誹謗中傷・名誉毀損
発信者情報開示で相手を特定できないケースとは?弁護士が解説!

1.はじめに
「発信者情報開示請求はスピード勝負」とよく言われていますが、発信者情報開示請求を初めて検討される方にはなぜスピード勝負なのかがいまいちわからないと思います。
この記事では、発信者情報開示請求がスピード勝負だと言われる理由を解説していきたいと思います。
2.結論
コンテンツプロバイダのログ保存期間が過ぎてしまった場合には、IPアドレスを開示してもらうことができません。
また、コンテンツプロバイダからIPアドレスを開示できたとしても、投稿者がアクセスした際に使用したプロバイダのログ保存期間が過ぎてしまった場合には、投稿者の住所や氏名等の情報を開示してもらうことができなくなってしまい、投稿者本人を特定することができなくなってしまいます。
これが、「発信者情報開示請求はスピード勝負」と言われる理由です。
3.解説
⑴そもそも、IPアドレスとは?
IPアドレスは、パソコン、スマートフォン、タブレットなどでネットワーク通信を行う場合に利用されます。
ネットワークに接続されたプリンターやIP電話などでもIPアドレスは利用されます。「xxx.xxx.xxx.xxx」という、IPv4と呼ばれる形式が一般的です。
⑵コンテンツプロバイダのログ保存期間について
私たちが普段利用するTwitterやインスタグラム、facebookなどのアプリケーションは、コンテンツプロバイダと呼ばれています。
コンテンツプロバイダは、IPアドレス等をアクセス情報として一定期間取得・保存しており、一定期間が経過すればその情報は破棄されてしまいます。
ほとんどのコンテンツプロバイダの保存期間は、次に紹介するアクセスプロバイダの保存期間よりも長いことが多いようです。
ただ、Twitterで投稿者のアカウント自体が削除されている場合、概ね1カ月程度でログが消えてしまうと言われているなど、例外の場合あります。
発信者情報開示をする場合には、まず最初にコンテンツプロバイダに対してIPアドレスの発信者情報開示の仮処分命令申立てをする必要がありますが、申立てから仮処分決定が出るまでに2週間程度はかかります。
そのため、アカウントの削除から1~2週間で仮処分の申立てを行わないと、仮処分決定が出る頃にはログが消えてしまっている可能性があります。
⑶アクセスプロバイダのログ保存期間について
コンテンツプロバイダに対してのIPアドレスの開示を請求して、無事にIPアドレスが開示された場合、開示されたIPアドレスを調べ、投稿者がアクセスしたプロバイダを特定し、特定したアクセスプロバイダに対して発信者情報の開示請求訴訟を提起します。
しかし、アクセスプロバイダにも、ログの保存期間があります。
そのため、アクセスプロバイダのログ保存期間を徒過しないように、開示請求訴訟の前に任意でログの保存申請をすることが一般的です。
この時点でログの保存期間を徒過していた場合には、残念ながら発信者情報の開示はできないことになります。
例えば、NTTドコモやSoftbankのログ保存期間は3カ月、KDDIのログ保存期間は利用条件に準じて3カ月~6カ月、UQコミュニケーションズも3カ月と言われており、概ねアクセスプロバイダのログ保存期間は3カ月のところが多いようです。
したがって、投稿から3カ月以上経過している場合には、アクセスプロバイダのログ保存期間が経過してしまっている可能性が高いといえます。
その場合には、IPアドレスに基づいて発信者情報開示請求をしてもアクセスプロバイダ側でIPアドレスのログがないことから発信者の特定をすることができないため、発信者を突き止めることができません。
4.まとめ
以上のように、IPアドレスを特定できたとしても、アクセスプロバイダ側のログ保存期間が過ぎてしまった場合には、投稿者本人を特定することはできません。
「発信者情報開示請求はスピード勝負」なので、発信者情報開示請求を依頼するかどうか迷っている方はなるべく早く弁護士に相談されることをオススメいたします!
投稿者プロフィール

- 弁護士法人PRESIDENT協力弁護士
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■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院終了
2010年12月 弁護士登録
2010年12月 都内大手事務所にて勤務
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)
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