誹謗中傷・名誉毀損

どんな言葉が名誉感情の侵害になるの?事例をもとに解説!

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1.誹謗中傷=即身バレ?即損害賠償請求?

「死ね」「気持ち悪い」「バカ」「アホ」などの誹謗中傷を受けたら、発信者情報の開示請求をすることができるということは、多くの方がすでにご存じかもしれません。

ですが、本当に「死ね」や「バカ」などの誹謗中傷を受けただけで、相手の氏名や住所などの個人情報が開示できるのでしょうか。

発信者情報の開示請求ができるということ自体はご存知でも、具体的にどのような内容であれば開示請求が認められるのかという点は、あまり知らない方が多いのではないかと思います。

本記事では、具体的な事例から、どの程度の誹謗中傷を受けたら発信者情報開示が認められたのかという点を解説します。

※あくまでも事例の紹介になるので、同じような誹謗中傷を受けたら必ず発信者情報開示が認められるというわけではないのでご留意ください。

2.まず、誹謗中傷とは?

本記事では、誹謗中傷を「名誉感情の侵害表現である侮辱行為」と定義します。

名誉感情とは、人が有している感情であり、「バカ」などの名誉感情を侵害する表現行為を侮辱行為といいます。

ただ、実際にその人が名誉感情を傷つけられたのかを外から判断することは不可能ですから、名誉感情の侵害の有無は、表現行為の違法性が強度で、社会通念上許容される限度を超えているか否かで判断されます。

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3.実際の事例

①「死ね」という表現行為について

言葉単体で許容限度を超えるか

「死ね」という表現行為については、著しく不適切な人格否定表現であり社会通念上許される限度を超える侮辱行為として名誉感情を侵害することは明らかであるとして、多くの裁判例が名誉感情の侵害を肯定しています(東京地裁令和 3年11月 9日令3(ワ)16859号など)。

そのため、「死ね」という表現行為単体でも社会通念上許される限度を超える侮辱行為であるといえます。

婉曲的な表現行為をされたらどうなるのか

最近のSNSでは、「氏ね」や「タヒね」「〇ね」など、「死ね」と直接表現をせずに死ねという表現行為をする傾向があります。

このような場合であっても、「死ね」と同じ意味として扱うことはできるのでしょうか。

この点については、名誉感情の侵害として認められた裁判例もあるため、「死ね」と直接書かれていなくても場合によっては名誉感情の侵害が認められると考えられます。

②「気持ち悪い」という表現行為について

言葉単体で許容限度を超えるか

「気持ち悪い」という表現行為については、名誉感情を一定程度害しているとしても,社会通念上許される限度を超えて名誉感情を侵害しているとまではみることができないと判示した裁判例があることから(東京地裁令和元年 5月27日平30(ワ)28012号)、「気持ち悪い」という表現行為単体で見れば、名誉感情の侵害が認められない可能性があります。

強調表現をされた場合に、許容限度を超えるか

「気持ち悪い」という表現行為単体で見れば、名誉感情の侵害が認められない可能性がありますが、「気持ち悪い」という表現行為をより強調した表現行為の場合には、裁判例で権利侵害を認めたものもあります。

例えば、執拗に「キモイ」という表現行為があった場合などには、執拗さという点から名誉感情の侵害の程度が強くなるためか、名誉感情の侵害が認められた裁判例があります(東京地裁平成26年 2月 4日平25(ワ)31153号)

また、同様に「気持ち悪い」という表現行為をより強調した、「キモすぎる」という表現行為について、「原告の社会的評価を低下させるものであると優に認められ,原告の名誉権を侵害するものと認められる」と評価して、名誉感情の侵害ではなく名誉権の侵害としてですが、権利侵害を認めた裁判例もあります(東京地裁令和 3年12月17日令3(ワ)14512号)。

ところが、同じく「気持ち悪い」という表現行為の強調系であるはずの「激キモすぎてワロタ」という表現について、「投稿者が嫌悪感を覚えた旨を記載したものと解されるところ、その一部に侮辱的な表現を含むとはいえ、専ら投稿者の主観的な意見ないし感想を述べるにすぎないものであり、社会通念上許される限度を超える侮辱行為であることが明白であるとはいえないから、原告の権利が侵害されたことが明らかであるとはいえない。」として、名誉感情の侵害を認めなかった裁判例があることから(東京地裁令和 3年 6月24日令2(ワ)27949号)、「気持ち悪い」という表現行為については名誉感情の侵害が認められにくいといえます。

③「バカ」という表現行為について

言葉単体で許容限度を超えるか

「バカ」という表現行為については、「明らかに,社会通念上の受忍限度を超えて原告を侮辱するものといえ,違法性阻却事由の存在も認められない」と判示した地裁裁判例がありますが(東京地裁令和 3年10月15日令3(ワ)9520号)、この裁判例ではバカと共に原告を中傷する文言がついていたことから、「バカ」という表現行為単体で名誉感情の侵害が認められるかは微妙なところだと思われます。

もっとも、「バカ女うけする」という表現行為についても、名誉感情の侵害を認めた裁判例があることから(東京地裁令和 3年 7月16日令3(ワ)6410号)、事例によっては「バカ」という表現行為でも名誉感情の侵害が認められるのだと思われます。

④「アホ」という表現行為について

言葉単体で許容限度を超えるか

「アホ」という表現行為についても、事例によっては名誉感情の侵害が認められています(東京地裁令和 3年 4月 9日令2(ワ)18612号、東京地裁令和 4年 2月 1日令3(ワ)20907号など)。

もっとも、これらの裁判例では「アホすぎ」「頭悪い」など強調表現が付随されていました。

このように、「アホ」という表現行為は通常強調表現行為が付随していることが多いため、侮辱行為と認めた裁判例でも強調表現によるところが大きいと思われます。

そのため、「アホ」という言葉単体では、社会通念上許される限度を超える侮辱行為であるとは認定されない可能性もあります。

逆に、紹介した事例のように、強調表現行為が付随している場合や、その他の表現行為も書かれているような場合には許容限度を超える侮辱行為と認定される可能性は高くなると考えられます。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか。

世の中には多種多様な表現行為があるので、名誉感情の侵害が認められるかどうかについて一律の基準を立てることは難しいですが、どの裁判例も社会通念上許容される限度を超える侮辱であると認められるかどうかという判断基準のもと、名誉感情の侵害が認められるかどうかについて判断しています。

名誉感情の侵害が認められるかどうかは、専門的な判断が必要になります。

まずは、お気軽に弁護士にご相談ください。

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担当者

甘利 禎康
甘利 禎康法律事務所リーガルスマート協力弁護士
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院終了
2010年12月 弁護士登録
2010年12月 都内大手事務所にて勤務
2021年3月 優誠法律事務所設立

■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)
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