誹謗中傷・名誉毀損
名誉毀損の時効は何年なの?刑事と民事の時効の違いを解説!

「名誉毀損の被害に遭ってしまったけど、被害に遭ったときから時間が経ってしまった」という状況に置かれている方は意外と多いのではないでしょうか。
そういった状況に置かれている方々が最も気になることは、やはり時効のことだと思います。
そこで今回は、名誉毀損の時効について、刑事と民事に分けてそれぞれ解説していきたいと思います。
1.まず名誉毀損とは?
名誉毀損には、民事上の名誉毀損と、刑事上の名誉毀損とがあります。
民事上の名誉毀損は、不法行為の一種として民法に規定されています(民法709条、710条、723条)。
これに対して、刑事上の名誉毀損は、刑法230条の名誉棄損罪として刑法で規定されています。
名誉毀損の要件については本記事の射程外となりますので割愛させていただきますが、簡単にいえば民事でも刑事でも、公然と対象者の社会的評価を低下させた場合に原則として名誉毀損が成立します。
ただし、刑事では事実の適示によるものに限るなど、若干の違いはあります。
裁判例の件数でいうと、名誉棄損として事件化するのは民事事件が圧倒的多数になり、刑事事件として扱われて判決にまで至るケースは少ないです。
本記事では、名誉毀損の時効について解説していきます。
結論からいえば、刑事上の名誉棄損の時効期間と比べれば、民事上の名誉毀損の時効期間のほうが長いです。
この点について、以下詳しく解説していきたいと思います。
2.刑事上の名誉毀損の時効について
⑴公訴時効と刑の時効
刑事上の名誉毀損の時効には、実は種類があります。
最初に思い浮かぶであろう刑事事件の時効といえば「公訴時効」ですが、実は「公訴時効」以外にも「刑の時効」という時効があります。
「刑の時効」とは、裁判で言い渡された刑罰が執行される際に問題になる「時効」です。
裁判で刑罰が言い渡されて確定したとしても、その刑の執行を受けることなく一定期間が経過すれば、刑の執行が免除される というのが、「刑の時効」の制度です(刑法32条)。
刑の時効はすでに加害者が逮捕され、裁判で刑罰が言い渡された後に問題となることですので、今回の記事ではとくに触れないでおきます。
今回の記事で解説する必要があるのは、公訴時効についてです。
公訴時効は刑事訴訟法250条に規定されています。
公訴時効とは、犯罪が終わった時から一定期間を過ぎると犯人を処罰することができなくなる(検察官が起訴することが出来なくなる)という定めのことをいいます。
そのため、公訴時効期間が過ぎてしまうと、名誉毀損について刑事手続きを進めることが原則としてできなくなってしまうので注意が必要です。
⑵名誉棄損の公訴時効と告訴期間について
名誉毀損罪の公訴時効は「犯罪行為が終わったとき」から進行し、公訴時効の期間は3年となります(刑事訴訟法253条、250条2項6号)。
インターネット上での名誉毀損の場合には、「犯罪行為が終わったとき」が基本的には書き込みがされた時点となりますので、書き込みから3年を経過すると公訴時効が完成することになります。
(ただし、起算点に関しては裁判例でも争いがあります(大阪高裁判決平成16年4月22日判決等))。
また、名誉毀損罪は親告罪であり(刑法232条)、親告罪における告訴期間の制限もあります。
親告罪とは、被害者が刑事告訴しなければ公訴を提起することができない犯罪のことです。
親告罪の告訴期間は、「犯人を知った日から6カ月」と定められています(刑事訴訟法235条)。
そのため、犯人を知った日から6か月が経過してしまうと刑事告訴をすることができなくなってしまうので、6カ月以内に告訴状を警察ないしは検察に提出する必要があります。
したがって、刑事上の名誉毀損に関していえば、
3年の公訴時効が完成していないときでも、犯人を知った日から6カ月を経過してしまうと、名誉毀損罪で告訴できず、公訴提起をすることができませんので、名誉毀損として刑事事件化することができなくなります。
3.民事上の名誉毀損の時効について
民事上の名誉毀損の時効については、上で述べた通り民法で規定されています。
時効としては、「損害および加害者を知ったときから3年間」、「不法行為の時から20年間」とされています(民法724条)。
刑事上の名誉棄損の場合には6カ月以内に告訴する必要がありますが、民事上の名誉棄損の場合は犯人を知った日から3年間ですので、民事上の責任のほうが時効の期間は長いと言えます。
また、犯人が分からないままであっても、不法行為のとき、すなわち書き込みがあったときから20年間が経過すると、民事上の責任も問えなくなります。
この20年という期間については、時効の完成猶予や更新が適用されない除斥期間とされています。
したがって、刑事上の名誉棄損の時効期間と比べれば、民事上の名誉毀損の時効期間のほうが長いといえます。
4.まとめ
名誉毀損の時効について解説させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
刑事と民事とで手続きや法律も異なることから少々ややこしいと感じるとは思いますが、要件の部分や基本的な考え方では共通しているところも多いので、刑事と民事とで時効の制度を抑えておけば他のことは比較的スムーズに理解できるかと思います。
当事務所では、インターネットトラブルの専門チームがありますので、時効についてわからないことがあったり、実際にインターネットに関するトラブルなどでお困りごとがあればお気軽にご相談ください。
投稿者プロフィール
- 弁護士法人PRESIDENT協力弁護士
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■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院終了
2010年12月 弁護士登録
2010年12月 都内大手事務所にて勤務
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)
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