誹謗中傷・名誉毀損
Twitter中傷投稿の「いいね」は名誉毀損?弁護士が解説!

目次
1.東京高等裁判所が、「Twitterの「いいね」で損害賠償」を認めた
⑴はじめに
令和4年10月20日、東京高等裁判所は、ジャーナリストの伊藤詩織さんが、自民党の杉田澪水脈議員に対し慰謝料などの支払いを求めていた裁判で、杉田議員の損害賠償義務を認めました。
⑵どんな事件?
この裁判では、伊藤さんを誹謗中傷するツイートに対し、杉田議員が「いいね」を押したというものです。杉田議員のこの「いいね」によって、伊藤さんの「名誉感情」が侵害されたのかどうかが争われました。
⑶判決のポイント
もともと、この裁判は、第一審の東京地方裁判所では、「いいね」を押す行為は、一般的には「好意的・肯定的な感情を示した」ものであって、「非常に抽象的、多義的な表現行為」であると指摘され、損害賠償が認められませんでした。
高等裁判所では、以下の点を指摘して、この第一審の判断を覆しました。
- 杉田議員が「いいね」を押す前に、伊藤さんへの批判を繰り返していたこと
- 杉田議員が、国会議員であり、当時約11万人のフォロワーがいたこと
- 杉田議員が、伊藤さんを中傷する複数のツイートに「いいね」を押したこと
2.誹謗中傷ツイートに「いいね」で損害賠償義務を負う?
⑴誹謗中傷とは
「いいね」を押すだけで、損害賠償義務を負う可能性があるとすると、どんな行為が「誹謗中傷」に当たるのかを知っておくべきです。
この点については、別の記事で詳しく解説していますが、基本的には、「名誉感情の侵害表現である侮辱行為」と定義したいと思います。
そして、ある表現行為が、名誉感情を侵害しているかどうかは、「表現行為の違法性が強度で、社会通念上許容される限度を超えているか否か」で判断されます。
⑵「「いいね」で損害賠償」は、一般的に広く適用されるのか
上記のとおり、今回の裁判(東京高等裁判所)では、いくつかの特殊な事情が考慮されたことは明らかです。
また、一般的に誹謗中傷が名誉感情を侵害したものとして違法となるのは、「違法性が強度で、社会通念上許容される限度を超えているかどうか」であるところ、「いいね」は、他人の表現行為に対し、比較的軽い意図で賛同を表す表現行為であると考えらられます。
そうしますと、第三者を誹謗中傷するツイートに対し、「いいね」を押すことが本件の高等裁判所の判断と同じように違法であって損害賠償を命じられる危険がある行為であるということは間違いないのですが、広く一般化できるものではないように思います。
結局は、個別の事情に基づいて判断されるということです。
3.まとめ
いかがでしたでしょうか。
あまりツイート内容を精査せずに、軽い気持ちで「いいね」を押してしまった経験がある方は少なくないのではないでしょうか。
誹謗中傷ツイートに「いいね」を押したら、直ちに損害賠償義務を負うということではありませんが、損害賠償義務を負う可能性がある行為であるということは十分に理解しておく必要があります。
また、反対に執拗に誹謗中傷ツイートに「いいね」を押されてしまったという方は、「いいね」を押した者に対し、損害賠償請求をすることができる余地があります。
いずれにしても、個別の事情を検討する必要がありますので、もし、「いいね」でお困りのときは、まずは、お気軽に弁護士にご相談ください!
投稿者プロフィール
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- 弁護士法人PRESIDENT弁護士
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■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 弁護士法人PRESIDENTにて勤務
■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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