炎上
吉野家の炎上でみる!企業の炎上対応

インターネット社会になり、今まで表にでてこなかったような企業活動がインターネット上で拡散し、いわゆる「炎上」してしまうことが当たり前の世の中になってきました。
では、企業は炎上した場合にどのような対応をとり、その結果はどのようになったのかはあまり取り上げられません。
そこで、企業の炎上対応とその結果について見ていきたいと思います。
第2回の今回は、株式会社吉野家(以下「吉野家社」といいます)の事例を取り上げたいと思います。
▼前回の記事はこちらー花王株式会社編ー
目次
1.どのような炎上か?
吉野家社といえば、きっと多くの人が一度は食べたことがあるであろう、日本有数の牛丼チェーン店です。
売上約1500億(2022年)、時価総額約1480億円、従業員数は連結で約3000人という大企業になります。
⑴炎上の概要
炎上した原因は、2022年4月16日、吉野家社のマーケティング担当常務(以下「本件役員」といいます)の、早稲田大学でのマーケティングをテーマにした社会人向けプログラムでの発言でした。
- 「田舎から出てきた右も左も分からない女の子を無垢・生娘のうちに牛丼中毒にする。男に高い飯を奢ってもらえるようになれば、(牛丼は)絶対食べない」
- 「生娘をシャブ漬け戦略」
上記の発言を、プログラム参加者がFacebookで発信し、それがツイートされたことにより、拡散、炎上が始まりました。
社会の反応としては、
- ジェンダーや性差別的な発言であること。
- 「シャブ」(=覚醒剤の隠語)という、違法薬物を例に出していること
- 担当役員が公の場所で上記の差別的、違法行為を助長するな発言をしたこと
などを理由に、大半が本件役員の発言に否定的な意見が目立ちました。
さらには、SNSを中心に「♯吉野家不買」といった活動まで巻き起こるようになってしまいました。
⑵炎上の範囲
①SNSでの炎上
本件役員の発言は、主にTwitterで多く拡散され、多くの否定的なコメントやツイートが見られました。
同発言は様々なツイートでとりあげられ、多いものでは約1万件のリツイートがつくものもありました。
今現在(2022年10月)時点でもTwitterをはじめとして、多くのSNSで吉野家社などのことを「生娘シャブ漬け丼」などと呼ぶツイートが多く投稿されています。
②ネットニュース
大手新聞からインターネットまで、多くのメディアが本件を取り上げました。
その報道は、本件役員の発言にとどまらず、吉野家社の過去の取り組みや女性軽視の社風についてなど様々な観点からなされました。
本件発言は2022年4月16日ですが、なんと本記事執筆時(2022年10月24日)にも文春オンラインが「若い女の子を無垢、生娘のうちに牛丼中毒にする」採用ページを見ても納得…吉野家から「女性蔑視発言」が生まれたワケ」と題する記事をアップしています。
③テレビ報道
キー局をはじめとして、多くのテレビ番組、報道番組で本件発言が報道されました。
④新聞報道
全国紙を始め、多くの新聞紙面で本件役員の発言が取り上げられました。
2.吉野家社の対応
SNSをはじめとしたインターネットにおける炎上対応は、いくつか悩むポイントがあります。
今回は、いくつかのポイントごとに吉野家社の事例を基に考察していきたいと思います。
注意点としては、どのパターンを採用してもさらに火力があがってしまったケースもあれば、沈静化したケースもありますので、完全なる正解があるわけではありません。
今回の記事は、あくまで個別事例だと思って読んでいただければと思います。
⑴謝罪するか、反論や釈明をするか、無視するか
本件役員の発言から2日後の4月18日、吉野家社は公式HPにて、「当社役員の不適切発言についてのお詫び」と題した謝罪文を公開して公式に謝罪しました。
謝罪の内容としても、
- 「当該役員が講座内で用いた言葉・表現の選択は極めて不適切であり、人権・ジェンダー問題の観点からも到底許容できるものではありません」
- 「講座受講者と主催者の皆様、吉野家をご愛用いただいているお客様に対して多大なるご迷惑とご不快な思いをさせたことに対し、深くお詫び申し上げます」
と、全面的に非を認めて謝罪した形となっています。
⑵記者会見
発言直後の記者会見は確認できませんでしたが、2022年5月26日の吉野家社の株主総会の株主総会で社長が本件役員の発言について謝罪をし、2022年10月12日に本件について改めて記者会見で謝罪を行いました。
⑶人事への影響
本件役員の発言直後の吉野家社の謝罪時(2022年4月18日)には、本件役員の解任や降格などは発表されていませんでしたが、世間の批判が予想より大きかったためか、同日深夜に臨時取締役会を開き、本件役員の解任を決定しました。
解任については4月19日に吉野家社から発表されました。
3.事業への影響
⑴プロモーションの中止
吉野家社は、2022年4月19日に予定していた親子丼の新商品発表会を中止しました。
同発表会にはタレントをブッキングしていたりするなど、多くの費用がかけられていたと思われます。
また、同プロモーションが中止になることにより、広告効果にも影響がでたものと思われます。
⑵株価への影響
2022年4月18日の吉野家社の株価2413円から、翌19日は一時前日比4.3%安の2309円まで下落しました。
25日には2278円まで下落。
もっとも、同年8月1日には2598円まで上昇しました。
2022年10月24日時点の株価は2284円となっています。
⑶業績への影響
本件役員の発言があった4月が含まれる2022年3−5月決算では、吉野家社の売上は約402億円、前年同期比約10%増でした。
なお、6−8月期は売上415億円、前年同期比約9.8%増でした。
4.まずはご相談を
企業がPRやマーケティング活動をしていくなかで、炎上を完全に防ぐことはとても困難です。
炎上対応においてとても重要なのは、初動をどのようにするかです。
様々な事例をもちそれをもとに炎上対応ができるだけはなく、いきすぎた誹謗中に対して法的対応(削除請求、開示請求、損害賠償)も可能な弁護士にまずはご相談ください。
投稿者プロフィール
- 弁護士法人PRESIDENT協力弁護士
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■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院終了
2010年12月 弁護士登録
2010年12月 都内大手事務所にて勤務
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)
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