交通事故被害
危険なあおり運転の被害を受けた際の対処法を弁護士が解説!

目次
1.あおり運転ってどんなもの
(1)はじめに
近年、「あおり運転」が社会問題となり、テレビやインターネット等でしばしば取り沙汰されるようになりました。
しかし、「あおり運転」とは一体どのようなものか、今後、あおり運転に遭遇した際、どう対処すべきなのかが分からない方が多いかと思います。
今回は、あおり運転とは何か、あおり運転に遭遇した場合の対処等についてご説明いたします。
(2)あおり運転とは
これまで、法律上、あおり運転の明確な定義はありませんでした。
しかし、2020年、道路交通法が改正され、あおり運転を含む危険な運転を妨害運転と位置づけ、処罰規定を設けることとなりました(道路交通法(以下、「道交法」といいます。)第117条の2の2第8号)。
具体的には、他の車両等の通行を妨害する目的で、以下のような行為により、当該他の車両等に対し、道路における交通の危険を生じさせるおそれのある運転をした場合、妨害運転(以下、便宜上「あおり運転」といいます。)にあたるとし、処罰の対象となるおそれがあります。
- ① 通行区分違反 例)対向車線へのはみ出し・逆走
- ② 急ブレーキ禁止規定違反 例)不要な急ブレーキ
- ③ 車間距離不保持 例)車間距離を詰めて接近した走行
- ④ 進路変更禁止違反 例)急な進路変更、車線をまたいだ蛇行運転
- ⑤ 追越し規定違反 例)無理な追い越し
- ⑥ 減光等義務違反 例)不要なハイビームの継続使用
- ⑦ 警音器使用制限違反 例)クラクションでの威嚇
- ⑧ 安全運転義務違反 例)幅寄せ
- ⑨ 高速道路等の最低速度違反
- ⑩ 高速道路上等での駐停車違反
(3)刑罰はあるのか
あおり運転を行った運転者には、どのような刑罰等が科されるのでしょうか。
妨害運転罪(道交法違反)
2020年の道交法改正により、以下の処罰規定が設けられ、あおり運転が厳罰化されました。
(ア)懲役刑又は罰金
上記①から⑩に該当する場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられるおそれがあります。
上記①から⑩に該当し、高速道路上等において他の車両を停止させ、著しい交通の危険を生じさせた場合、刑が加重され、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられるおそれがあります。
(イ)違反点数の加算
上記(ア)だけでなく、行政処分として、違反点数25点が加算され、2年間の運転免許取消しとなるおそれがあります。
高速道路上等で他の車両を停止させ、著しい交通の危険を生じさせた場合、刑が加重され、違反点数35点、3年間の運転免許取消しとなるおそれがあります。
危険運転致死傷罪
道交法は、あおり運転そのものを処罰する規定であり、車の運転により人を負傷又は死亡させた場合、自動車運転死傷行為処罰法が適用されます。
上記の道交法改正に伴い、自動車運転死傷行為処罰法も改正され、従来の危険運転に加え、以下の運転により、人を負傷又は死亡させた場合、危険運転致死傷罪が成立することとなりました(自動車運転死傷行為処罰法2条)。
- 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の車の直前に進入したり、通行中の人や車に著しく接近したり、重大な交通の危険が生じる速度で車を運転する行為
- 高速道路等で停車するなどして走行中の車を停止・徐行させる行為
上記の運転により、人を負傷させた場合は15年以下の懲役、死亡させた場合は1年以上の懲役に処せられるおそれがあります。
2.あおり運転の被害を受けにくい運転とは
上記のように、あおり運転が法律上規定され、重い罰則等が科されるようになっても、あおり運転は後を絶ちません。
ご自身の身を守るため、そもそもあおり運転に遭わないようにするにはどうすべきでしょうか。
当たり前のことですが、正しい交通ルールを守った運転を心がけることが第一です。
