説明していますので参考にしてください。

どんな言葉が名誉感情の侵害になるの?事例をもとに解説!

⑶プライバシー権

プライバシー権の定義は、著名な裁判例で示されているのですが、ここでは「私生活上の事実であり、一般的に公開を欲しないであろう事」としておきます。

プライバシーに関する表現行為について、法的請求が認められるためには、いくつかの判断基準があります。

  • プライバシーに関する表現をされた者が被る被害の程度
  • その者の社会的地位
  • 表現行為の目的や意義や必要性

これらの要素が総合的に判断されます。

⑷アイデンティティ権

アイデンティティという言葉は日本語に直訳することが難しい単語だと言われていますが、ここでは「人格の同一性」と定義します。

具体的に問題になるのは、いわゆる「なりすまし」です。

なりすまし行為がアイデンティティ権の侵害となり、法的請求が認められるかは、「なりすましによって受ける不利益を総合的に考慮して、その人格の同一性に関する利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超える場合」であるという旨を判示した裁判例があります。

⑸肖像権

肖像権は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されない権利、自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない権利、などと定義されます。

もっとも、単に写真などを勝手にアップされたら、肖像権の侵害になるわけではなく、プライバシー権で記載したような基準により、法的請求が認められるか否かが判断されます。

⑹リベンジポルノ

昨今、問題となっていることとしてはリベンジポルノがあります。

具体的には、フラれた腹いせなどで、元交際相手の裸などをインターネットに拡散する行為です。

リベンジポルノについては、通称「リベンジポルノ法」により刑事罰の対象となりますが、削除請求などの法的請求も認められる可能性があります。

▼実際に被害に遭われた方は対応方法を下記で解説しておりますので参考にしてください。

リベンジポルノ被害の対処法と損害賠償について弁護士が解説!

3.迷ったら弁護士に相談を

一口に「誹謗中傷」といっても、様々なパターンがあります。

誹謗中傷されてしまった方は大きな心の傷を負っているものの、それが法的請求が認められる程のことなのか?と迷ってしまい、諦めてしまう方も多いと思います。

自身が受けた誹謗中傷について、法的請求が認められるのか迷った場合には、まずは弁護士に相談してみてください。

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少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

相談無料初回60分

担当者

甘利 禎康
甘利 禎康法律事務所リーガルスマート協力弁護士
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院終了
2010年12月 弁護士登録
2010年12月 都内大手事務所にて勤務
2021年3月 優誠法律事務所設立

■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)
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