周りの車の動きに注意し、思いやり、ゆずり合いの運転を心がけることで、あおり運転を誘発しないことが大切です。
具体的には、以下のような運転を心がけましょう。
- 安全に停止できるような速度と車間距離を保つこと。
- 他の車の前方に割り込んだり、並走している車に幅寄せをしないこと。
- みだりに進路変更をしない。進路変更の際は、バックミラーと目視で安全を十分に確認すること。
- 車の加速・減速等は、周囲に配慮し、余裕をもって行うこと。
- 急停車、 急発進など、急制動をしないこと。
- クラクションやハイビームは、適時適切な場合に使用すること。
3.運転中にあおり運転の被害を受けた際の対処法
正しい交通ルールを守っていても、不幸にもあおり運転に巻き込まれてしまうことがあります。
その場合、どのように対処をすべきでしょうか。
(1)駐車場など安全な場所へ退避する
あおり運転により、交通事故に巻き込まれるおそれがあります。
まずは、周囲の安全に配慮しつつ、近くの駐車場など、安全に停車できる場所へ退避しましょう。
あおり運転直後、相手が興奮し、身体等に危害を加えてくるおそれがあるため、ひとけのない場所は避け、救助が求められるような場所がより望ましいです。
後々、被害事実の立証にあたり、目撃者等の証言も得られる可能性もあります。
(2)ドアをロックする
前述のとおり、相手が興奮し、被害者の身体等に危害を加えてくるおそれがあります。
相手との直接の接触を避けるため、ドアをロックし、身の安全を最優先に行動してください。
(3)警察へ通報し、警察到着まで車内で待機する
(4)ドライブレコーダーを設置する
事前の対処になりますが、被害事実の立証のため、車内にドライブレコーダーを設置し、あおり運転の一部始終を記録することを強くおすすめします。
これにより、警察等への被害事実の申告はスムーズに行えます。
また、あおり運転直後、相手からの暴行被害や交通事故被害等に遭い、損害賠償請求をする際、ドライブレコーダーは有力な客観証拠となります。
もし、ドライブレコーダーを設置していなくても、スマートフォン等の録画機能を利用し、被害事実を録画記録しましょう。
4.被害に受けてしまったら弁護士へ相談を
(1)時間的・精神的な負担から解放される
上記のとおり、あおり運転に遭遇した場合、相手から暴行を受け怪我を負ったり、車に傷をつけられることがあります。また、交通事故に巻き込まれることもあります。
警察はあくまで民事不介入ですので、怪我や車の損害については、加害者個人あるいは加害者の加入する保険会社とやり取りする必要があります。
しかし、加害者または加害者の保険会社とのやり取りは大きな精神的な負担を伴います。
そして、必ずしも保険会社が保険対応するとは限りません。
保険会社の免責条項により、被保険者の「故意」又は重大な過失による損害を賠償しない可能性があるからです(保険法17条、保険約款)。
その場合、加害者と直接やり取りせざるを得ません。
弁護士に依頼することで、加害者(または加害者の保険会社)とのやり取りは全て弁護士が行いますので、精神的な負担が軽減されます。また、種々の手続きを弁護士が代行して行うため、対応の時間や手間を省くことができます。
(2)適切な方針・対応をとることができる。
怪我や車の損害につき、事故当初に適切な対応をとらないことで、本来請求できるはずの損害を請求できなくなる場合があります。
あおり運転被害に遭ってからの初動は、特に重要です。
初動でつまづかないためにも、被害に遭ったらまずは弁護士にご相談することをおすすめします。
(3)適正な金額で示談交渉ができる。
知識経験豊富な弁護士に依頼することで、示談交渉等により適正な賠償額を獲得することができます。
5.まとめ
あおり運転は運転者の心理で引き起こされる犯罪です。
正しい交通ルールを守り、あおり運転をしない、させないの精神で運転をしましょう。
そして、あおり運転に巻き込まれてしまったら、ご自身で対処せずに、まずは弁護士に相談しましょう。
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